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化学生命工学専攻 鎌田 宏幸 特任研究員が日本化学会 第104春季年会 優秀講演賞(産業)を受賞されました

 

2024年4月23日、化学生命工学専攻 酒井研究室 鎌田 宏幸 特任研究員が公益社団法人日本化学会 第104春季年会 優秀講演賞(産業)を受賞されました。

 

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公益社団法人日本化学会 第104春季年会 優秀講演賞(産業)

⽇本化学会産学交流委員会では、平成8年度開催の第72春季年会から若い世代の講演発表者の研究活動の奨励を⽬的として「講演奨励賞」を、平成20年度からは「優秀講演賞(産業)」と改称して講演発表者を顕彰してきました。平成24年度からは、対象をアドバンスト・テクノロジー・プログラム(ATP)で実施されるATPポスター(令和2年度からイノベーション共創プログラム(CIP)ポスター)に限定して、審査・選考、表彰を⾏ってまいりました。 この「優秀講演賞(産業)」は、「産業に対する寄与が期待される基礎的または応⽤的な概念、アイディア、実験⼿法、実験結果などについての発表であり、発表者の研究に対する主体性や貢献度が優れ、 且つ今後の研究活動の⼀層の発展の可能性を有すると期待されるもの」に対して会⻑名で表彰するものです。

 

受賞された研究・活動について
市販の止血材には感染症のリスクや抗血栓薬により効果が低下する問題が残されています。本研究では、生体の血液凝固反応に依存しない合成ハイドロゲルベースの体液固化液を開発しました。この液体は、チオールとマレイミドを末端に持つ二種類のポリエチレングリコール(PEG)誘導体から構成され、弱酸性では液状を保ち、中性では即座に固化します。しかし、同液だけではラットの大量出血モデルにおいて止血効果が不十分でした。そこで、同液を弱酸性のまま保持できる生体吸収性PEGスポンジの合成法の開発に取り組み、新たに確立しました。このスポンジは高塩濃度環境でPEG誘導体を重合するだけで得られます。最終的に、体液固化液を含むスポンジを出血部に適用すると、大量出血に対しても希釈されず、高い止血効果を確認できました。この研究成果は、大量出血に対応可能な新しい止血材の開発において、重要な意義を持つものと考えております。

今後の抱負・感想
シンプルな化学を用いて、あらゆる中性の体液を凝固させる普遍的な原理を確立することができました。この研究成果は、全ての共同研究者および関係者の方々のご指導とご協力があってこそ得られたものです。この場を借りて、改めて深く感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、開発した材料の学理追求と産業界への応用を目指してまいります。

 

 

公益社団法人日本化学会 第104春季年会 各種講演賞受賞者決定:https://www.chemistry.or.jp/news/104-2.html