プレスリリース

メタバース工学部「DE&I社会の実現にむけた産学連携による人材育成の行動宣言」

 

近年の急速な技術発展や、政治経済・社会情勢の変化、働き方の多様化など、世の中は目まぐるしく変転し、複雑で予測困難な時代にあります。画一的なメンバーで意思決定が行われる旧態依然の組織は、時代の変化に柔軟に対応できず、取り残されるばかりです。
より良い未来社会を実現するために、予測困難で変化の速い時代に、学びは、何のために、誰のために、どうあるべきか?普遍的なものとして維持し続けなければならない学びは何か?そのために大学は、企業は、何をすべきか?
東京大学大学院工学系研究科は、「メタバース工学部」の活動の一環として、会員企業とともに常に学びを進化させ、今の学びを超え、新たな学びを創造し提供し続けます。その達成に向けた意思として、ここに以下の行動宣言を致します。

1.    Diversityの学び:我々は、年齢、ジェンダー、社会的立場、居住地などに関わらず、意欲あるすべての人が学べるように行動します。持続的な成長を果たすには、多様な価値観や能力を持つ人材を活かすことが欠かせませんが、日本は管理職に占める女性比率が諸外国に比べて低いなどの大きなジェンダーギャップをはじめ、様々な画一性が存在します。我々は、いまよりもずっと多様な人材が活躍できるように社会を変える必要があるという認識のもと、大学と企業が力を合わせて多様な人材が学びやすい環境を整えることを宣言します。

2.    Equityの学び:我々は、公正(Equity)な学びを広く社会のために提供すべく行動します。これまで大学は所属する学生に、企業は所属する社員に向け、学びを提供してきました。世界が小さい時代、それは機能しましたが、もはや世界は複雑につながっており、自己組織だけではなく社会全体を強化する必要があります。我々は、あらゆる人々が公正かつ自由に学びの機会を享受できる社会が重要であるという認識のもと、大学と企業のそれぞれが持つ教育リソースを最大限に活用し、それらを融合し、新しい学びの場を広く社会に提供することを宣言します。

3.    Inclusionの学び:我々は、包摂性のある学びを実現すべく行動します。これまで我々は、大学では学術を修め、企業ではビジネスを身につけるというようにそれぞれの役割を限定して捉えてきました。社会的な価値の見直しが急速に進む現代におけるこれからの学びには、固定化された役割分担に捕らわれない柔軟性と包摂性が求められていると考えます。我々は、大学や企業という立場を超えて、人材の流動性を高め、お互いに教えあい学びあう包摂性のある学びを作り出すことを宣言します。

■メタバース工学部参画企業からのメッセージ(法人会員種別・50音順)

<プラチナ会員>
鹿島建設株式会社
当社は、「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、DXや多様な人材の活躍に向けた取組みを積極的に推進しております。
当社が手掛ける建設・不動産開発等のプロジェクトは、それぞれが唯一無二であり、社員個々の能力・熱意・創意工夫がその成否を左右するといっても過言ではありません。そのため、人材育成は当社の持続可能な成長に欠かせない要素であり、当宣言に深く賛同いたします。これまで培ってきた当社の空間づくりのノウハウを、今後はメタバース空間の構築にも生かしていくことで、DE&I社会の実現に向けた新たな人材育成の場の創造に、東京大学、幹事企業の皆様と共に挑戦してまいります。

ソニーグループ株式会社
ソニーのPurposeは『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』です。また、Values(大切にしたい価値観)の一つに『多様性』を掲げています。多様な人による異なる視点が、新しい価値を生み出すと考えているソニーにとって、女性エンジニアの活躍推進は喫緊の課題の一つです。メタバース工学部と、産学の相互理解と協働で、女性を含む多様な人材が最大限に活躍できる未来社会の実現に向けた取り組みを推進し、イノベーションを牽引する次世代の人材育成に貢献することで、日本の産業界や、教育界における新たな変革をともに目指します。

DMG森精機株式会社
工程集約・自動化・DX化という大きな流れの中で、デジタルツールを使いこなす新しいエンジニアが必要とされています。
同時に、テクノロジーや人の価値を世の中全体の生産性にいかに換算するか、工学の果たす役割はますます大きくなっています。
顕在化していないものを含め、あらゆる属性を越えて互いを尊重しあうことで学びと気づきがあり、それを行動に移すことが成果になります。
メタバース工学部でそれが体現され、今後ますますの発展と学生の皆さんの活躍を期待しております。

株式会社丸井グループ
当社は、『すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る』をミッションとして掲げ、これまで年齢やジェンダー、役職等に関わらず、意欲ある多様な人材が成長・活躍できるよう様々な変革に取り組んできました。
また、2019年に、ステークホルダーとして新たに「将来世代」を加え、30年後の世界で主役となる世代と共創することで、より良い未来社会を創っていきたいという想いを持っています。今回のメタバース工学部の行動宣言は、当社の考えるインクルージョンや将来世代に対する想いとも共通するものであると考えています。
今後も、共創が根づいた社員やリアル店舗、エポスカードなどの当社が持つアセットを共有することで、メタバース工学部を応援し、共に取り組んでいきたいと思います。

三菱電機株式会社
当社は、個人の能力と組織の力を最大限発揮できる職場環境を実現すべく、女性の採用比率・管理職比率や男性の育児休職取得率の向上をはじめとしたD&Iを推進してきました。事業面では「活力とゆとりある社会」の実現に向け、中長期目標の1つとして「“安心・安全”、“インクルージョン”、“ウェルビーイング”への貢献」を挙げ、身体的制約や衣食住などの環境的制約による影響を軽減する製品やサービスの提供に取り組んでいます。
当宣言に賛同するとともに、メタバース工学部との産学連携によって、従業員が活き活きと働ける制度や環境の整備はもとより、D&Iを含むSDGsなどの社会的課題の解決に向けた取り組みの加速・拡充を図っていきます。

株式会社リクルート
DEIの実現において重要なテーマの一つは、弊社でも取り組んでいるアンコンシャスバイアスの自覚化です。工学部の女性比率が低い背景にも、中高生が社会から浴びるアンコンシャスバイアスの影響が大きいと考えます。周囲から受けるバイアスを自覚し、取り除くことで、自身の好奇心のままに挑戦し、進路選択ができる社会が実現するのではないでしょうか。より良き未来にむけて「新しい学びの形」を志す仲間達と共に、当社が展開する人材・学び事業の知見をフルに活用し、成功も失敗も共有しながら進化につなげたいと思います。
一人ひとりの好奇心が機会につながり、そして機会があふれる社会の実現に尽力してまいります。

<ゴールド会員>
株式会社荏原製作所
メタバースは未来を考える素晴らしい思想だと思います。性別などの目に見えるダイバーシティを克服する革新的なアイテムでもあり、未だ戦争が終わらない国であっても、実空間で学ぶ機会を失った当事者が新しい学ぶ機会に触れられる最強の武器はメタバースであると荏原製作所は信じています。
女性も、男性も、LGBTQ+も! 公平な学び、公平な機会の実現に向けて活動するメタバース工学部の活動に強く賛同し、学ぼうとする全てのひとが学べる環境を(メタバースから!)、荏原製作所はこうした活動を支え続けます。

株式会社経営共創基盤
メタバース工学の、今の「学び」を超えた新たな「学び」の創造と提供に向けた、力強い行動宣言に対して、IGPIは深く共感し、強く賛同致します。世界の変化がますます激しくなり、そしてそれが常態化する中で、我々個人も、産業界も、アカデミアも、そして国も社会も、自ら動き、そして変革(トランスフォーム)していくことが必須です。IGPIはメタバース工学部が目指す新たな「学び」への変革を、今後も全面的に支え、大学とともに行動し、変革していくことを宣言します。

日本電気株式会社
国際女性デーに合わせた『行動宣言』に強く賛同し、企業として大学と力を合わせともに進んでいくことをNECもまた宣言します。日本企業において重要な意思決定はきわめて同質性高いメンバーにより行われている現状を、より多様化、そしてインクルージョンを実現していくうえで、いまや大学と企業は目的を同じくし、それぞれの役割も交差するものとなっています。互いに協働することでその実現のスピードと強さを増していけると信じています。

野村證券株式会社
国際女性デー「行動宣言」に当社は賛同いたします。多様な人々が活躍し、一人ひとりが自らもつ能力や個性を十分に発揮し活躍できる社会の実現には、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンは不可欠です。さらに、社会全体を大きく変化させるには、従来の発想にとらわれず、大学や企業という立場を超えた協働により、学びの進化に「DEI」を取り入れていくことが必要です。これからの未来社会の実現に向けて、新たな学びの創造を力に、共に歩んで行きましょう。

<シルバー会員>
株式会社関水金属
現在の社会情勢を踏まえると、今後、自律分散型社会に移行していくにつれ、個の価値観が尊重されることが必然になると考えられ、これに付随して公正で包摂性のある学びの実現は必須となってくると思われます。
このような背景を踏まえ、私たち関水金属・KATOは、新たな学びの創造と持続提供を宣言するメタバース工学部の「DE&I社会の実現にむけた産学連携による人材育成の行動宣言」に賛同いたします。
私たち関水金属・KATOは、ジオラマ制作を含む鉄道模型趣味を介して、世界中のNゲージ、および、HOゲージファンの利他心を豊かにする交流や教育への貢献活動を更に進めて参ります。ものづくりへの想像力を高め、共に社会の発展に寄与いたしたく、ここに応援メッセージを送らせていただきます。 

一般社団法人チームスキル研究所
多様な人々が活躍できる社会に向けて、全ての人に学ぶ機会がある。その機会は大学や企業という枠をこえて提供される。そこには教える人・学ぶ人という役割も柔軟に変化する。このような考え方に我々は強く賛同します。弊所は「違いが活きる社会」の実現に向け日々活動をしていますが、それにはこの宣言に示される学習や成長に対する新たな考え方が不可欠だと考えます。
この行動宣言が、メタバース工学部の枠をも超え、社会の随所で実現していくことを祈りつつ、私たちもその世界実現の一端を担うべく邁進して参ります。
メタバース工学部が、次代の「学びの先進国」への牽引役となることを期待しつつ。  

株式会社トイ
私たちは本行動宣言に賛同します。本宣言は、先入観や思い込みといったステレオタイプによって作り出される性別職域分離の解決に導くことができると確信しております。 
何より、大学や企業という立場を超えた学び、お互いに教えあい学びあう包摂性のある学びは、学びが社会共通の資本であることを改めて実感させられます。 
法人会員として、その持てる能力を最大限発揮できるよう、女性の活躍推進に向けた行動計画を適宜更新するとともに、「学び続ける知的体力」と「他者への責任感」を持った人材の育成に取り組んでまいります。 
メタバース工学部で学ぶ女性リーダーの皆様の挑戦を心より応援しております。

株式会社トポロジ
多様性、公正、包摂性のある学びの実現は、社会を強くし、持続的な発展につながる重要な課題です。私たち株式会社トポロジは、メタバース工学部の行動宣言に賛同し、この目標達成に向けて全力で支援し、今後も、常に学びを進化させ、新たな価値を生み出し、社会に貢献することを約束します。
 

 

付属資料1

メタバース工学部 実施報告


■   経緯
東京大学大学院工学系研究科は、すべての人が最新の情報や工学の実践的なスキルを獲得して未来社会を構想できる人材の育成への貢献を目的に、「メタバース工学部」を昨年秋に設立しました。デジタル技術を駆使して工学系研究科の教育コンテンツを提供する学びの場として、
✓  中高生や保護者を主な対象とするジュニア工学教育プログラム(ジュニア講座)
✓ 社会人・学生を主な対象とするリスキリング工学教育プログラム(リスキリング講座)
を開講し、多くの多様な受講者に「新しい学び」を提供してきました。また、中高生・工学部生を主な対象として若い人たちの現在や未来に関する疑問や悩みに真摯に対応するために、
✓ 工学キャリアに関する総合情報サイト
の構築を進めています。
(メタバース工学部メインサイト:https://www.t.u-tokyo.ac.jp/meta-school

■   ジュニア講座を提供して
ジュニア講座は、「メタバースを作ろう」、「デザイン×工学」、「起業入門」など、受講者数数十人規模から1,000人規模までの16の講座を開講し、のべ約3,000人という多くの方々に受講いただきました。(一部講座は、現在も開講中。)受講者からは有意義だった、面白かったという感想が寄せられるとともに、メディアにおいては中高生の新しい学びの体験が好意的に報道されました。実施状況の中で特に注目すべき点は、ジュニア講座の主対象とした中高生の受講は約6割で、残る半数弱は、保護者、中高校の教諭、大学生・大学院生、広い年齢層の一般社会人という多様な方々だったという事実です。これは、わが国では実に多様な立場の多くの人々が「新しい学び」を求めているという現実を示しているものと思われます。

■  リスキリング講座を提供して
リスキリング講座としては、「グローバル消費インテリジェンス(AI講座)」、「次世代サイバーインフラ」、「アントレプレーナシップ」、「Python基礎」の4講座をリアルタイム受講とアーカイブ視聴を組み合わせる形で開講し、法人会員16社から約700人の社員受講者を受け入れ、1講座50数人から1,500人超までの社会人(法人会員の社員、介護・育児等によるライフイベントによる離職者・休職者)と全国の学生に受講していただきました。受講生からは、「予想以上に多くの学びや気づきがあった」、「初めて聞く内容も多かったがスピードもよく分かり易かった」、「想像よりも規模や世界観の大きい講義内容に興奮した」などのポジティブな反応や4.7~4.0(5段階評価)といった高い受講満足度が寄せられました。これらのポジティブなフィードバックから私たちはリスキリング教育における産学連携の有効性と重要性を改めて確認したところです。

■   情報サイトの構築に向けて
工学や情報を学び、卒業するとどんな将来があるかなどの疑問に答えるための「卒業生のリアル」、工学分野におけるダイバーシティ推進に資する女子中高生へのアウトリーチのための「学生が工学研究の魅力を語る動画」などの制作を進める中で、多くの大学生・大学院生・卒業生・法人会員社員の協力を得ています。

 

 

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