プレスリリース

セラミックス粒界に新たな規則構造を発見-高性能なセラミック材料開発の新たな指針へ-:附属総合研究機構・マテリアル工学専攻 幾原雄一 教授、柴田直哉 准教授ら

 

ジルコニアセラミックス(ZrO2)は、燃料電池の固体電解質に用いられるセラミックスであり、その特性向上のためにイットリウム(Y)などの異種元素が添加されています。このイットリウム添加は結晶内部のイオン伝導性を向上させる働きがありますが、粒界などの界面部分に濃化してしまうと、粒界のイオン伝導を阻害することが知られています。そのため、異種元素の粒界への偏析現象は電池特性を劣化させる大きな要因とされてきました。今後、固体電解質をさらに高性能化するためには、この現象の本質を解明し、的確な制御が必要となります。

東京大学 大学院工学系研究科 附属総合研究機構の柴田直哉准教授、幾原雄一教授、馮(フウ) 斌(ビン)特任研究員、熊本明仁特任研究員らの研究グループは、大阪大学大学院工学研究科知能・機能創成工学専攻 吉矢真人准教授、横井達矢特任研究員と共同で、原子分解能走査型透過電子顕微鏡法(STEM)と超高感度X線組成分析手法により、ジルコニアセラミックス粒界のイットリウム偏析原子構造を初めて明らかにしました。その結果、イットリウム原子は粒界に不規則に偏析するわけではなく、原子レベルで規則的な構造を形成していることが明らかとなりました。この構造は理論計算により予測された構造とも良く一致し、粒界構造、イットリウム、酸素空孔の相互作用によって粒界にのみ形成される新たな相であることが明らかとなりました。本結果は、セラミックスに添加される異種元素が粒界などの界面にどのように分布し、機能特性に影響を及ぼすのかに関する原子レベルの基礎知見を与える発見であり、今後の高性能な固体電解質開発に指針を与える重要な成果です。

本研究は、JSPS科学研究費新学術領域「ナノ構造情報」の助成を受けて行った研究成果であり、日本時間2016年3月23日午後7時に英国科学雑誌「Nature Communications」オンライン版で公表されます。

 

 

原子分解能STEM-EDSマッピングによって明らかとなったジルコニア粒界の原子レベルの規則構造. a, Zr-K線の信号を用いてマッピングした像. b, Y-K線の信号を用いてマッピングした像.赤い矢印が粒界の位置を示している. Y濃度が単原子層レベルで変調していることがわかる.

 

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Abstract URL:http://www.nature.com/ncomms/2016/160323/ncomms11079/abs/ncomms11079.html