化学システム工学専攻 曹 雯昕さん(D3)が日本動物実験代替法学会第37回大会 ESTIV賞を受賞されました

2024/12/20

 

2024年 12月 1日、化学システム工学専攻 酒井・西川研究室 曹 雯昕さん(D3)が日本動物実験代替法学会第37回大会 ESTIV賞を受賞されました。

 

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日本動物実験代替法学会第37回大会 ESTIV賞
European Society of Toxicology In Vitro (ESTIV)と日本動物実験代替法学会 (JSAAE)の相互国際交流促進を目的に設立された賞。ESTIV代表者が、ポスター発表のAbstractをもとに数名を選抜し、選抜者数名による口頭発表とその審査を経て最終決定しました。

 

受賞された研究・活動について
タイトル: 人工粘液を用いたin vitro腸モデルにおけるLactiplantibacillus plantarum OLL2712によるヒトβ-ディフェンシン2の誘導と分泌の向上
ヒトβ-ディフェンシン2(hBD-2)は、ヒトの上皮細胞から分泌される最も豊富な抗菌ペプチドの1つです。いくつかの先行研究では、プロバイオティクス細菌がヒトの健康に影響を与える共通の特徴として、hBD-2の発現上昇が考えられると報告しています。しかし、ほとんどのin vitro研究では、加熱不活化した細菌を使用するか、短期間の細菌-腸管上皮細胞の共培養にとどまっており、hBD-2などを介したプロバイオティクス効果を明確に観測できていませんでした。また、粘膜バリアを含む生理的な腸内環境での長期的な宿主-微生物相互作用を調査したin vitro研究も行われていませんでした。 
本研究では、生体適合性の人工粘液層を含む安定したin vitroモデルの開発に成功しました。この人工粘液層は、Lactiplantibacillus plantarum OLL2712の増殖を支えるために必要でした。また、このモデルを用いて、Lactiplantibacillus plantarum OLL2712によるhBD-2の発現および分泌の調節を再現するなど、プロバイオティクス効果をin vitro条件下で示すことに成功しました。
次のステップとして、この人工粘液層を組み込んだin vitroモデルを、新たに設計された共培養デバイスと統合することを目指しています。このデバイスでは、異なる酸素環境を提供することでin vivo条件をより忠実に再現することが可能となります。また、このシステムを活用し、消化器疾患のメカニズムをin vitroで再現することで、治療法を開発、評価、提案することを目指しています。

 

今後の抱負・感想

研究者の皆様からいただいた建設的なフィードバックと洞察に満ちたご意見に心より感謝してます。これらは、今後の研究を進める上で貴重な指針となると考えます。また、明治ホールディングス株式会社の共同研究者の皆様や、酒井・西川研究室の皆様に、研究の過程を通じていただいた継続的なご支援と励ましに深く感謝いたします。

博士課程の研究を続ける中で、現在のin vitroモデルをより生理的な酸素環境で最適化し、製薬分野や食品科学における宿主-微生物相互作用の多様な応用を探求していく所存です。

 

 

 

日本動物実験代替法学会 第37回大会:https://jsaae37.secand.net/index.html