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丸山 一平 教授が Le Châtelier Distinguished Paper Award 2021 を受賞されました

 

2023年6月28日、建築学専攻 丸山 一平 教授が Le Châtelier Distinguished Paper Award 2021 を受賞されました。

 

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Le Châtelier Distinguished Paper Award 2021

このLe Châtelier賞は、Henri Louis Le Châtelierが博士論文のときに行ったセメント科学分野への貢献にちなんで名付けられた賞です。Le Châtelier の原理は、化学分野での基礎的原理として今も利用されており、複雑なセメント化学の原理解明に今も大きな貢献をしています。Cement and Concrete Research誌は、材料科学と材料工学分野で、特にセメントとコンクリートを扱う論文誌としてもっとも卓越したジャーナルで、15%の採択率、Impact factorは11.4となっています。2021年には、258本の論文が採択され、そのうちの3本にPaper Awardが与えられます。

 

受賞された研究・活動について

論文: H.Sasano, I. Maruyama, Mechanism of drying-induced change in the physical properties of concrete: A mesoscale simulation study, Cem. Concr. Res. 143 (2021) 106401. https://doi.org/10.1016/J.CEMCONRES.2021.106401.
概要:コンクリートは、もっとも大量に利用されている建設材料であるが、その長期間にわたる変質、特に強度の変化メカニズムは明らかにされていませんでした。過去には、強度が増大する場合も、強度が低下する場合も確認されており、研究者間でコンセンサスが取れていませんでした。本論文では、数値解析によってこの挙動を再現し、なぜ、強度が乾燥によって大きくなったり、小さくなったりするかを明らかにしました。具体的には、コンクリート中の大きな骨材である粗骨材と、セメントペーストと砂を組み合わせたモルタル、および界面の3相でコンクリートをモデル化し、乾燥によって変化するモルタルの収縮と強度変化、骨材の収縮を考慮することによって、コンクリートの強度変化は、骨材の周りのひび割れとモルタルの物性変化の両方の影響を受け、骨材が収縮しやすいものの場合は骨材まわりのひび割れが小さくモルタルの強度増大の影響が卓越して強度が増大し、逆に骨材が収縮しにくいものの場合には、強度が低下することを明らかにしました。

 

今後の抱負・感想

本研究は、エネルギープラントを長期に安全に利用するために行った研究から出てきた知見ですが、土木構造物、一般建築物にも適用可能な技術です。建物・構造物全体を見た場合には強度や剛性の変化だけでなく、さらにさまざまな剛性変化メカニズムが存在するのでこれらを解明・実証し、より長期間有効に利用する技術や、既存構造物の将来性能評価システムなどの構築を行っていきたいと考えています。また、コンクリートの圧縮強度発現メカニズムは、まだ100%明らかになったとはいえないので、これらの解明に取り組みたいと思っています。