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若手研究者紹介:富井 直輝 助教

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精密工学専攻 医用精密工学研究室 富井 直輝 助教

 

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【経歴】

2010年3月 東京大学大学院工学系研究科 精密機械工学専攻 修士課程修了
2010年4月 オムロン株式会社 入社
2017年3月 東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 博士課程修了
2017年4月 東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター 助教
2020年8月 東京大学大学院工学系研究科 精密工学専攻 助教

 

【研究について】

研究テーマ:数理的最適化で実現する高度医療支援のための生体計測・制御技術

 

日本を含む各国では高齢化を背景に、医療の労働力不足が進行しており、医師の診断・治療を効率化し負担を軽減する医療支援技術の実現が求められています。近年ではメカトロニクスを応用した手術ロボット、ICT技術を用いた遠隔医療、在宅医療のためのポータブルな医療機器、人工知能(AI)を用いたCT/MRI画像の自動診断など、さまざまな試みが行われています。


一方で、さらなる高度な医療支援の実現には、熟練した医師の高度な認識能力を、いかに医療支援技術に取り込むかが重要な課題となります。


例えば心電図の読影では、エキスパートの医師は限られた電極波形から、心臓内の興奮現象を推定して診断を下します。この推定問題は工学的には逆問題ですが、電極数が限られている上に計測困難なパラメータが無数に介在するため、解が一意に定まらない「不良設定問題」に分類されます。このような状況でもエキスパートの医師は、心臓の解剖や電気生理といった医学的知識を駆使して診断を行いますが、このような高度な認識に基づく診断は、単に疾患名を正解ラベルとして訓練する従来のAI学習では実現されません。


この例のように、生体には侵襲性の制約があるため、医師は限られた計測信号から、医学的知識に基づく高度な認識能力を用いて生体の状態を知り、診断・治療を行っています。私は生体信号の解析において、機械学習を含めたさまざまな数理的最適化を適用することで、高度な診断・治療支援を実現する事を目指し、現在以下の研究を行っています。

 

a)心電図波形認識に基づく不整脈の高度診断・治療

b)使用者をえらばないフレキシブル超音波イメージング

c)柔軟組織の変形を制御する手術支援ロボット

 

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【今後の抱負】

解剖モデルや生理モデルなど、生体の数理モデルと数理的最適化手法を組み合わせることで、熟練した医師と同等、あるいは人間以上の認識能力を備え、生体内部を効果的に知るための生体計測・制御技術を実現し、医療の発展に貢献してまいります。

 

【URL】

Naoki Tomii : https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/tomii

医用精密工学研究室: http://www.bmpe.t.u-tokyo.ac.jp/