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若手研究者紹介:村上 健太 准教授

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レジリエンス工学研究センター・原子力国際専攻(兼担)村上グループ 村上 健太 准教授

 

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【経歴】

2007年 東京大学 工学部システム創成学科卒業

2009年 東京大学 大学院工学系研究科原子力国際専攻修士課程修了

2012年 東京大学 大学院工学系研究科原子力国際専攻博士課程修了、博士(工学)

2010 - 12年 日本学術振興会特別研究員(DC2

2012 - 17年 東京大学 大学院工学系研究科原子力専攻(東海村キャンパス)助教

2017 - 21年 長岡技術科学大学准教授(原子力システム安全工学専攻・エネルギー環境工学専攻)

2021年 - 現在 東京大学 大学院工学系研究科レジリエンス工学研究センター准教授(システム創成学科Bコース・原子力国際専攻兼担)

 

【研究について】

私の研究室では“原子力”を題材に、物理/社会の両面から複雑系システムを研究しています。

一般的な製品とは異なり、原子力発電設備の中には「まだ起きていない事象」を踏まえた性能検証が必要なものがあります。例えば、放射線下で60年使用してから事故が起きたと仮定し、機器の信頼性を評価するような研究課題です。

 

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私たちは、想定すべき現象を原子レベルまで掘り下げて検討し、適正な試験方法を設計するための学理を組み立ててきました。そこで培われた放射線照射試験やin-situ測定技術は、原子力工学を超えて幅広く活用されています。大型実験設備を自分の手でマネージしたい学生・ポスドクを常に探しています。

最近は、既存プラントの長期的な施設管理や新型原子炉の開発動向に合わせ、より良い材料を柔軟に提供する仕組みの構築に取り組み始めました。一般に、構造材料の開発や改良には長い期間を要します。新型原子炉開発では、仮に優れた性質の材料開発に成功しても、原子炉本体のプロジェクトが中断すれば、すべて無駄になってしまうという問題がありました。そこで材料開発の仕組み自体を一つのシステムと見立て、システムとしての信用を高めるアプローチを提案しています。マテリアル・インフォマティクスに関心のある学生・ポスドクも募集中です。

「まだ起きていない事象」の検証には、複雑なシステムを安全かつ効率的に使用するためのマネジメントの仕組みも含まれます。システムを構成する機器等の状態や、運転経験を通して得られた知識を使って、安全性向上のための意思決定を行うプロセスを標準化し、そのパフォーマンスを計測するための研究も精力的に行われています。私たちの活動を通じて“安全文化”や“Risk-informed Decision Making”のコンセプトがアップデートされています。

産業界や規制の経験を有する専門家と議論を交わしながら研究を進めています。ここで鍛えられた学生は、原子力業界のみには留まらず、幅広い分野で活躍しています。

 

【今後の抱負】

「学理に基づいて原子力をアップデートする」ことを目指します。

社会インフラの一部になっているシステムは、多くの制約条件の下で運用されています(政策、安全規制、世論、国際関係、等々)。原子力の場合、個々の制約条件に過剰適応した結果、システムとしての面白さが失われつつある状況にあります。

私たちは、そんな原子力を複雑系の研究によって培われた学理でアップデートし、再び魅力あふれる領域にするために活動しています。

研究のベースとなる考え方には、次のようなものがあります。

① 常にサイズ感の異なる現象が並行していることを忘れない

② “長い時間のもつ力”を上手く活用する

③ 制約条件について誰よりも深く考えてから、それを無視する

 

【URL】

レジリエンス工学研究センター 村上健太研究室:http://www.safety.n.t.u-tokyo.ac.jp/murakami/index.html