プレスリリース

<東京大学、山梨県富士山科学研究所が連携> 富士山地域における情報通信インフラの脆弱性を解消する技術検証を実施

 

東京大学大学院工学系研究科(研究科長 加藤泰浩、中尾研究室教授 中尾彰宏、以下東京大学)、山梨県富士山科学研究所(所長 藤井敏嗣、以下富士山研)は、20231014日・15日に富士山において、ローカル5Gシステムと商用の低軌道衛星インターネットアクセスサービスとを接続し、山域における情報通信インフラの脆弱性を解消する実証実験を実施しました。

※本実証は、202163日に締結の東京大学大学院工学系研究科と山梨県の富士山の火山防災対策に関わる連携協定、及びNGCI(注1)の活動として実施しました。

 

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富士山は、国内外から多くの観光客や登山者が訪れる日本有数の観光地である一方、気象庁による常時観測対象の活火山の1つです。山梨県においても、富士山噴火履歴に関する新しい知見が確認され、溶岩流市街地に到達する予想時間が極めて短くなる等被害想定区域が拡大する見込みであり、防災意識が近年更に高まっています。

今回の実証実験では主に、①連接した低軌道衛星通信とローカル5Gシステムを搭載したバギーの不感地帯である登山道への迅速展開による広範囲な通信エリアの構築、②有事を想定した現場と麓の関係者間での音声・映像によるリアルタイム情報伝達の実現、③災害現場のモニタリングを想定したドローンからの高精細映像のリアルタイム遠隔配信の実現、の3点を実施し、音声・映像ともに良好な通信品質を確保することに成功しました。

バギーにローカル5G基地局を搭載し自動遠隔操作を行うことで、人が立ち入り不可能なエリアや携帯電話等の電波が届かないエリアにおいても、ドローンや各種カメラの映像を高精細かつリアルタイムに送信することに成功しました。上記により、通信回線の輻輳(ふくそう)や遮断などが想定される有事において、ローカル5Gと低軌道衛星通信を使うことで実用に資する安定した通信環境の確保が実現できることを確認しました。

今後は、富士山地域での情報通信インフラの脆弱性解消実証を1つのモデルケースとして確立し、同様の課題を抱える自治体への水平展開を図るとともに、Beyond 5G等次世代通信における低軌道衛星通信等の非地上系通信と地上通信網との連接における更なる課題解決に向けた研究開発に取り組んでまいります。

 

 

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1:ローカル5Gを利用したドローンからの映像伝送実験(注2

 

 

fig032:低軌道衛星通信・ドローンを搭載した迅速移動・展開可能なローカル5G基地局(注3)

 

 

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3:東京大学と山梨県富士山科学研究所の実験メンバ(富士山4合目にて)

 

<注釈>

(注1NGCI次世代サイバーインフラ連携研究機構
東京大学が発足した研究機構。サイバー空間を現実世界(フィジカル空間)と一体化させる知識集約型社会のバックボーンとして中核的な役割を担う5G/Beyond 5Gをはじめとする次世代サイバーインフラ実現のための連携研究に取り組みます。
https://cyber.nakao-lab.org/

 

(注2)画像上の人物・氏名等についてはぼかし処理をしています。

 

(注3)現在のローカル5G免許制度においては、有事の際の臨機の措置を除き、移動させてローカル5Gを運用することができないことに注意が必要です。

 

<研究支援>

本実証実験の一部は、総務省における「電波資源拡大のための研究開発課題」における「V. 多様なユースケースに対応するためのKa帯衛星の制御に関する研究開発」の支援の下実施しています。

 

 

 

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