プレスリリース

東京大学が築88年の講義室を改修し、 「KAJIMA HALL:15号講義室」を開設 ―歴史的空間を継承しつつ、最先端の研究・教育を実現するドリーム講義室―

 

東京大学大学院工学系研究科(研究科長:染谷隆夫)は、鹿島建設株式会社(代表取締役社長:天野 裕正、以下「鹿島建設」)の設計施工による寄附、並びに東京大学FSI債(注1)の支援により、工学部1号館の「15号講義室」及び「ホワイエ」を改修し、新しく「KAJIMA HALL:15号講義室」を開設しました。2023年4月1日から順次運用を開始します。

 

fig1KAJIMA HALL:15号講義室

 

■計画の経緯
東大本郷キャンパスは、豊かな自然環境とともに安田講堂をはじめとする歴史的な建物が継承されており、世界的にも貴重な研究と教育の場となっていますが、一方で築80年を超える鉄筋コンクリートの建物群は老朽化の問題を抱えています。既存の工学部1号館15号講義室は内田祥三元総長の設計で1935年に竣工した後、1995年に東大施設部と香山壽夫建築研究所(現・香山建築研究所)の設計・監理によってホワイエ部分の増床と講義室内の改修を行いました。創建から85年、改修から25年が経ち、建築・設備の更新が求められるなか、2020年春に鹿島建設から寄附の提案を受け、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻が千葉学教授の総括で知見を結集、歴史的空間を継承しつつ、先進的技術を導入して最先端の研究・教育の拠点とすることを主題に計画を進めて参りました。
基本設計協力、実施設計および施工は鹿島建設が行いました。キャンパスマネジメント研究センター(以下CMRC)がキャンパス・マネジメントをボトムアップ的に具現化していく重要な実践的プロジェクトと位置付けたうえで、千葉学教授・CMRCセンター長のもと実施設計と工事監理の監修を行いました。また、先端的設備の導入には東京大学FSI債の支援を受けました。

■「KAJIMA HALL:15号講義室」の特長
・歴史的空間の継承と先端的技術の共存
既存の15号講義室は安田講堂と同じく扇形の座席配置が特徴で、建築学専攻と社会基盤学専攻の講義のほか、格式高い空間に相応しくシンポジウムやセレモニーで使用されてきました。内田祥三元総長による創建から香山壽夫名誉教授による改修へと紡がれてきた貴重な歴史的空間を読み解き、机と椅子、教卓、手摺から壁の色に至るまで各時代の歴史的価値を検証しながら、現代的な要求に応えるよう継承/改変のあり方を検討しました。天井は、創建当時の格天井を配置基準としたグリッド天井として歴史性を継承しながら、ライン照明や音響設備、センサー機器を取り付けました。将来的な設備の維持更新を見据えたインフラとしてデザインすることで、過去から未来へとつながる空間を実現しています。

・先端的研究のための実験の場
グリッド天井に設置したセンサー機器によって温湿度や二酸化炭素濃度、在室人数、照度、騒音、加速度などをセンシングします。これらのデータを使用して空調などの自動制御を行うほか、将来的にはセンサー機器を増設し、各研究室と連携した実証実験の場として活用していきます。

・多様な講義スタイルへの対応
既存の座席配置から1列減らして座席間隔と前方教壇側の平場を広げるとともに、教卓を可動式にすることで、従来の講義形式だけでなく対談形式やワークショップ形式など多様な講義形式に対応します。また、前面には200インチスクリーンを2つ配置し、グリッド天井に設置した指向性マイクやカメラと連携して、対面とオンラインの参加者がスムースにつながるハイブリッド講義が可能となっています。

 

fig2

KAJIMA HALL:15号講義室 全体構成

 

■「KAJIMA HALL:15号講義室」の概要
【施設概要】
・場所:工学部1号館
・規模:工学部1号館の1階、中2階部分のうち、講義室158.17㎡、ホワイエ90.00㎡、計248.17㎡
・基本設計:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻(総括:千葉学教授)
 基本設計協力:鹿島建設株式会社
・実施設計・施工:鹿島建設株式会社
 監修(実施設計・監理):千葉学教授(CMRCセンター長)およびCMRC
・工期:2022年7月29日〜2023年3月30日
・開設日:2023年3月31日

■注釈
(注1)国立大学法人東京大学債券(ソーシャルボンド、愛称「東京大学FSI債」)
FSI(Future Society Initiative:未来社会協創)とは、教育と研究に加えて、複雑化する社会課題の解決を新たなミッションと認識し、文理を超えた「知」を集積して、より良い未来社会の構築に向けて協創すること。

 

 

 

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