プレスリリース

超小型ソフトウェア無線ボードの開発 ―ソフトウェア拡張により進化するプログラマブル基地局の開発を加速―

 

発表のポイント

次世代通信規格の開発に対応する“超小型”ソフトウェア無線(SDR)ボードの開発に成功しました。
M.2の規格のインターフェース、超小型(縦80mm 22mm 厚み 約5mm(基板厚0.8mm))に対応し、5Gや次世代の通信プロトコルをプログラム可能なボードを開発しました。
SDRを活用した5G/B5G通信機器による実証において有用性の確認、検証を通じ、社会的課題の解決、潜在ニーズの探索や価値創出を加速します。

 

fig1

超小型ソフトウェア無線:SDR

 

発表概要

東京大学大学院工学系研究科 中尾研究室(教授:中尾 彰宏、以下「東京大学」)は、次世代通信規格の開発用の“超小型”ソフトウェア無線(Software Defined Radio、以下SDR)ボードの開発に成功しました。本SDRは従来品と比べ小型でありながら拡張性を実現しています。

Beyond5G(以下B5G)に向けた通信技術を確立するためには、LTE5Gなど既存の通信技術を踏襲しながら次世代規格に向けた要素技術を取り込み、標準化していく事が重要となります。通信規格は継続的に進化していく為、通信規格の継続的な進化に追従可能な通信端末のソフトウェア化が求められます。これらを実現するための、超小型かつソフトウェア拡張性を備えたSDR並びに同SDRを組み込んだ5G/B5G通信機器の社会的ニーズが高まることが想定されます。東京大学では、本SDRの開発成功を起点に更なる技術開発を進めると共に、さまざまなユースケースを想定した実証において有用性の確認、検証を通じ、社会的課題の解決、潜在ニーズの探索や価値創出を加速させます。

 

発表内容

〈研究の概要〉
将来の社会実装が期待されるB5G通信に関しては、これまでの高速大容量通信、高い信頼性、低遅延や多数同時接続の特性に加えて、超低消費電力、より高い安全・信頼性、自律性、拡張性等求められる機能が広がり、ネットワークインフラはより複雑化し、そしてユースケースも多様化していくことが想定されます。

B5Gは要素技術の確立と標準化が2025年頃から順次行われることで、2030年頃の通信事業者やメーカーによるサービスインが可能となります。そのためB5G時代を見据えた、現時点からの多様なユースケースに対応するための要素技術の蓄積は、日本国内メーカーが将来の競争力を確保するために重要な要素となります。特に、B5G端末の通信用半導体技術はあらゆる通信の根幹をなす必要不可欠な基盤技術であるため、日本の国際競争力向上や経済安全保障上も最重要な技術であり、産官学の連携による取り組み強化が求められています。

このような背景の下、東京大学は、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の「Beyond 5G研究開発促進事業 委託研究」である「継続的進化を可能とするB5G IoT SoC及びIoTソリューション構築プラットホームの研究開発」に、令和3年に採択されました(採択番号:00801)(注1)。東京大学では、採択以降鋭意開発に取り組み、このたび拡張性を備えた超小型のSDRとソフトウェア開発キットの開発に成功しました。

 

〈今回の成果〉

拡張性を備えた超小型SDRの特徴は下記の通りです。

  • 超小型: M.2の規格に対応。縦80mm 22mm 厚み 約5mm(基板厚0.8mm)(図1
  • 機能特性:
  ▷ソフトウェアによる動作周波数変更や機能追加等のカスタマイズが可能
  ▷5G基地局として動作を確認:汎用シングルボードコンピュータ(SBC)との組み合わせにより、5G基地局(Sub6)や端末として動作可能(図2
  ▷複数枚を連携動作させて広帯域プロトコルの実装が可能

fig1

図1:超小型ソフトウェア無線:SDR

 

fig2図2:汎用SBCと接続し、5G基地局として動作を確認

 

この成果は日本の産業競争力の底上げに寄与し、グローバル市場で戦うための経済活性化を目的に大学発ベンチャー企業へ技術移転するビジネスモデルについても道筋を付けています。

 

今後の予定

東京大学は、大学発ベンチャー企業の一体型5G/B5Gシステムに今回の開発成果を供給予定です。また、東京大学と民間企業による産学連携の取組の中で、本事業で開発したSDRを組み込んだ製品により5G/B5G通信環境を整備し、さまざまなユースケースを想定した実証で活用することで、社会課題解決、潜在ニーズの探索や価値創出を加速させます。さらに、東京大学は日・フィンランドBeyond 5G/6G 共同セミナー(注2)でBeyond 5G/6Gの推進に向けた国際連携の取組を深めることの重要性を確認しました。本研究の成果も活用し、国際連携を推進いたします。

 

発表者                        

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻

中尾 彰宏(教授)

 

研究助成

本研究は、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)Beyond 5G研究開発促進事業委託研究

研究開発課題名:継続的進化を可能とするB5G IoT SoC及びIoTソリューション構築プラットホームの研究開発(採択番号:00801の支援により実施されました。

 

注釈

(注1)

NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)Beyond 5G研究開発促進事業委託研究

研究開発課題名:継続的進化を可能とするB5G IoT SoC及びIoTソリューション構築プラットホームの研究開発(採択番号:00801

事業期間:令和3年度~令和7年度

事業概要:https://www.nict.go.jp/collabo/commission/B5Gsokushin/B5G_00801.htm

 

(注2

日・フィンランドBeyond 5G/6G共同セミナーを開催

「デジタル化の社会的インパクト ~Beyond 5Gの推進に向けて~」

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1311_00083.html



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