プレスリリース

Beyond 5G時代のイノベーション高速化を支える テストベッドの在り方に関する共同研究(概要)


株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二、以下MRI)と国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(所在地:東京都文京区、研究科長:染谷隆夫)中尾彰宏研究室(以下中尾彰宏研究室)は共同研究を行い、Beyond 5G時代のイノベーション高速化を支えるテストベッドを「ラピッド・イノベーション・テストベッド(RITB)」と称し、その要件と具体像を提示しました。

ラピッド・イノベーション・テストベッド(RITB) 

次世代の無線通信技術(Beyond 5G)等が普及する2030年代、ネットに流通する情報量は飛躍的に増大する。これまでのデジタル社会ではGAFAM等のメガプラットフォーマーが付加価値創造のけん引役だったが、Beyond 5G時代には誰もが主体的に安心してデジタルの果実を享受できる「分散型成長」の実現が期待される。

近年、情報通信分野を中心にイノベーションを支える場として、繰り返し試験を実施できる場「テストベッド」が注目され、国内外で先進的に取り組まれている。共同研究では、分散型成長に向けたイノベーションを支える場を「ラピッド・イノベーション・テストベッド(RITB)」と称し、RITBが備えるべき2つの要件を抽出した。

①イノベーションの迅速化:共通基盤としてRITBを整備し、様々な企業が自由に活用。RITB内で繰り返し試験を行い開発に素早く反映し、市場化までの時間を短縮することが可能となる。

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②多様性と包摂性大企業に限らず中小企業やスタートアップ、研究者、学生、市民など多様なプレーヤーが参画し、地域の課題解決のための試験や一般市民の受容性の試験など様々なテストベッドを整備する。それらの成果をつなぎ合わせることで多様かつ包摂的なイノベーションを支える。

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これらの要件を満たすテストベッドの具体像として、「混然一体型丸ごとテストベッド」「多分野連携型リアル・デジタル融合テストベッド」の2つを提案する。

 

混然一体型丸ごとテストベッド

企業・行政・金融、研究者・学生、市民など多様なメンバーがオープンに参加し、同時にテーマや技術段階が異なる複数のテストベッドを同じ場で運営(混然一体)する。実際に一般の人々が活動する例えば、大学キャンパスや地域コミュニティなどに溶け込ませて設置する(丸ごと)ものである。このテストベッドでは、今までにないイノベーションが孵化するとともに、テストベッド自体が目的や運用を変え進化していくことが期待できる。

混然一体型丸ごとテストベッドの基礎は既にある。中尾彰宏研究室による企業と連携したオープン型のテストベッドのほか、東京都と東京都立大学による複数テーマを扱うテストベッドなどがあり、これらの知見も踏まえて雛型(プロトタイプ)を開発し、ベストプラクティスをあげることが期待される。その後、全国の大学や地域コミュニティに横展開し、地域の産業や社会課題を踏まえたイノベーションの創出や人材育成に資することが考えられる。

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多分野連携型リアル・デジタル融合テストベッド

複雑な社会課題解決に資するイノベーションの市場化を支援するため、多分野にわたるリアル・デジタル融合テストベッドを連携・運用する。例えば、介護ロボットの研究・開発・実装においては、性能・操作性・安全性・受容性などを対人・施設内の状況下で多様なテストが必要となる。これらのテストをデジタル空間に構築された多分野のテストベッドを用いて網羅的に実施し、その結果をリアルのロボットにフィードバックすることで市場化までの時間を短縮することができる。

このテストベッドの展開として、まずはデジタルツイン等を活用した単目的のテストベッドが複数構築され、次に複数のテストベッドを連携させる雛形(プロトタイプ)を開発した後、実社会のテストベッドに展開していくことが考えられる。実社会のテストベッドの開発・運用は、例えば地域のテストベッドは自治体や不動産・交通事業者が主導、業界のテストベッドは業界団体が主導することが想定される。

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本共同研究では、Beyond 5G時代のイノベーション高速化を支えるRITBの要件と具体像を提示した。今後、MRI及び中尾彰宏研究室はその実現に向けて関係機関と連携しつつ検討を進めていく予定である。

 

〔共同研究報告書の入手は、MRIホームページ(下記URL)からお申込みいただけます。〕

https://www.mri.co.jp/news/press/20220930_2.html

 

 

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