プレスリリース

東京大学、本田技術研究所、凸版印刷、三洋化成で身体に装着して使う生化学ラボシステムの開発に向けた社会連携講座を共同開設

 

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(所在地:東京都文京区、研究科長:染谷隆夫、以下「東京大学」)、株式会社本田技術研究所(本社:埼玉県和光市、代表取締役社長:大津 啓司、以下「Honda」)、凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下「凸版印刷」)、三洋化成工業株式会社(本社:京都市東山区、代表取締役社長:樋口 章憲、以下「三洋化成」)は、2022年1月1日に「装身型生化学ラボシステム 社会連携講座」を東京大学内に開設し、身体に装着し、汗などの生体試料※1から主にストレスや疲労などに関わる生化学情報を身体への負担が少なくかつ連続的にセンシングする「装身型生化学ラボシステム※2」の開発及び、その実証技術の研究に着手しました。
本講座は、業種の異なる3社と東京大学のバイオエンジニアリング専攻で、ヒトとデバイス・マテリアル、さらに機械をつなぐバイオインターフェース技術、デバイスおよびシステム設計技術を構築し、さらには、開発する装身型生化学ラボシステムを用いた“先進ヘルスケアシステム“の実証技術を構築します。これによって、将来的には自動車や建機など移動・輸送機械の運転時の安全性や快適性の向上、健康・医療・介護機器などでの活用による人々の一層の健康増進に貢献することを目指します。
また、本講座は、装身型の生化学ラボシステムを用いた先進ヘルスケアシステムのあり方の議論を、医工学連携教育として実施することで、未来の医療を担う人材育成を行います。

<“先進ヘルスケアシステム“とは>
年々盛んになりつつある、体温・脈拍・心電などのバイタル情報を用いて体調管理や健康維持に活用するヘルスケアを更に発展させ、安心・安全・快適性を向上させたウエアラブルセンシングデバイスかつ、さらにそれらの情報をIoTやAI技術と複合・高度化し、取り巻く環境や機器と連動させた次世代のヘルスケアシステムのこと。
※1 ヒトから得た汗などの材料サンプル
※2 装着型生化学ラボシステムとは、小型の生化学分析デバイスが集積化された実験室機能が体に装着したシステムを意味する

1.社会連携講座設立の目的 
体温、脈拍、心電などのバイタル情報を用いて体調管理や健康維持に活用する試みは、ヘルスケアと呼ばれ、年々盛んになりつつあります。代表的なヘルスケア機器にスマートウォッチがあります。我々の未来の豊かな健康社会、更には健康長寿社会の実現に向けて、現状でのヘルスケアをさらに発展させることが必要です。具体的には、安心・安全・快適性を向上させたウエアラブルセンシングデバイスで、さらにそれらの情報をIoTやAI技術と複合・高度化し、我々を取り巻く環境や機器と連動させる“先進ヘルスケアシステム”が期待されています。
本講座においては、これらの実現を目指し、従来のバイタル情報に加え、汗などの生体試料から生化学情報を低侵襲かつ連続的にセンシングする“装身型の生化学ラボシステム”を開発し、我々を取り巻く環境と調和させた先進ヘルスケアシステムに向けた実証技術を医工学連携で構築します。

2.社会連携講座の概要
・設置期間 2022年1月1日 から 2024年12月31日(3ヵ年間)
・代表教員 高井まどか(東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻教授)
・研究の方向性
本講座に参画するHondaは二輪、四輪、汎用製品の製造・販売の他、航空機や航空機エンジンなどの新規事業の開発も手掛けています。また凸版印刷は印刷技術をベースに情報コミュニケーション事業分野、生活・産業事業分野およびエレクトロニクス事業分野の3分野にわたり幅広い事業活動を展開しています。三洋化成は、紙おむつや化粧品、自動車などの原料から医療機器まで幅広い分野で素材事業を展開しています。本講座では、Hondaのドライバーの体と心の状態に合わせて運転時の安全性や快適性を向上させるヒューマンマシンインターフェース技術、凸版印刷のデバイス小型集積化・システム化技術、三洋化成のバイオケミカル・材料・界面制御技術、東京大学工学系研究科バイオエンジニアリング専攻が有するバイオデバイス・バイオマテリアルからヒトとデバイス・機械をつなぐバイオインターフェース技術、各々の強み技術を持ち寄り、実用に資するレベルの、汗などから低侵襲に生体物質の連続センシングする“装身型の生化学ラボシステム”の開発を目指します。
そのため、以下に示す3つの方向性で共同研究を進めてまいります。

1) 汗等の容易に採取可能な分泌性検体に含まれる各種マーカー、特にストレス、疲労等に関わる生化学情報を連続取得可能なデバイス・システム化技術に関する研究
2) システムの中で、肌や検体に直接触れるディスポーザブル部分に対し生体親和性をもつ材料、廃棄時に環境負荷の小さい材料の開発とデバイス構造設計生産技術に関する研究
3) 装身時の快適性を増す機能をもつ医療材料、分析性能を高める生体と材料の界面技術に関する研究

・目指す社会実装成果
上記の研究開発成果を基に用途に応じた装身型生化学ラボシステムの開発を進めることで、以下に示すような社会実装成果を得ることが可能となります。
1) 自動車や建機など移動輸送機械における、生化学情報の連続モニタリングによる運転時の安全性や快適性の向上を目的とした動的な環境制御、運転制御への展開
2) 健康・医療、介護機器等で、日常の生化学情報の連続モニタリングによる個人に合わせた快適性向上、健康増進を目的とした動的制御への展開

・人材育成
ここで提唱する装身型の生化学ラボシステムを用いた“先進ヘルスケアシステム”のあり方の議論をバイオエンジニアリング専攻で医工学連携教育として実施し、環境調和型のヘルスケア医療の実現を目指します。


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