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1.発表者:
三田 吉郎(東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授)
木村 隆志(東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設(兼)データ統合型材料物性研究部門 准教授)
竹尾 陽子(東京大学物性研究所 助教)
島村 勇徳(東京大学物性研究所)
櫻井 快(東京大学物性研究所)
吉永 享太 (東京大学物性研究所)
中田 勇宇(東京大学物性研究所)
永山 裕一 (東京大学物性研究所)
幾原 雄一(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 教授)
2. トピックの概要:
東京大学マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点(注1)が参画する、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM:注2)において令和7年度の「秀でた利用成果」(注3、4)が選定され、東京大学物性研究所の木村 隆志研究室の利用成果が優秀賞を受賞しました。東京大学は令和2年度から3年連続で「最優秀賞」を受賞し、その後令和5年度優秀賞2件、令和6年度最優秀賞1件を受賞しました。優秀賞は毎年4-8件が選定され、その中から特に優秀な利用成果として最優秀賞が1-2件選定されます。東京大学は年間約3,000件の中から毎年最高レベルの高い評価を得ています。秀でた利用成果は、利用者の卓越した研究力と東京大学武田先端知ビルクリーンルーム(注5)を核とする共用施設と優秀な技術スタッフの熟練の支援の成果です。
本受賞の発表は、同事業のセンターハブである国立研究開発法人物質・材料研究機構から2025年10月20日(木)に行われました(注3)。また、成果発表会ならびに表彰式は2026年1月28-30日に東京ビッグサイトで開催される第25回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2026)にて2026年1月28日(水)に行われます。成果発表会は最優秀賞を選定する審査を兼ねており、同日中に選定され表彰されます。最優秀賞の受賞が期待されます。
受賞した研究成果は、超微細加工を活用したX線顕微イメージング技術の高度化です。可視光と比較して2桁以上波長の短いX線を利用した顕微鏡では、高い空間分解能で物性分析を実現可能な反面、光学素子に非常に高い精度が求められます。研究グループでは、東京大学ARIM拠点代表者の幾原 雄一教授、同拠点微細加工部門(武田先端知ビルクリーンルーム)運営責任者の三田 吉郎教授の支援を受け、超高速大面積電子線描画装置を代表とする先進半導体プロセス装置群を活用することで、こうした課題に挑戦してきました。今回、開発した超精密光学素子を大型放射光施設SPring-8に設置した軟X線顕微鏡の波面検出や試料計測に導入し、細胞など様々な測定対象の高分解能化学イメージングに応用可能なことを実証いたしました(注6)。
現在、最先端のリソグラフィ技術では波長13.5 nmの極端紫外光が活用され、次世代技術としてより波長の短い軟X線域でのリソグラフィも議論されています。そのようなリソグラフィ装置では、光学系に対して極めて高い精度が要求されます。本成果は顕微鏡への応用に留まらず、様々な場面への波及効果も期待されます。

3.注
(注1)東京大学マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点
https://arim.t.u-tokyo.ac.jp/
(注2)文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(Advanced Research Infrastructure for Material and Nanotechnology: ARIM)
https://nanonet.go.jp/
(注3)ARIM令和7年度秀でた利用成果
https://nanonet.go.jp/page/page000998.html
(注4)ARIMの秀でた利用成果の選定基準は以下の通りです ① ARIMの活用・支援が大きな効果をもたらしたもの、② イノベーションの創出にあたって大きな影響が期待できるもの、③ 産業界・大学・公的機関の連携により大きな成果が得られたもの。
(注5)東京大学武田先端知ビルスーパークリーンルーム
https://nanotechnet.t.u-tokyo.ac.jp/index.html
(注6)
軟X線で細胞内の「化学地図」を描く ―新開発の軟X線分光顕微鏡で窒素・酸素の化学状態を 詳細に可視化することに成功―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=26275
100兆分の1秒の一瞬で生きた細胞の姿を捉えることに成功 ―X線自由電子レーザーを利用した新たな軟X線顕微鏡を開発―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=22879
高精度ミラーと計算を組み合わせた軟X線顕微鏡を開発 ―ラベルフリーで細胞内の微細構造を50 nmの分解能で可視化―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=16120
4.問い合わせ先:
<マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点について>
東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻
/大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)基盤デバイス研究部門長
教授 三田 吉郎(みた よしお)
〒113-0032 東京都文京区弥生2-11-16 東京大学武田先端知ビル306
東京大学 大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)
基盤デバイス研究部門 ナノテクノロジー支援室 落合幸徳マネージャ気付
URL: https://arim.t.u-tokyo.ac.jp/
<研究内容について>
東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設(兼)データ統合型材料物性研究部門
准教授 木村 隆志(きむら たかし)
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