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都市工学専攻の樋野公宏准教授らの研究グループは、宇都宮芳賀ライトレール線(ライトライン)の開業が住民の歩行行動に与える影響を、スマートフォンの歩数データを用いて分析しました。その結果、開業後に駅からおおむね600m以内に居住する住民の歩数が有意に増加していることを明らかにしました。
2023年8月に開業したライトラインは、国内で75年ぶりに新設された路面電車として注目を集めています。「ネットワーク型コンパクトシティ」構想の実現を目指し、自動車依存が高い地方都市において、自動車から徒歩や公共交通への転換を促すことが期待されています。しかし、これまで鉄道整備が住民の歩行行動に及ぼす影響を客観的データで示した研究は少なく、とくに地方都市での実証研究は見られませんでした。
分析においては、18〜65歳の住民397人を対象に、ライトライン開業前(2022年11月)と開業後(2023年11月)の歩数データを比較しました。一般化線形混合モデルを用いて統計的に評価した結果、平日では550m以内の居住者が約1.15倍に、休日では650m以内で約1.12倍に増加していました。それぞれ、約826歩、約626歩に相当する増加です。
これは、ライトラインを利用することによる歩行機会の増加に加えて、駅周辺で新たに整備された商業・サービス施設への徒歩アクセスの向上が、日常的な歩行促進につながった可能性を示唆しています。
本研究は、東京大学とジオテクノロジーズ株式会社との共同研究の成果の一部です。研究チームは今後も長期的にライトライン導入後の歩行行動の変化を分析する予定です。

論文情報
掲載誌名:Journal of Transport & Health
論文タイトル:The Impact of Introducing New Light Rail on Step Counts: Threshold Distance Analysis in a Japanese Regional City
著者:樋野公宏准教授1(責任著者)、山田育穂教授2、吉田崇紘講師2
(1.東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻、2.東京大学空間情報科学研究センター)
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jth.2025.102206
お問い合わせ先
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 樋野公宏准教授
E-mail: hino[at]ua.t.u-tokyo.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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