発表のポイント
◆ ドローンにローカル5G基地局機能を搭載し、上空からローカル5G(4.8GHz帯)による通信エリアを形成するシステムの構築に成功した。フィンランド・オウル市の特区環境「OuluZone」にて実証を行い、災害時を想定した条件下で迅速かつ柔軟に安定した通信が提供可能である事を確認した。
◆ 本システムは、災害時の迅速な通信確保や不感地帯の解消に寄与することが期待される。また、国際連携の観点では、日本国内では合意形成に時間のかかる先端通信技術の研究開発について、OuluZoneを有効活用し、継続的に推進する基盤の形成が期待される。
概要
東京大学大学院工学系研究科(所在地:東京都文京区、研究科長:津本浩平、同研究科中尾研究室教授:中尾彰宏、以下「東京大学」)と、オウル大学(所在地:フィンランド共和国オウル市、学長:Arto Maaninen)は、災害時などの不感地帯における迅速な通信環境構築を目的として、ドローン搭載型ローカル5G基地局(図1)を用いて、フィンランド・OuluZone(注1)において実証実験を実施しました。本システムにより空中からの通信エリア構築を実現するとともに、通信性能の評価および災害時等を想定したユースケース検証を行い、その有用性を確認しました。
本研究は、オウル大学のMatti Latva-aho教授が東京大学グローバルフェローとして参画している連携体制のもと、昨年度富士山地域で開催された国際シンポジウムを契機に開始されたものです。

図1 ドローン搭載型ローカル5G基地局
発表内容
1. 背景および研究の契機
東京大学は、オウル大学との連携協定(関連情報1)に基づき、次世代無線通信分野における国際共同研究を推進しています。特に、オウル大学のMatti Latva-aho教授が東京大学のグローバルフェローに就任していることから、6Gを見据えた先端的な通信技術に関する研究体制が構築されています。
本研究は、昨年度に富士山地域で実施された国際シンポジウム(関連情報2)を契機として開始されました。同シンポジウムでは、災害時など通信インフラが機能しない不感地帯において、迅速に通信エリアを確保する新たな手法として、ドローンに基地局機能を搭載するアイデアが提案されました。特に山岳地域や被災直後の現場では、既存インフラに依存しない柔軟な通信手段の必要性が強く認識されています。
2. 提案手法の概要
本研究では、ドローンにローカル5G基地局を搭載し、衛星通信機器と連携させた新たな通信システムを設計しました(図2)。本システムでは、ドローンが空中から柔軟に通信エリアを構築し、迅速に通信環境を展開することが可能です。また、外部ネットワークへの接続に衛星通信を利用することで、遠隔地との通信やインターネット接続が可能となり、有事の際の情報共有や状況把握の迅速化に貢献します。これにより、被災地や山間部などのインフラが十分に整っていない環境においても、短時間で通信環境を構築し、現地と遠隔拠点との円滑なコミュニケーションを実現することが期待されます。

図2 ドローン×ローカル5G×衛星通信による新たな通信システム
3. 実証実験の内容と結果
提案手法の有効性を検証するため、フィンランド・オウル市に位置する実験環境OuluZoneにおいて実証実験を実施しました。オウル大学との連携のもと、ドローンに搭載したローカル5G基地局を用いた実証環境を構築し、柔軟かつ迅速な通信エリア展開の可能性を検証しました。加えて、Oulu Zoneは実験特区として柔軟な実証環境を有しており、日本国内では合意形成に時間がかかる空中からのローカル5G(4.8GHz帯)の電波発射について、いち早く実環境で検証できる貴重な機会となり、本研究の加速に寄与しました。
本実証では、約330m規模のカート場エリアを対象に、ドローン搭載型ローカル5G基地局による通信エリアを構築しました。さらに比較検証として、地上設置型の基地局・アンテナによる通信環境も構築し、エリア形成の特性や通信品質を比較評価しました。
その結果、ドローンを活用することで、地形や設置場所の制約を受けにくく、柔軟に通信エリアを形成できることを確認しました。また、高所から電波を展開することで、より広範囲かつ効率的なエリア形成の可能性を確認しました。これらの結果から、災害時やインフラ未整備地域など、迅速な通信環境展開が求められる場面における本提案手法の有効性を実環境で実証しました。
4. 両大学関係者コメント
【東京大学(大学院工学系研究科 中尾彰宏教授)】
必要な場所へ必要な時に通信環境を展開する技術は、次世代サイバーインフラの実現に不可欠です。本実証では、オウル大学との国際連携のもと、実験特区であるOuluZoneを活用することで、日本国内では合意形成に時間がかかる空中からのローカル5G基地局の実証をいち早く実施することができました。今回、ドローンに搭載した自営の高品質無線通信網であるローカル5Gにより、柔軟かつ効率的な通信エリア形成の可能性を確認できたことは、将来の災害対応や次世代通信基盤の実現に向けた重要な一歩です。今後も、空・地上・衛星を統合した次世代サイバーインフラの研究開発を推進し、研究成果を社会実装へとつなげる取り組みを加速してまいります。
【オウル大学(研究担当副学長 Matti Latva-aho教授)】
東京大学のチームとの連携により、実環境において実用的な技術の検証を行う機会を得ることができました。OuluZoneでは、日本の規制下では現時点で実施できない無線実験を可能となり、その結果、上空から安定した通信エリアを提供できることが示されました。
5. 社会的意義と今後の展望
本技術は、災害発生直後における通信インフラの迅速な復旧や、山岳地域・離島などの通信不感地帯における一時的な通信確保手段としての活用が期待されます。今後は、日本国内における制度整備の動向も踏まえつつ、実運用に向けたシステムの改良、運用手法の検討を進めるとともに、具体的な利用シーンを想定した検証を行っていく予定です。また、国際連携を通じて、次世代モバイル通信技術の社会実装に貢献していきます。
〇関連情報:
[1]フィンランド・オウル大学との連携協定を締結
オウル大学と東京大学が2023年2月2日に締結した学術連携協定。ICT分野(6Gを含む)をはじめとする幅広い分野での共同研究や研究者・学生交流、産学連携の推進を目的としています。
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0104_01041.html
[2] 2024年度富士山シンポジウム
富士山シンポジウムは、2024年11月21日および22日に開催された、未来社会を支える情報通信インフラ(サイバーライフライン)をテーマとしたシンポジウムであり、産業・行政・学術の関係者が研究成果の発表や議論を行いました。
https://www.ieice.org/cs/ap/ap-net/ap-net_1699/
研究助成
本研究の一部は、JST ASPIRE JPMJAP2323により得られたものです。
用語解説
注1:OuluZone
OuluZoneは、フィンランド・オウル市に整備された実証実験フィールドであり、無線通信やスマートシティ関連技術の実環境検証が可能な屋外テストベッドです。https://oulu.com/en/smartcityoulu/platforms/oulu-zone-2/
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