国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と株式会社クボタ(以下「クボタ」)は、2021年11月30日に締結した「株式会社クボタと国立大学法人東京大学との間における産学協創協定」に基づき、社会連携講座「炭素・窒素循環型社会の実現に貢献する次世代固体吸着剤の研究」を開設しました。
地球環境に悪影響を及ぼす環境負荷物質の排出を削減するために、ゼオライト※1を主原料とする、エンジンや焼却炉・溶融炉からの排ガスが含むCO2(二酸化炭素)を分離・回収する固体吸着剤や、NOx(窒素酸化物)※2・N2O(亜酸化窒素)※3を浄化する高機能な触媒の研究に取り組み、実用化をめざしてまいります。
※1ゼオライト:ナノメートル(10-9メートル)サイズの微細で規則的な孔(あな)を有し、大きさの異なる分子をふるい分ける作用や、分子やイオンの吸着作用及びそれらを別物質に変換する触媒作用を持つ材料。工業や農業、環境産業などのさまざまな分野で用いられている。
※2 NOx(窒素酸化物):窒素の酸化物の総称。燃料に含まれる窒素化合物や空気中の窒素が、高温燃焼時に酸化されることで発生する。
※3 N2O(亜酸化窒素):窒素酸化物の一種。エンジンの排ガスの浄化用後処理装置からも生成される。温室効果が高い物質のため、削減が課題になっている。
1.背景とねらい
- CO2やNOx・N2Oなどの環境負荷物質は、温室効果による気温上昇や酸性雨及び光化学スモッグを引き起こすことから、気候変動や海面上昇、生態系への影響などが懸念されています。環境負荷物質の削減は、地球環境保全や持続可能な社会の実現をめざす上で重要な課題です。
- クボタのエンジンは、農業機械や建設機械、産業機械などさまざまな機械に搭載され、高い耐久性と高出力密度、環境に配慮した省エネルギー性能を生かしてグローバルに利用されていますが、エンジンからの排ガスに含まれる環境負荷物質については、さらなる排出削減や、回収して資源化することが求められています。
また、クボタ水環境事業の主力製品の一つとして廃棄物の処理に用いられている焼却炉や溶融炉についても、CO2の排出を伴うことから、同様の課題があります。
- 本講座の代表教員を務める脇原徹教授の研究室では、環境やエネルギー分野での活用が期待されるゼオライトをはじめとしたナノ空間材料について、その合成や応用、合理的な製造プロセスの開発に向けて研究が進められています。
- 本講座では、ゼオライトを主としたCO2に関連する固体吸着剤や触媒材料に関する研究に取り組みます。また、トラクタや建設機械などに搭載される産業用エンジンは高出力で連続運転させるなど過酷な環境で使用される点を踏まえ、NOxやN2Oのさらなる排出低減に向けた、より高性能・高耐久な触媒材料及びシステムの研究を進めます。
- 本講座を通じて、地球環境に悪影響を及ぼす環境負荷物質の削減や回収・資源化を推し進め、炭素・窒素循環型社会の実現に貢献することをめざします。また、高度人材の継続的な育成と輩出に努めてまいります。
2.社会連携講座の概要
講座名 |
炭素・窒素循環型社会の実現に貢献する次世代固体吸着剤の研究 (Research on next-generation solid adsorbents that will contribute to the realization of a carbon and nitrogen recycling society) |
設置期間 | 2024年4月1日~2028年3月31日(4年) |
代表教員 |
脇原 徹(東京大学大学院工学系研究科 附属総合研究機構 教授) |
研究内容 |
エンジンや焼却炉・溶融炉の排ガスに含まれる環境負荷物質の、さらなる排出削減や回収、資源化をめざした固体吸着剤や触媒材料の研究 |
3.産学協創事業の概要
目的 | 「100年後の地球にできること」をテーマとして、「食料・水・環境」分野において両者の知見・技術・ネットワークを活用し、地域(ローカル)レベルから地球規模(グローバル)を意味する「グローカル」において、自然共生(ビオ)と循環型社会(ループ)を両立する「ビオループ」の創生をめざして、共同研究と人材育成および人材交流を推進する |
協定期間 | 2021年12月1日から10年間 |
○関連情報
クボタとの産学協創協定締結
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1702_00009.html
東京大学とクボタが社会連携講座「次世代資源循環ソリューションのためのデジタルツイン基盤技術講座」を開設
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-09-10-002
プレスリリース本文:PDFファイル
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