プレスリリース

AIロボットを活用した 燃料電池プロセス探索システムの基盤技術開発を開始 ―NEDO「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた 共通課題解決型産学官連携研究開発事業」―

 

発表内容

東京大学大学院工学系研究科の長藤圭介准教授は、金沢大学、九州大学、堀場製作所と共同で、「燃料電池のプロセスインフォマティクス共通基盤の構築」を開始しました。本事業は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」に採択され、実施するものです。本事業では、日本の燃料電池産業の競争力をさらに高めるべく、生産プロセス開発のDX、すなわちAIロボットを活用したプロセス探索システムの共通基盤を構築します。

 

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図1.“ロープス”(ロボット駆動プロセス探索システム)

 

〈背景と問題〉
燃料電池は、水素を有効活用したカーボンニュートラル社会に欠かせない装置です。日本は、CO2を出さないモビリティや家庭用発電機として、燃料電池の開発を先駆しています。図2に示すように、燃料電池の開発は「お好み焼きづくり」に例えられる複雑現象であるため、勘・コツ・経験に基づく「匠の技」で構築してきた生産プロセスであることがその理由の一つです。しかし、世界的な競争激化の中で、開発スピードを飛躍的に向上する必要があります。

 

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図2.燃料電池プロセスとお好み焼きプロセスのアナロジ

 

〈本事業の開発内容〉

本事業では、燃料電池の生産プロセスの開発スピードを飛躍的に向上するために、AIロボットを活用した自動実験/自律探索システムに基づく「プロセスインフォマティクス」の共通基盤を構築します。“The ropes”(英語で「コツ」という意味)になぞらえて、ROPESRobotic Objective Process Exploration System:ロボットとヒトが協調するプロセス探索システム)と称し、日本の燃料電池のものづくり開発者のための強力なツールを開発します。本事業は20253月までの19カ月の短期間ですが、燃料電池の発電の心臓部である触媒層という粉体層の塗布乾燥に題材を絞り、KPIKey Performance Indicator:主要業績評価指標)を、「作業時間10分の1」「試行回数10分の1」と設定し、FC-ROPESの開発を進めます。

 

〈本事業の効果〉

FC-ROPESは、「オールスターFC(注1)」と呼ばれる燃料電池システムOEM4社およびFC-Cubic(注2)をはじめとする、燃料電池材料・部品メーカ、装置メーカ、アカデミアが広く用い、各社・各機関での開発スピードの向上に役立てます。さらに、FC-Cubicでの活用によって、オープンイノベーションを促進し、政府が定めた第6次エネルギー基本計画や水素・燃料電池戦略ロードマップの実現に貢献します。

 

〈関連のサイト〉

NEDO事業実施体制の決定(2023/6/9)

https://www.nedo.go.jp/koubo/SE3_100001_00039.html

 

プレスリリース「ロボット実験×AIによる燃料電池のものづくり研究開発法の革新~粉体成膜プロセスインフォマティクスにより3万候補から40回で新しい最適解の発見に成功~」(2022/2/8

https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/foe/press/setnws_202202081352523736460557.html

 

デモ動画「AIロボット実験」(2022/7/7

https://youtu.be/z1pIU1X_jW8

 

コラム「高性能電池は“お好み焼き”!?「匠の技」が決め手になる」(2021/12/13)

https://scienceportal.jst.go.jp/explore/opinion/20211213_e01/

 

発表者                                          

東京大学大学院工学系研究科

長藤 圭介(准教授)

 

謝辞

本研究の基盤になる成果は、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業「共通基盤」領域、探索研究「粉体成膜プロセス研究のハイスループット化のためのデータ駆動型プロセス・インフォマティクス(課題番号:JPMJMI19G3)」、および、本格研究「マテリアル探索空間拡張プラットフォームの構築(課題番号:JPMJMI21G2https://meep.nagato-u-tokyo.jp/)」の支援により実施されました。

 

用語解説

注1)オールスター FC(エフシー)(AFCとも略される):経済産業省が定めた燃料電池(FCFuel Cell)システムOEM4社およびFC-Cubic
注2)FC-Cubic(エフシー・キュービック):大学等の研究機関や燃料電池企業が一緒になって問題を見つけ、解決方法を探る技術研究組合。

 

 

 

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