プレスリリース

磁石の中を高速に伝播する”磁気の壁”の運動を電圧で制御することに成功 ~磁気メモリデバイスの高性能化に道~ :物理工学専攻 小山 知弘助教、千葉 大地准教授ら

 

高度情報化社会を迎え扱われる情報量が爆発的に増加している現在、コンピュータ中で情報の書き込み・読み出しを行うメモリのさらなる高性能化が要求されています。2008年に、ワイヤ状に加工した磁石の中でN極およびS極(磁極)の向きをデジタル情報として担わせ、それらをシフトさせることで情報の読み出しを行う「レーストラックメモリ」がIBMから提案されました。このメモリは、磁石が本質的に有する磁極の向きを利用するので原理的に劣化が起こらず、さらに機械的動作が必要ないため高い耐久性を有するという、半導体を凌ぐ究極のメモリとして期待されています。情報のシフト速度の高速化は情報処理能力の向上に直結するため、世界中で盛んに研究されている状況です。

東京大学大学院工学系研究科の小山知弘助教、千葉大地准教授、電気通信大学の仲谷栄伸教授、日本原子力研究開発機構の家田淳一研究主幹らの研究チームは、絶縁体を介して磁石に電圧を加える「電界効果」という手法を用いて、秒速100メートルを超える高速な磁気の壁(磁壁: N極とS極の境界)の運動を制御することに世界で初めて成功しました。これまでは秒速1ミリメートル以下の遅い磁壁移動について主に研究されてきましたが、本研究成果はメモリとして実用可能な速度領域において、電圧を用いた情報シフトの高速化が可能であることを実証した世界で初めての成果であり、レーストラックメモリのさらなる高速化・省エネ化を実現する技術に繋がるものとして期待されます。

本成果は、2018年12月21日(米国東部時間)に、米国オンライン科学雑誌「Science Advances」に掲載されました。なお、本研究は科研費若手研究(A)他の支援を受けて実施されました。

プレスリリース本文:PDFファイル

Science Advances : http://advances.sciencemag.org/content/4/12/eaav0265

電気通信大学 : https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2018/20181225_1526.html

日本原子力研究開発機構(JAEA) : https://www.jaea.go.jp/02/press2018/p18122201/

日本経済新聞 : https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP498796_R21C18A2000000/?au=3

電子デバイス産業新聞 1月17日 朝刊 3面に掲載