プレスリリース

人間の歯や骨の成分のヒドロキシアパタイトの液晶化による配列制御に世界で初めて成功 ~次世代バイオマテリアルとして人工骨、人工歯根などへの応用が期待~

 

我々が日々使う歯は、固いものでも噛み砕くことができる優れた機械的特性を有し、何十年にもわたって丈夫なままである。これは、無機物であるヒドロキシアパタイトのロッド状ナノクリスタルが微量のたんぱく質と融合して整然と配列し、安定な構造をとっているためである。同様に、骨もヒドロキシアパタイトのナノクリスタルがたんぱく質等と複合化し、配列することで強靭さを発現している。もし、生体が作り出すこのような精巧な配列ナノ構造を人工的に形成する技術を開発できれば、人工骨やインプラントなどへの応用など、バイオ、医療分野などに貢献する次世代の生体調和型材料の構築が期待できる。

今回、東京大学大学院工学系研究科の中山真成大学院生、熊本明仁主任研究員、幾原雄一教授、加藤隆史教授らの研究グループは、首都大学東京の山登正文准教授と共同で、人間の歯や骨の無機成分の構造に類似したヒドロキシアパタイトのロッド状ナノクリスタルを人工的に合成することに成功した。生体が歯や骨を形成する機構から知見を得て、天然のたんぱく質を模した有機高分子を利用することで、温和な条件で合成できる。このロッド状ナノクリスタルは、一般的な液晶材料と同様の自主配列特性を有することが特徴で、さらに外部から機械的な応力や磁場などの物理的な刺激を与えることでその配列方向を制御することができる。実際に、この材料を基板上でこすると歯の構造を模した配列ナノ構造膜を形成することができる。また、磁場を利用した非接触な配列操作も可能である。

本研究において開発されたヒドロキシアパタイトのロッド状ナノクリスタルは、磁場や機械的応力により配列を制御し、歯や骨を模した構造を構築できる人工材料である。今後は、生体調和性と液晶の自主配列特性を兼ね備える新素材として、人工骨やインプラントへの応用など、バイオ、医療の分野で重要な役割を果たすことが期待される。

本研究成果は、2018年2月8日の「Nature Communications」(オンライン速報版)で公開されました。

 

 

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Nature Communications : https://www.nature.com/articles/s41467-018-02932-7