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若手研究者紹介:鳴海 拓志 准教授

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知能機械情報学専攻・機械情報工学科(兼担)葛岡・雨宮・鳴海研究室 鳴海 拓志 准教授

 

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【経歴】

2006年3月 東京大学工学部システム創成学科卒業
2008
年3月 東京大学大学院学際情報学府修了

2011年3月 東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了、博士(工学)

2011年3月 - 2016年3月 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 助教

2016年3月−2019年7月 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻 講師

2017年10月 - 2020年3月 JSTさきがけ研究者(兼任)
2019年7月 - 現在 東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻・工学部
機械情報工学科(兼担) 准教授

【研究について】

バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実感(AR)の技術と、認知科学・心理学の知見を融合することで、人間の感覚情報処理の仕組みの解明と、その特性に基づいて知覚や認知に効果的に影響を与えることが可能なインタフェースを開発する研究に取り組んでいます。また、そのようなインタフェースを使うことで、人間の能力やコミュニケーションを拡張する人間拡張技術の研究や、それらを社会で活かすためのデザインやコンテンツの研究まで、多角的に研究を進めています。

代表的な研究に、クロスモーダル知覚(ある感覚の知覚が同時に入力された異なる感覚に対する刺激の影響で変化して知覚される錯覚現象)を利用して、多様な五感体験を提供するクロスモーダルインタフェースの研究があります。例えば、視覚・嗅覚・味覚間の相互作用を利用した味覚ディスプレイ「メタクッキー」、ARによって食品の見た目のサイズを変化させることで摂食量を変える「拡張満腹感」、視覚・触覚間の相互作用によってさまざまな形状に触れた感覚を提示する形状提示システム「Perception-based Shape Display」、視触覚相互作用を利用した空間知覚操作によって直径6mの壁の周囲を歩いていても直進しているかのように感じさせることが可能な「Unlimited Corridor」等を開発してきました。特定の感覚にこだわらず、人の持つ多様な感覚に働きかける感覚拡張システムの開発と、クロスモーダル知覚の解明の両側面に取り組んでいます。

また、身体と認知の相互作用を活用して、VRで新たな身体(アバター)を与えることで自らの心や能力を自在にデザイン可能にするゴーストエンジニアリングの研究に取り組んでいます。例えば、筋肉質なアバターを使用させることで手に持った物体の重量知覚や発揮筋力に影響を与える研究や、ドラゴンのアバターを使うことで3次元空間を正確に飛行して移動できる能力を獲得させる研究、複数人で1体のアバターを操作させることで人から人への身体運動スキルのコピーを可能にするための研究などに取り組んでいます。同時に、そのような新たな身体を日常的に使用することが、人の心や活動にどのような影響をもたらすのか、どのような新しい文化の形成に繋がるのか等を、実験室実験だけでなくソーシャルVRでの調査等を通じて明らかにする研究にも取り組んでいます。

 

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【今後の抱負】

VRの研究は、人間が世界を認識する仕組みを知ることと直結しています。それだけでなく、人間に対する理解に基づいてVRやメタバースを設計することは、人間の新しい可能性を追求し、社会のより良い形を作り上げていくことにも繋がります。学際的な視点や方法論をとりいれながら、工学的なアプローチを活かして、より良い技術や社会の実現に貢献していきたいと考えています。

 

【URL】

http://www.cyber.t.u-tokyo.ac.jp/