イベント

ワークショップ:マテリアルズ・インフォマティクス 1月29日

 

社会連携・産学協創推進室
ワークショップ:マテリアルズ・インフォマティクス
(東京大学大学院工学系研究科 社会連携・産学協創推進室)

 

2018年1月29日(月)15:00~18:30、東京大学本郷キャンパス工学部2号館212講義室において「ワークショップ:マテリアルズ・インフォマティクス」を開催致しました。
主催者を代表した大久保達也研究科長の挨拶では、2017年3月に発足した社会連携・産学協創推進室は、企業との産学連携等の仕組みを利用して、大学の研究成果を社会に還元していくことを目的としていること、昨年11月に行われたAIワークショップに引き続き、企業からの関心が高いマテリアルズ・インフォマティクス(MI)のワークショップを開催し、東京大学内の研究を紹介したいことが述べられました。
このあと、本ワークショップの実施に際して多大なご協力をいただいた工学系研究科・マテリアル工学専攻・渡邉聡教授より、講演時間は短いものの、東京大学で行われている研究の全体像を理解して頂けるように、との期待が述べられました。
各講演は以下の通りに行われました。
まず、物質・材料研究機構の寺倉清之名誉フェロー・エグゼクティブアドバイザーの基調講演「マテリアルズ・インフォマティクスの狙い」では、欧米や中国も力を入れているMI分野で、日本にもさらに頑張ってほしい、特にここに来られた方々には是非とも頑張ってほしいとエールが送られ、そもそもマテリアルズ・インフォマティクスとは何かについて、全般にわたるご講演をいただきました。
塩見淳一郎教授からは、「マテリアルズ・インフォマティクスによる熱機能材料開発」と題して、これまで行われていた、既存の材料の中から熱機能が優れたものをさがすアプローチ例「単結晶材料の探索」に対し、新規構造を創生するアプローチ例「ナノ構造の最適設計」について、熱伝導が最低になるSi/Geの超格子構造の設計ならびにその基盤を例示してご説明いただきました。
船津公人教授からは「逆解析こそがマテリアルズ・インフォマティクスに求められている」と題して、高輝度フィルムから自動車用各種プラスティック部品の組成設計等への応用事例を挙げ、要求される機能を持つ新規材料・分子・デバイスの作成から評価に至る広い守備範囲を持つデータ駆動型化学の応用と展開ならびに人材育成の重要性を指摘されました。
桂ゆかり助教には「A plot mining web system for literature data collection」と題して、目的に合ったデータを短時間で論文から抽出する方法(web system)を説明いただき、企業における研究目的に活用していただく場合の条件についてもご説明いただきました。
岡田真人教授には「スパースモデリングとマテリアルズ・インフォマティクス」と題して、スパースモデリング(データが少ない(疎)状態を仮定)とクロスバリデーション(交差検定)について説明いただき、データ駆動科学は有益で、人材育成にも効果ありとの興味深いお話を紹介していただきました。
井上純哉准教授には「構造材料におけるマテリアルズ・インフォマティクス(材料科学+機械学習)」と題して、単結晶成長モデル(再結晶の予測)と連続冷却変態曲線図を機械学習で解析する手法を紹介いただき、不確定性を明示しつつ行う逆解析手法を説明していただきました。
津田宏治教授には「機械学習を用いた機能分子の自動設計」と題して、予測から材料生成へと変遷しつつある事例を紹介し、「目標を達成するための機械学習(Deep Learningによる予測)」についてご説明いただきました。
溝口照康准教授には「マテリアルズ・インフォマティクス(結晶界面の構造決定とスペクトルの解釈)」と題して、「膨大な候補構造の中から結晶界面の構造を決定する方法」と「データ数が膨大になっているスペクトルの解釈」を各種事例でご説明いただき、これまで行われてきた物質・分子探索ではなく機機械学習の有機的な融合によりデータ駆動型の解釈に期待が集まっていることをご紹介していただきました。
山地洋平特任准教授には「量子多体問題と機械学習」と題して、従来の物理的直観による情報圧縮に機械学習を加えることで情報圧縮の精度が向上したことを紹介いただき、「機械学習+量子多体物理」は教育プログラムへと展開し、「量子多体物理→機械学習」は学習機械を作りたいという動機に駆られたことをご紹介いただきました。
渡邉聡教授には「アモルファス材料中のイオン移動挙動解析のためのニューラルネットワーク原子間ポテンシャルの開発」と題して、ニューラルネットワーク中の原子間力、原子・イオンの移動や拡散等に機械学習を適用した事例を説明いただき、材料の構造・組成と特性の関係を扱ったマテリアルズ・インフォマティクスをご紹介いただきました。
最後に社会連携・産学協創推進室の高橋浩之室長から、当室の活動状況と、来る3月30日に「エネルギーのワークショップおよび研究室公開」を行うなど今後も色々なイベントを実施していく予定であることが述べられました。
懇談会ではさらに熱気あふれる活発な意見交換が行われ、成功裡にマテリアルズ・インフォマティクスのワークショップを終了することができました。
来場者は81名、うち企業から58名と多数の方々に参加していただきましたこと、当日いただいたアンケート集計結果も良好でほぼ満足していただけたことをご報告させていただきます。
皆様方からのご意見を反映させ、工学系研究科 社会連携・産学協創推進室では、今後も産業界からの要望に応えるべくシンポジウム、ワークショップなどを企画していく所存です。