ホスホロチオエート修飾を含まない非環状人工核酸を用いた新規核酸医薬の開発 ~全PO結合のL-aTNA型Anti-miR-21核酸が、PEG-L-オルニチンブロックコポリマーとの複合体化でin vivo活性を発揮~

2026/06/15

神戸薬科大学、名古屋大学、ナノ医療イノベーションセンター、東京大学を中心とする共同研究グループは、副作用の原因となるホスホロチオエート(PS)修飾を必要としない次世代型非環状人工核酸(SNA、L-aTNA)*1に擬似相補塩基(DおよびsU)を導入し、miR-21を標的とするアンチセンス核酸*2医薬(AMO21)の自己相互作用を抑制・活性増強することに成功しました。本成果では、PS修飾を一切行わないL-aTNA-AMO21が、新規薬物送達システム(uPIC)*3と組み合わせることでマウス腫瘍モデルにおいて抗腫瘍効果を示し、肝・腎毒性も認められないことを実証しました。本技術はPS修飾に依存しない、新たな核酸医薬品技術として様々な応用が期待されます。本研究成果は、2026年6月2日付で国際科学雑誌「Journal of Medicinal Chemistry」にオンライン版が公開されました。さらに、研究成果を発表する掲載号で、本研究のイメージ図がSupplementary Coverに選ばれました。 

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[研究の背景]

アンチセンス核酸(ASO)は、病気に関連するRNAを標的とする次世代の治療薬として注目されています。しかし、既存のASOの多くは毒性の原因となるホスホロチオエート(PS)修飾に依存しています。このPS修飾にはヌクレアーゼ耐性や血中滞留性をもたらす重要なメリットがある一方で、肝・腎・神経毒性、標的RNAに対する親和性の低下、製造コストなどの課題があります。Serinol nucleic acid(SNA)とacyclic L-threoninol nucleic acid(L-aTNA)は、ヌクレアーゼに認識されないため、PS修飾なしで高い分解耐性を示すユニークな非環状人工核酸です。しかし、自己相補的な配列を持つ標的RNA(miR-21など)に対しては、自己相互作用により活性が著しく低下するという問題がありました。また、PS修飾に頼らないASOを実用化するためには、低下してしまう血中滞留性を補い、標的組織へ送達するために、PS修飾とは異なる手法で生体内デリバリーを達成する技術が不可欠でした。

 

[研究成果の概要]

本研究では、SNA・L-aTNAからなるmiR-21に対するアンチセンス核酸(anti-miR-21 oligonucleotide, AMO21)の自己相補的領域に擬似相補塩基である2,6-ジアミノプリン(D)と2-チオウラシル(sU)を導入することで、自己会合を効果的に抑制しながらmiR-21との結合親和性を高めることに成功しました。この設計に基づくAMO21は、複数のがん細胞株において非常に高いmiR-21阻害活性を示しました。さらに、PS修飾フリーのL-aTNA型AMO21のデリバリー課題を解決するために、優れたドラッグデリバリーシステム(DDS)技術との融合を図りました。二分岐ポリエチレングリコール-ポリ(L-オルニチン)のブロックコポリマー(bPEG-POrn)と複合体(uPIC)を形成させ、マウス黒色腫モデルに静脈投与したところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が認められました。また、血液検査において肝・腎毒性マーカーの上昇は見られず、高い安全性も確認されました。 

 

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以上のように、擬似相補塩基D・sUの導入が非環状人工核酸の自己相互作用を解消し、PSフリーでの高活性なmiR-21阻害核酸医薬を実現できることを見出しました。本成果は、PS修飾に依存しない、安全かつ効果的な次世代型核酸医薬プラットフォームの実現へ向けて大きな一歩となるものです。

 

本研究の一部は、公益財団法人長瀬科学技術振興財団研究助成金、公益財団法人野口研究所「野口遵研究助成金」、公益財団法人内藤記念科学振興財団研究助成金による支援、JSPS科研費(JP21H05025、JP23H04067、JP25H01414、JP25K24871)の助成、AMED(先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業「核酸医薬への応用を目指した非環状型人工核酸の開発」、創薬支援推進事業・創薬総合支援事業「非環状型人工核酸を用いた新規ADPKD治療薬の探索」、次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「革新的リガンド化マルチターゲットsiRNAとナノマシン複合体を用いた効果的な腫瘍ターゲッティングによる世界初がん根治技術開発」、「吸入ハイブリッドEVを用いた非環状型人工核酸送達による肺癌治療法の確立」)の支援、自然科学研究機構生命創成探究センター共同利用研究(課題番号:25EXC604-5)の助成により行われました。

 

 

[用語説明]

*1SNA・L-aTNA(非環状人工核酸):アミノ酸骨格の人工核酸。天然核酸に比べて非常に高いヌクレアーゼ耐性を有する。骨格がセリン由来のものがSNA、L-トレオニン由来のものがL-aTNAである。

*2アンチセンス核酸(ASO):標的RNAに相補的な配列を持つ短鎖核酸。RNAに直接結合して遺伝子発現を抑制する核酸医薬の一種。miR-21を標的とする場合はAMO21(アンチmiR-21オリゴヌクレオチド)とも呼ばれる。

*3uPIC(ユニット型ポリイオンコンプレックス):二分岐PEGとポリ(L-オルニチン)からなるY字型ブロックコポリマーと核酸が複合体を形成したナノ粒子型核酸送達システム。

 

 

[掲載論文]

雑誌名: Journal of Medicinal Chemistry

論文名: Phosphorothioate-Free and Self-Interaction-Reduced Acyclic Nucleic Acids for Effective Antisense Oligonucleotide

著者:Yukiko Kamiya*, Fuminori Sato, Kiyoka Sakashita, Jumpei Ariyoshi, Hiroyuki Oyama, Xueying Liu, Naoki Yamada, Kanjiro Miyata, Sjaikhurrizal El Muttaqien, Yuhei Noda, Noritoshi Kato, Shoichi Maruyama, Hiroaki Kinoh, Kazunori Kataoka, Hiroyuki Asanuma*

URLhttps://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.5c02868

 


【研究機関について】

神戸薬科大学

神戸薬科大学は、2022年4月に創立90周年を迎え、20,000人近くの人材を薬学・医療における各領域に輩出し、「大学の理念」のもと、人々の健康と福祉に貢献してきた伝統ある大学です。「薬学の未来を牽引するモチベーションやポテンシャルをもった人材の育成」をビジョンに掲げ、「主体性・行動力・課題発見能力・答えのない課題に取り組む力」の取得・向上を目指したカリキュラムを導入し、「大学の理念」でもある「教育と研究の両立を基盤とした大学教育」を推進することにより、薬学・医療の世界で変革を起こすことができるリーダーの育成を目指しています。

https://www.kobepharma-u.ac.jp/

 

名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻

生命現象を分子レベルで解析・理解すると共に、その機能を人工的に再構築して幅広く利用することをめざしています。バイオテクノロジーの開発や生物機能を抽出・デザインする技術によって、「いのち」の精緻な働きを工学的に利用していく道を拓きます。基礎と応用を有機的につなぐ研究者を育成します。

https://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/be_home/

 

ナノ医療イノベーションセンター

ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は、キングスカイフロントにおけるライフサイエンス分野の拠点形成の核となる先導的な施設として、川崎市の依頼により、公益財団法人川崎市産業振興財団が、事業者兼提案者として国の施策を活用し、平成27年4月より運営を開始しました。有機合成・微細加工から前臨床試験までの研究開発を一気通貫で行うことが可能な最先端の設備と 実験機器を備え、産学官・医工連携によるオープンイノベーションを推進することを目的に設計された、世界でも類を見ない非常にユニークな研究施設です。

https://iconm.kawasaki-net.ne.jp/

 

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻

マテリアル工学専攻は、全ての人間活動の根底を支えるマテリアル工学の未踏領域を先導し、環境、エネルギー、情報・通信、医療などの現代社会が抱える課題・難問にマテリアル分野から突破口を切り拓き、人類社会の持続的発展と幸福に貢献することを究極的な目的としています。本専攻では、広範なマテリアルの基礎知識と高度な専門知識を習得し、かつ世界トップレベルの研究・開発を推進することによって、独創的かつ国際性豊かな次世代リーダーの育成を目指しています。

https://www.material.t.u-tokyo.ac.jp

 

 

 

プレスリリース本文:PDFファイル

Journal of Medicinal Chemistryhttps://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.5c02868