JIS規格外フライアッシュを用いたCSGを開発し、成瀬ダム堤体に導入 ~産業廃棄物を有効利用し、ゼロエミッションおよび循環型社会の実現に貢献~

2025/04/11

国土交通省東北地方整備局(局長:西村拓)、東京大学(総長:藤井輝夫)、ダム技術センター(理事長:泊宏)、鹿島(社長:天野裕正)の4者は、東北電力の協力のもと、JIS規格外のフライアッシュを用いたCSG1(以下、フライアッシュCSG)を共同で開発し、成瀬ダム堤体打設工事(秋田県東成瀬村)において、必要な強度を確保した上で、計7,250m3をダム堤体の一部に導入しました。これにより、産業廃棄物として処理されるJIS規格外フライアッシュ435tが有効利用され、事業発注者とフライアッシュ排出事業者のコストを縮減したほか、ゼロエミッションならびに環境負荷の少ない持続可能な循環型社会の実現に貢献しました。
なお、フライアッシュCSGの大規模なダム堤体への導入は国内で初めてです。

※1 Cemented Sand and Gravel: 現地発生材(石や砂れき)とセメント、水を混合してつくる材料

fig01

成瀬ダム堤体の一部に導入したフライアッシュCSG

【導入の背景】
石炭火力発電所で発生するフライアッシュは、再生資源として有効利用が進まず、その多くは産業廃棄物として処理されていますが、成瀬ダムの建設が進む秋田県では、産業廃棄物の縮減を目的として、県内の石炭火力発電所で発生するフライアッシュの有効利用が推進されています。また、国土交通省においても、「環境物品等の調達の推進を図るための方針」として、フライアッシュの活用が推進されています。
ダムコンクリートに用いられるフライアッシュはJISⅡ種が一般的ですが、JIS規格外フライアッシュを有効利用できれば、フライアッシュの使用範囲が広がるほか、産業廃棄物の大幅な縮減にもつながります。
そこで4者は、台形CSGダムの建設工事で大量に必要となるCSGの原料にJIS規格外フライアッシュを活用したフライアッシュCSGを開発し、本工事に導入しました。

【フライアッシュCSGの概要】
フライアッシュCSGは、CSGの原料となる普通セメントの一部をJIS規格外フライアッシュに置き換えたもので、従来のCSG(以下、従来CSG)と同等の強度特性を確保できます。
フライアッシュCSGは、従来CSGと比較すると、経時変化が小さくなるため、締め固められたCSGの密実性が向上し、同等以上の品質が確保できます。また、材料分離抵抗性の向上、水和熱の低減のほか、アルカリ骨材反応の抑制効果もあります。さらには、産業廃棄物の有効利用により、公共工事を行う事業発注者だけでなく、フライアッシュ排出事業者のコスト縮減にも寄与します。

fig0002
CSGの経
時変化

fig003
締固め度の比較

【大規模なダム堤体への導入成果】

成瀬ダムは、CSGを堤体の主な材料とする台形型のダムで、完成後は台形CSGダムとして国内最大規模となります。今回、産業廃棄物として処理されるJIS規格外フライアッシュ435tを有効利用したフライアッシュCSG7,250m3をダム堤体の一部に導入しました。
フライアッシュCSGと従来CSGを用いた場合を比較した結果、フライアッシュCSGの強度特性は従来CSGと同等、品質においては同等以上であることを確認しました。
また、フライアッシュCSGは、CSGの原料となる普通セメントの一部をJIS規格外フライアッシュに置き換えているため、従来CSGを使用した場合と比較してCO2排出量を28%削減しました。

fig004製造時のCO2排出量の比較

 【今後の展開】
4者は今後、フライアッシュCSGだけではなく、JIS規格外フライアッシュを有効利用したコンクリートを開発し、ダム等のさまざまな構造物へ積極的に展開することで、ゼロエミッションおよび環境負荷の少ない持続可能な循環型社会の実現に貢献してまいります。

【工事概要】
工事名 :成瀬ダム堤体打設工事(第2期)
工事場所:秋田県雄勝郡東成瀬村椿川地内
発注者 :国土交通省東北地方整備局
施工者 :鹿島・前田・竹中土木特定建設工事共同企業体
工事諸元:台形CSGダム、堤高114.5m、堤頂長755m、堤体積485m3、貯水量7,850m3CSG数量430m3
工期  :20236月~202612

(参考)出典:フライアッシュ混合プレキャストコンクリート製品について(秋田県)https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/6587

出典:環境物品等の調達の推進を図るための方針(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/common/001338540.pdf

 

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