プレスリリース

グローバル企業と連携し、世界で通用する実践力を鍛える教育プログラムを開始


◆産学協創教育推進基金を創設して、専門性の高い工学知に加え、社会のニーズを捉える力を鍛える実践的な工学教育プログラムを開始します。
◆グローバル企業と連携し、企業トップのレクチャーや海外拠点へのインターンシップを通じて、世界で通用する実践力を鍛えます。
◆社会と世界の視点を持って現代社会が抱える地球規模の課題解決に挑戦する高度工学人材の輩出を目指します。

発表概要
東京大学大学院工学系研究科(所在地:東京都文京区、研究科長:染谷 隆夫)は、社会と世界の視点を持って地球規模の困難な課題に立ち向かう高度な博士人材を工学分野で育成することを目的として、産業界と連携した新しい教育プログラムを開始します。具体的には、「工学系WINGS産学協創教育推進基金」を創設し、グローバル企業と連携し、工学系研究科で学ぶトップ15%の優秀な大学院生を対象として、世界で通用する実践力を鍛える様々な教育プログラムを提供します。

発表内容
現代社会は、地球規模の様々な課題に直面しています。例えば、カーボンニュートラル社会の実現、気候変動で大規模化する自然災害への対応など社会課題は困難さと複雑さを増しています。これらの解決に向けて、データやテクノロジーの活用は不可欠であり、工学知への期待が未だかつてないほど高まっています。一方、研究科内では、専門性の高い工学知を活かして、ディープテック系スタートアップの起業を志す学生が増えています。そのため、高い専門性に加えて、グローバルな視点や俯瞰力を有し、社会のニーズを捉えて即応できる高度な工学人材の育成が急務です。
これらの要請に応えるため、東京大学大学院工学系研究科では、「工学系WINGS産学協創教育推進基金」を創設し、研究科で学ぶトップ15%の優秀な大学院生を対象とした様々な教育プログラムを提供します。具体的には、3つの主要なねらいを掲げて、グローバル企業との緊密な連携による教育プログラムを実施します。

(1) 社会と世界に目を向ける:グローバル企業の経営トップクラスによるレクチャーを通じて、企業トップの思考や視座の高さを学び、社会が博士人材に求めていることを知り、社会や世界に目を向けることの重要性を認識する。

(2) 世界のスピードを体感する:グローバル企業への海外インターンシップや国内外サイトへの訪問を実施し、最前線で社会実装を担っている技術者との交流を通じて、日々世界と競争している企業の現場でしか知りえない世界のスピードを体感する。

(3) 世界で通用する実践力を養う:実務経験が豊富な企業研究者による講義、PBL、産学連携による国際ワークショップを通じて、異分野の協働による課題解決能力やリーダーシップ力を鍛える。

これまで、東京大学は、優秀層を対象とした学位プログラムとして、20の国際卓越大学院教育プログラム(WINGS:用語解説1)を開設してきました。工学系研究科は、その中の4 つのWINGSの運営で中心的な役割を果たしてきました(用語解説2)。今回、WINGSにおける教育プログラムの拡充を目的とした民間企業からの基金が東京大学に初めて設立されました。この基金を活かして、文字通り産学が力を合わせて教育プログラムの内容を拡充することによって、世界に通用する高度な博士人材を育成するモデルを提示して参ります。

基金の概要
基金名:工学系WINGS産学協創教育推進基金
設置日:2022年4月1日
設置責任者:工学系研究科長・工学部長
設置先:東京大学大学院工学系研究科

寄附企業からのコメント
・株式会社経営共創基盤(IGPI) 代表取締役CEO 村岡 隆史
私たちは、「矛盾や困難を孕む経営現場での死闘・格闘を通じて、世界に通用する真の経営人材を創出すること」を設立理念とし、ローカルからグローバル、大企業からスタートアップ、既存産業から先端技術、コンサルティングから事業経営まで、活動を拡大するプロフェッショナル・ファームです。世界の経営現場では、地球規模の様々な課題を受けて、日々新たな課題解決方法を求められています。そこでは、事業戦略や財務といった視座にデータやテクノロジーを高度に融合させることが不可欠です。様々な専門分野を超えた高度な融合知が問われているのです。東京大学工学系WINGSの取組み趣旨は、私たちの理念や経営現場での課題とまさに意を一にするものです。卓越した工学系博士バックグラウンドを持つ人材が、社会や経済分野でのリアルな課題の認識を深めてもらうことにより、それぞれの専門分野の則を超えて、実践的で高度な「知のプロフェッショナル」なることを応援させて頂きます。

・ソニーグループ株式会社 シニアアドバイザー 勝本 徹
「国際卓越大学院教育プログラム(WINGS)」に参画する機会に恵まれたことを大変嬉しく思います。世界がさまざまな課題に直面するなか、企業の活動においても、高い専門性と自律性、多様な価値観を有するチームをまとめるリーダーシップが求められています。多様な事業をグローバルで展開する当社は、クリエイターやユーザーの動機を深く理解することで、「人に近づく」という経営の方向性に沿った研究開発を推進しています。これらの活動から得た知見や課題について、世界トップレベルの研究体制を持つ東京大学の学生と共有し、議論することで、社会や地球の発展に挑戦する知のプロフェッショナルの育成に貢献できるものと期待しています。

・武田薬品工業株式会社 代表取締役 日本管掌 岩﨑 真人
世界80の国と地域で事業を展開するタケダの使命は、革新的な医薬品を創出し、世界中の必要とされる患者さんに可能な限り早くお届けすることです。そのためには、研究・開発から製造、供給にいたる一連のバリューチェーンのどのステージにおいても、医工連携がますます必要となっています。創薬のモダリティ(治療手段)の多様化によって、多様なバリューチェーンの構築が必要になるため、医工連携を通じて、イノベーションの創出をリードする人財の育成が欠かせません。今回、世界に誇る高い研究力を有する東京大学と、グローバル企業であるタケダが、それぞれの専門性を活かしてグローバルで活躍する次世代リーダーを育成する場として、WINGSへの参画を決めました。今後、グローバル規模での人財交流も視野にいれながら、オンサイトでのプロジェクト、ワークショップなども企画し、大学と一緒に人財育成に尽力してゆく所存です。

■用語解説
1.国際卓越大学院教育プログラムについて
東京大学は、高い研究力と専門性をもって人類社会に貢献する博士人材を育成するため、研究科等が連携して構築した修博一貫(又は学修博一貫)の学位プログラムとして国際卓越大学院教育プログラム(WINGS ― World-leading Innovative Graduate Study Program)を展開しています。本学の世界トップレベルの研究体制の魅力を活かして、国内外から優秀な人材を集め、研究科等がそれぞれの特性を活かして先端的な教育研究指導を行うことにより、卓越した博士人材(高度な「知のプロフェッショナル」)を育成しています。(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/special-activities/wings.html

2. 工学系が中心部局となって運営するWINGSプログラム
- 未来社会協創国際卓越大学院(WINGS-CFS)
社会基盤学専攻をはじめとする11部局1学府73専攻が参画
https://cfs.t.u-tokyo.ac.jp
- 統合物質・情報国際卓越大学院(MERIT-WINGS)
物理工学専攻をはじめとする3部局10専攻が参画
https://www.merit.t.u-tokyo.ac.jp/merit/
- 高齢社会総合研究国際卓越大学院(WINGS-GLAFS)
建築学専攻をはじめとする9部局1学府40専攻が参画
http://www.glafs.u-tokyo.ac.jp
- 量子科学技術国際卓越大学院プログラム(WINGS-QSTEP)
電気系工学専攻をはじめとする4部局9専攻が参画
https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/q-step

 

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