東邦大学医学部解剖学講座の吉田さちね助教と船戸弘正教授らの研究グループは、東京大学情報理工学系研究科大学院生の笹谷拓也と工学系研究科の川原圭博教授、大阪大学の研究チームとの共同研究により、両親のハグによって乳児がリラックスすることを実証しました。(発表者等詳細は、以下プレスリリースに掲載)
親は、喜びや愛情を示すとき、赤ちゃんをぎゅっと抱きしめます。この行動は、さまざまな国の親子で見られ、英語圏では「Hug(ハグ)」と呼ばれています。しかし、まだ話せない赤ちゃんが親にハグされた時どのように「感じている」のかはほとんど研究されておらず、不明でした。そこで本研究では、母親に乳児を「軽く縦抱きする」、「可愛いと思ってぎゅっとハグする」、「そのまま走れる位強く抱きしめる」という3種の指示のもと、接触圧の異なる3タイプの抱き方をしてもらいました。各抱き方は、20秒ずつ立って静止した状態で行い、それぞれにおける乳児の心拍間隔の増加率を比較しました。その結果、乳児は母親にハグされている時は、他の2つの抱き方をされている時よりも心拍間隔の増加率が高くなり、副交感神経が活性化したリラックス状態となることが分かりました。父親や育児経験のある初対面の女性によるハグの影響も調べました。乳児の心拍間隔増加率は、両親にハグされている時の方が、初対面の女性にハグされている時よりも高くなりました。一方、両親も自分の子をハグすると、ハグ前と比べて心拍間隔の増加率が高くなりました。以上から、ハグによって乳児も両親も心拍間隔増加率が高まり、リラックスすることが実験的に示されました。こうした心拍間隔の変化は、触れ合いによって親子が安らぎを感じる基礎的なメカニズムのひとつである可能性があります。
本研究成果は、将来、言葉を話す前の乳児の認知や感覚処理の発達について理解を深め、子育て方法の科学的な検証や新たな指針づくりに役立つことが期待されます。
プレスリリース本文:PDFファイル
iScience:https://doi.org/10.1016/j.isci.2020.100996
東邦大学:https://www.toho-u.ac.jp/press/2020_index/20200407-1071.html