学生インタビュー|須永 祐大さん

2024/10/16

 

 

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工学部広報室のTA Ttime! が「工学部長賞」を受賞した学生たちにインタビュー。
今回は、工学系研究科 航空宇宙工学専攻横関研究室に所属の修士1年生、須永 祐大さんを取材させていただきました。航空宇宙への興味から、研究内容、大学での学習の秘訣まで伺うことができました。最後には高校生へのメッセージも頂いたので是非ご覧ください!

 

 

 

――よろしくおねがいします。まず、航空宇宙工学科に進学した理由を教えてください。

幼少期から宇宙開発への興味がありました。小学生の頃に父親がPCでスペースシャトルの打ち上げを見せてくれて、そこから宇宙に飛んでいくロケットから興味を持ち始めました。さらに、ロケットが宇宙空間に送り届けている人工衛星や探査機、そしてそれらの宇宙機を動かすための理屈となる宇宙工学を学びたいと思いました!

 

 

――なるほど、面白いですね。現在の研究室に入った決め手は?

自分の興味の引き金はスペースシャトルであり、宇宙開発の中でも有人宇宙活動に興味を持っていました。最近は超小型衛星など小さい無人機の宇宙技術は世界的にも盛んに研究されているものの、今後人が実際に宇宙で活動していく時代が来ると考えており、宇宙で人が活動するための構造物に関する研究を進めていく必要があると考えています。そのため、宇宙構造物の構造や材料に関して研究ができる横関先生の研究室に入りたいと思いました。

 

 

――素晴らしいですね。研究内容について教えてください。

私の研究内容は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の宇宙展開構造物です。

 

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図1)宇宙展開構造物

 

――実物をお持ちいただきありがとうございます!CFRPとはなんでしょうか?

CFRPは炭素繊維と樹脂(プラスチック)の2つから構成されている材料です。炭素繊維はとても細くて結晶の欠陥が少ない繊維で、長手方向に強い性質を持ちます。日頃私達が使っているようなプラスチックに炭素繊維を中に入れると繊維方向に強い材料ができます。このような軽くて強い材料は、航空宇宙分野では特に重要です。航空機は空を飛んだり、宇宙機はロケットで運んでもらったり、ということで軽さが重要なんですよね。

CFRPは、普通の金属とは違い、方向によって硬さや強さが異なる、異方性という性質を持ちます。炭素繊維の沿わせ方や積層構成を工夫すると、(CFRPの)異方性を活かして構造物の剛性や強度を設計することができ、2つの異なる形状で安定するような構造も実現できます。例えばこの構造物(図1)の場合、広げた状態(図2)でも丸めた状態(図3)でも安定します。

 

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図2)構造物を広げた状態

 

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図3)構造物を丸めた状態

 

 

――応用先は何になるんでしょうか?

現在日本では、人を載せられる月面ローバ(宇宙探査用の車両)の計画があります。ローバは月の極域での活動を想定しています。月の極域では太陽光が横から降り注ぐので、太陽電池を縦に上げて広げて横から光を受けて電力を賄う必要があります(図4)。一方で、ローバが動いているときはしまいたいので、太陽電池パネルを何度も開いたり収納したりしないといけないんですね。開きっぱなしにしていると、月の砂であるレゴリスの付着で太陽電池の発電効率が低下する恐れがあります。そのため、この構造は太陽電池の支持部材としての応用が検討されています。

 

 

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図4)極域における太陽電池パネルのイメージ図

 

 

――背景についてよくわかりました。改めて卒業研究のテーマを教えてください。

宇宙はとても温度環境が過酷であり、また材料の剛性や強度は温度によって変わるので、常温、100℃、-150℃で構造の剛性・強度の測定・解析・伸展シミュレーションを行っていました。

 

 

――なるほど、研究をしている中で大学での座学はどのように生きましたか?

普段の座学は研究のベースになるかなと思います。基礎的なところから今研究しているところまで飛躍なく積み上げたいというスタンスなのですが、普段の座学が役立ちます。研究は専門性も必要ですが、広く学部時代に学んだことが生きています。

 

 

――航空宇宙工学科で面白かった授業はありますか?

研究室の横関先生の弾性力学で、材料や構造分野の奥深さ・面白さを知りました!理工系の専門書を独力で読むとなると、数式を追いかけるような解像度が低い学びになってしまいますが、先生の講義を受けると話し言葉に近い形で専門分野が聞けるので理解が深まるなと思います。

 

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図5)構造物の試験片の引張試験を行っている須永さん。実際の構造物を宇宙で見込まれる高温・低温環境で動作させる前に、材料特性を取得して数値シミュレーションに活用する。

 

 

――大学での勉強の秘訣はありますか?

高校までの勉強と一番違うのは、忘れてもいいから、すぐに思い出せるような状態にすることが大事である点ですかね。学科の先生が、頭の中に目次を作っておくことが大事とおっしゃっていました。また、講義で学んだことをフレッシュなうちにできるだけノートに残すようにしていました。

 

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図6)須永さんの授業まとめノート

 

 

――高校生のときに勉強以外にしていたことはありますか?

中学2年生のときに宇宙開発をテーマにした同好会を立ち上げて、最初は人工衛星や探査機の模型を作る活動から始めていましたが、高校生になって数学や物理の知識が蓄えられてきた段階で、ペットボトルロケットがどのような運動をしているのかのデータをとったり計算したりしていました。

 

 

――宇宙への情熱が際立っていますね!最後に高校生へのメッセージをお願いします!

例えば自分の研究の場合は高校科目の物理・数学・情報に関連があり、ベースになっていると思います。高校でどこまで解像度高く理解しているかが大学での学びやすさに繋がりますし、知識のベースがあることでわかる世界が広がると思います。最初は受験のための勉強という側面があると思うんですが、大学に入った先もつながっているというモチベーションで楽しさを忘れずに学んでもらえたらいいなと思います。
――ありがとうございました!

 

 

※このインタビューは工学部広報室TA Ttime!のメンバーによって企画編集されました。

TtimeOBOG_blue_取材・執筆・撮影/編集:
杉山 詩歩、南方 貫吾、瀧田 紘暉