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2024年7月27日、化学システム工学専攻 酒井・西川研究室 勝田 毅 助教が第31回 肝細胞研究会において最優秀演題賞を受賞されました。
右から3番目が勝田助教です
最優秀演題賞(第31回 肝細胞研究会)
本賞は、肝臓細胞に関する研究活動を奨励するために授与されました。研究テーマ、発表内容、ディスカッション能力などを総合的に評価されました。
受賞された研究内容・活動について
慢性肝障害下では、肝細胞の一部が胆管細胞へとリプログラミングを起こすことが知られています。しかし、そのエピジェネティックなメカニズムはほとんどわかっていませんでした。一方、in vitroのリプログラミング現象については知見が蓄積されてきています。特にiPS細胞のリプログラミングでは、パイオニアファクターとよばれる転写因子が、もともと線維芽細胞では閉じていた領域に結合し、その領域をこじ開けることで多能性の獲得を誘導することが知られます。そこで本研究では、in vivoでも同様のメカニズムが働くという仮説を立て、これを検証しました。まずアデノ随伴ウイルスを用い、先の研究でパイオニアファクター候補として見出していたSOX4を、in vivoでマウス肝細胞に発現させたところ、リプログラミングを起こした細胞に特徴的な遺伝子発現およびオープンクロマチン状態が見られ始めるのに対し、逆に肝細胞の特徴は失われていくことを見出しました。続いてウイルス投与18時間後と4日後の2時点で、SOX4がゲノムのどの領域に結合するかを検討しました。興味深いことに、SOX4はまず肝細胞のエンハンサーに結合しその活性を抑えること、逆に後の時点では胆管細胞のエンハンサーに結合しその活性を誘導することが明らかとなりました。さらにエンハンサー不活性化のメカニズムとして、肝細胞のマスター因子であるHNF4Aによって占められていたエンハンサー領域が、SOX4に乗っ取られることを見出しました。以上のことから、SOX4はエンハンサー不活性化と活性化の両方を段階的に制御することで、肝細胞の胆管化生の開始を誘導していることが明らかとなりました。
今後の抱負・感想
パイオニアファクターの新たな一面を見出すことができました。本研究が、今後のリプログラミング研究のさらなる発展に貢献できるものと期待します。今回の受賞は、今後の研究への取り組みにさらなるモチベーションを与えてくれるものであり、大変ありがたく思います。本件に関連する記事はこちら