発表のポイント
◆ 東京大学大学院工学系研究科の教授らと日本ペイント株式会社の研究員による研究グループは、天然および合成ゼオライトを系統的に比較し、モルデナイト(MOR)型ゼオライトが極めて高い抗ウイルス性を示すことを明らかにしました。
◆ 抗ウイルス性を支配する因子が「骨格構造」と「表面酸強度」であることを見出しました。
◆ 銀などを用いない低コスト・低環境負荷な抗ウイルス材料の開発につながるほか、ゼオライトの表面酸性を利用した新たな材料設計指針を示す成果であり、公衆衛生や環境分野への応用が期待されます。

本発表の概略:ゼオライトの骨格構造によって抗ウイルス活性が左右される
発表内容
東京大学大学院工学系研究科の脇原 徹 教授を中心とした研究グループと日本ペイント株式会社は、プロトン型ゼオライト(注1)の抗ウイルス性能において、ゼオライトの骨格構造(トポロジー)が性能を大きく左右することを明らかにしました。
ウイルス感染症の拡大を防ぐため、長期間抗ウイルス性能を維持できる固体材料の開発が求められています。現在実用化されているゼオライト系抗ウイルス材料の多くは銀や銅などの金属イオンを利用していますが、高コストや金属溶出、変色などの問題があります。
研究グループは2023年に、金属イオンを含まないプロトン型ゼオライト(H型ゼオライト)が抗ウイルス性を示すことを世界で初めて見出しました(関連のプレスリリース①)。しかし、どのようなゼオライトが高い抗ウイルス性能を示すのかといった設計指針は明らかになっていませんでした。
本研究では、複数のゼオライト構造を比較した結果(図1)、天然モルデナイト(MOR型)およびH型モルデナイトが特に高い抗ウイルス性を示すことを発見しました。さらに、各種構造解析および酸性評価から、ゼオライト外表面の酸強度が抗ウイルス性と強く相関することを明らかにしました。本成果は、銀などの金属に依存しない低コスト・低環境負荷な抗ウイルス材料の開発や、新しいゼオライト設計指針の構築につながることが期待されます。

図1:天然ゼオライト(MOR型)と合成ゼオライト(FAU型)の抗ウイルス特性の比較
〇関連のプレスリリース:
①「プロトン型ゼオライトの新たな抗ウイルス性を発見 ―安価かつ変色しない抗ウイルス新材料としての社会実装を期待―」(2023/03/15)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2023-03-15-002
②「新規抗ウイルス材料のハイスループットスクリーニング系を共同開発」(2022/04/28)
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2022-04-28-002
③「新型コロナウイルスおよびアルファ変異株を不活化する 新規抗ウイルス性ナノ光触媒を共同開発」(2021/07/15)
https://www.nipponpaint-holdings.com/news_release/2021071502/
④「国内初!塗料の講座開設、東京大学と日本ペイントホールディングスによる社会連携講座の開設」(2020/11/24)
https://www.nipponpaint-holdings.com/news_release/2020112401/
発表者・研究者等情報
東京大学 大学院工学系研究科
脇原 徹 教授
津本 浩平 教授
中木戸 誠 講師
竹本 晶紀 助教
岡田 幸恵 修士課程:研究当時
日本ペイント株式会社 技術統括本部
佐藤 弘一 本部長
宮前 治広 鉄構塗料技術部グループマネージャー
江上 侑希 建設塗料技術部
論文情報
雑誌名:ACS Nano
題 名:Topology-Dependent Antiviral Activity of H‑Form Zeolites: Discovery of a Highly Active Natural Mordenite
著者名:Yukie Okada, Masanori Takemoto, Yuki Sada, Shoko Miyagi, Chokkalingam Anand, Makoto Nakakido, Noriko Nakamura, Seiichi Ohta, Naonobu Katada, Yutaka Yanaba, Nobuhiro Miyamae, Yuki Egami, Koichi Sato, Kenta Iyoki, Tatsuya Okubo, Kouhei Tsumoto, Toru Wakihara
DOI:10.1021/acsnano.6c08119
URL:https://doi.org/10.1021/acsnano.6c08119
研究助成
本研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)ムーンショット型研究開発事業、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業「学術変革領域研究(A)」(課題番号:JP20A206、JP20H05880)、「基盤研究(S)」(課題番号:JP23H05454)、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」(課題番号:JPMXP122324UT0343)および「Materials Processing Science project “Materealize”」(課題番号:JPMXP0219192801)の支援により実施されました。また、本研究成果は、2020年5月18日に東京大学と日本ペイントホールディングス株式会社が締結した産学協創協定に基づき推進している共同研究から創出された成果です。
用語解説
(注1)プロトン型ゼオライト:水素イオンが固定されたゼオライトのこと。
プレスリリース本文:PDFファイル
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