プレスリリース

水銀・ストロンチウム光格子時計の高精度直接比較に成功 -次世代時間標準に向けて「光格子時計」の優位性を示す-:物理工学専攻 香取秀俊 教授

 

東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授らと理化学研究所の研究グループは、水銀原子を用いた光格子時計を新たに開発しました。同グループが先行して開発した世界最高精度を誇る低温動作ストロンチウム光格子時計と直接比較し、現在の「秒」の定義の実現精度を超える周波数を計測することに成功しました。

光格子時計は、現在の「秒」を定義するセシウム原子時計よりも千倍近く高い精度が得られる次世代の「秒」の定義の有力候補として世界中で研究されています。光格子時計の精度向上を阻む困難の1つは、原子の周辺環境から放射される電磁波(黒体輻射)が原子の振動数を変化させてしまうことでした。

研究グループは、これまで光格子時計に用いられてきたストロンチウムやイッテルビウム原子に比べ、黒体輻射の影響を十倍以上受けにくい水銀原子と、長期安定動作技術を確立した紫外線のレーザーを用いて、常温で作動する水銀原子を用いた光格子時計を開発しました。この水銀光格子時計を、以前から研究グループが開発していた低温動作ストロンチウム光格子時計と比較したところ、現在の「秒」を定義しているセシウム原子時計で実現されている精度を超える周波数比の計測に成功しました(周波数比の不確かさが8×10-17)。

異種の原子を用いた光格子時計同士を直接比較して、周波数比を現行の「秒」の定義を超える精度で決定することは、光格子時計を基準とした次世代の時間標準を確立するための重要な一歩となります。一方、今回得られた周波数比は、物理定数の1つである微細構造定数の恒常性の実験的検証を可能にし、新たな基礎物理学的知見をもたらすことが期待されます。

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