プレスリリース

東京大学、KDDI総合研究所、Beyond 5G/6G時代を見据えた 「未来スマート社会研究」社会連携講座を開設

 

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長 染谷隆夫、以下東京大学)と株式会社KDDI総合研究所(代表取締役所長 中村元、以下KDDI総合研究所)は、情報・通信・デバイスの技術が融合された、Beyond 5G/6G時代におけるスマート社会基盤の構築に関する研究開発を行う「未来スマート社会研究」社会連携講座(以下、本社会連携講座)を2022年1月1日から開設し、共同研究を開始しました。
本社会連携講座は、Beyond 5G/6G時代におけるサイバーフィジカルシステムを見据え、情報・通信・デバイスといった様々な分野を横断した研究開発を行うことで、社会全体にまたがるインフラの構築、データ収集・流通・解析までアーキテクチャ全体を見渡せる技術力を持つ人材の育成、新産業創出・社会イノベーションを起こすための産学連携・交流を目的としています。
本社会連携講座において東京大学は、Backscatter通信(注1)やエナジーハーベストデバイス(注2)など、無線・デバイス関連や、AIなどのデータ解析に関する研究開発を主導的に行うとともに、コンテスト開催など実践的教育による人材育成を行います。
KDDI総合研究所は、データハブ/MEC(Multi-access Edge Computing)技術関連のデータ流通や全体アーキテクチャに関する研究開発を主導的に行うとともに、本社会連携講座の成果の社会実装や標準化を目指します。

<本社会連携講座の概要>
講座名称: 未来スマート社会研究
研究題目:スマート社会基盤構築のための情報・通信・デバイスを横断した研究
研究内容:
・フィジカル空間からサイバー空間にデータを収集するための、デバイスやネットワークに対するメンテナンスフリーを実現するための技術
・膨大な数のセンシングデバイスから収集したデータを効率よく、保持・流通するためのネットワーク技術
・サイバー空間でのAI等を用いたデータ解析を見越した、データの収集・処理技術
・AIなどを活用してネットワークの運用を容易にする運用自動化技術
代表教員:中尾彰宏(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授)
設置期間:2022年1月1日から2025年3月31日まで
(参考)東京大学の社会連携講座とは、公共性の高い共通の課題について、東京大学と連携して研究を実施しようとする民間等の外部機関から受け入れる経費等を活用して設置される講座のことです。
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/orgs-projects/d04_07.html

<KDDI総合研究所の取り組み>
KDDIとKDDI総合研究所は、経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生活者中心の社会「Society 5.0」の実現を加速する、2030年を見据えた次世代社会構想「KDDI Accelerate 5.0」(https://www.kddi-research.jp/kddi_accelerate5_0/)を策定しました。両社は、ネットワーク、プラットフォーム、ビジネスの3レイヤの環境整備を進めると共に、3つのレイヤを支える先端技術となる7つの分野のテクノロジーと、それらが密接に連携するオーケストレーション技術の研究開発を推進します。
今回の取り組みは7分野のテクノロジーの中の「ネットワーク」「IoT」に該当します。

<共同研究の詳細>
Society 5.0を支えるサイバーフィジカルシステムにおいては、フィジカル空間を測定し、そのデータをサイバー空間で流通・解析します。この測定を担うのがセンシングデバイスを含むIoTデバイスとなります。B5G/6G時代においては、現在5Gを用いて接続されているデバイスだけでなく、環境センサやウェラブルセンサなど多くのIoTデバイスがネットワークに接続され、広範囲にフィジカル空間を測定することが予想されます(図1)。これらのIoTデバイスは低メンテナンスコスト、究極的には一度設置すれば数年間測定を続けるメンテナンスフリーが求められます。このためには消費電力が小さいBackscatterなどのパッシブ型の無線通信技術、環境エネルギーを用いて発電するエナジーハーベスト技術、ならびにAIなどを活用することでネットワークの運用を容易にする運用自動化技術が必要となってきます。
IoTデバイスは膨大な数となるため、それらが収集したデータを効率的に収集・解析する基盤が必要となります。すべてのデータを1つのデータセンタに収集することは、そのデータ量を鑑みると効率が良いとは言えず、MECなどネットワーク内の計算資源を用いた処理やデータの保持が効果的です。これは、データハブやデータドリブンネットワークと呼ばれる、ネットワーク上でデータ流通をサポートする新しい基盤となります。
さらに、これらの技術は1つ1つ個別に検討すべきではなく、全体をアーキテクチャとして考える必要があります。例えば、サイバー空間におけるAIを用いたデータ解析において、丸め込まれたデータは、最初から精度を落として測定することで、IoTデバイスの消費電力やそのデータを収集するための通信路のリソースを削減できます。また、MECでAIでの解析を想定したデータ加工を行うことで、負荷分散や通信・ストレージコストの削減が期待できます。
図1に本社会連携講座が想定するB5G/6G時代のネットワークを示します。この中で、現在の5Gネットワークでは対応が難しいウェアラブルセンサや環境センサのデータ収集技術、さらにそれらを含め収集されたデータをMECなどネットワーク内の処理基盤やストレージを活用したデータ流通・解析基盤技術が、本社会連携講座の検討範囲となります。
本社会連携講座は、横断的アプローチで社会全体に跨る社会インフラの構築と共に、情報・通信・デバイスといった様々な分野を横断した研究開発ができる人材の育成を目指します。


図1 本社会連携講座が想定するB5G/6G時代のネットワーク

注1:Backscatter通信:自ら電波を発射するのではなく、環境に存在するTVやWi-Fiなどの電波をアンテナで反射/吸収することで電波をON/OFFするように変調をかけてデータを伝送する通信手法。とても小さい電力消費でデータの送信が可能という利点があります。
注2:エナジーハーベストデバイス:身の回りにあるわずかなエネルギーを活用して発電された電力で動作するデバイス。電池やバッテリへの充電が不要で動作可能という利点があります。


プレスリリース本文:PDFファイル

KDDI:https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2022/020402.html