理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター量子ナノ磁性研究チームの横内智行客員研究員(東京大学大学院総合文化研究科助教)、強相関理論研究グループの永長直人グループディレクター(東京大学大学院工学系研究科教授)、強相関物性研究グループの十倉好紀グループディレクター(東京大学卓越教授/東京大学国際高等研究所東京カレッジ)、東京大学物性研究所の大谷義近教授(理研創発物性科学研究センター量子ナノ磁性研究チームチームリーダー)らの共同研究グループ※は、「創発電磁場」と呼ばれる量子力学的な効果によって生じる実効的な電磁場を用いた、新しいインダクタの原理の実証に成功しました。
本研究成果は、電気機器や電気回路などの小型化に必要な回路素子の一つであるインダクタの微細化に向けた、新原理の構築につながると期待できます。
今回、研究グループは、らせん磁気構造などの非共線的な磁気構造が電流で駆動すると、創発電場によってインダクタンスが生じること、また、このインダクタンスの値は従来のインダクタとは異なり、素子を小さくするにつれて増大することを理論的に明らかにしました。
さらに、この理論を実証するために、短周期のらせん磁気構造を持つ物質Gd3Ru4Al12(Gd:ガドリニウム、Ru:ルテニウム、Al:アルミニウム)を作製し、インダクタンスを評価しました。その結果、らせん磁気構造が電流駆動するとインダクタンスが生じること、その値は素子を小さくするにつれて増大することが実験的に明らかになりました。以上のことから、創発電磁場によるインダクタがインダクタの微細化に適していることが示されました。
本研究は、科学雑誌『Nature』の掲載に先立ち、オンライン版(10月7日付:日本時間10月8日)に掲載されました。
プレスリリース本文:PDFファイル
東京大学物性研究所:http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=11294
科学技術振興機講:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20201008/index.html
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP541219_V01C20A0000000/