東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の瀧口耕介大学院生、Le Duc Anh助教、田中雅明 教授、同物理工学専攻の小山知弘 助教(研究当時)、千葉大地 准教授(研究当時)、福島工業高等専門学校の千葉貴裕 講師のグループは、すべて半導体でできた非磁性半導体/強磁性半導体からなる二層ヘテロ接合を作製し、新しい電子伝導現象を発見しました。磁場を印加したときの電気抵抗の変化(磁気抵抗効果)は最大で80%に達し、金属や絶縁体を用いた同様の構造に比べて約800倍大きな値です。研究グループが作製したのは、非磁性半導体であるヒ化インジウム(InAs)薄膜(厚さ15 nm)とアンチモン化ガリウムに鉄を添加した強磁性半導体GaFeSbの薄膜(15 nm)を積層した二層のヘテロ接合です。このヘテロ接合で観測された磁気抵抗効果は、これまでに知られているどのような磁気抵抗効果と比べても、磁場の向きを変えた時の振る舞い(磁場方向についての対称性)が異なり、新しい磁気抵抗効果と言えます。さらに、このヘテロ接合をトランジスタに加工することで、外部からの電圧によってInAs薄膜中の電子状態を変化させることが可能になります。InAsは非磁性の半導体ですが、電圧を印加することで隣接するGaFeSb薄膜の磁気的な性質をInAsに付与し、磁気抵抗の大きさをゲート電圧により変調できること、すなわち、電流と磁性の結合を電気的手段によって制御できることが明らかになりました。
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Nature Physics:https://www.nature.com/articles/s41567-019-0621-6