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開催報告 エネルギー総合学連携研究機構・設立シンポジウム

 

                  (東京大学エネルギー総合学連携研究機構)
                  (東京大学国際オープンイノベーション機構)

2021年10月28日(木)13:00~18:30、室町三井ホール&カンファレンスにおいて、「エネルギー総合学連携研究機構」設立シンポジウムを開催し、オンラインでライブ配信致しました。

大久保setevt_202112060951244476292408_853584 染谷setevt_202112060951244476292408_354635 木原setevt_202112060951244476292408_884619
共催者挨拶:大久保理事・副学長 責任部局長挨拶:染谷研究科長 来賓挨拶:経済産業省・産業技術環境局
     木原審議官


シンポジウムでは大久保達也理事・副学長(OI機構長)が共催者を代表した開会の挨拶として、700名を超える方に参加いただいていることへのお礼と、新機構では、グリーントランスフォーメーション(GX)の動きが加速する中で、エネルギーに関する研究開発、政策・制度設計、社会実装を扱うエネルギー総合学の確立を目指すと述べました。

染谷隆夫工学系研究科長より新機構設立の責任部局長としてのご挨拶を賜り、2050年カーボンニュートラルを達成するため、エネルギー研究クラスターなどこの分野で活動を続けてきた工学系研究科が責任部局となり、東京大学ならではの文理融合を強化した10部局が参加した体制で取り組んでいくので、政府機関、企業、研究機関、団体、協会などの皆様のご協力とご支援をお願いする、と述べられました。

経済産業省産業技術環境局 木原晋一審議官よりご来賓のご挨拶を賜り、我が国が2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言したことを受けた経済産業省としての取り組みをご紹介頂き、新機構と産業技術総合研究所、理化学研究所との連携を通じて、カーボンニュートラルに資するエネルギーシステムの実現に向けて大きな成果となることを期待する、と述べられました。

藤井setevt_202112060951244476292408_967492

松橋setevt_202112060951244476292408_525493

基調講演:藤井総長 主催者挨拶:松橋機構長


そして、藤井輝夫総長より「多様性の海へ:対話が創造する未来」と題して基調講演を賜り、地球が有限であるとの認識の下で東京大学の基本方針としてUTokyo Compassを定め、学内外との対話を重視し多様な方々と議論しつつGXを進めることを一つの目標としており、新機構にはGXにおいても広く世界に貢献する成果を期待する、と述べられました。


その後、PR動画(英語バ-ジョン)にて「エネルギー総合学連携研究機構」についての紹介がありました。
続いて、松橋隆治機構長より主催者としての挨拶、機構の概要紹介と運営方針の説明があり、地球規模の課題である二酸化炭素排出のネット・ゼロを達成するために、二元論で特定の資源や技術を切り落とすのではなく多様でセキュリティの高いエネルギーシステムを構築することが望ましいと考え、新機構においては多様な10部局60名近い先生に参加いただき、社会倫理・社会哲学、政策・制度、革新技術の研究開発、社会実装・イノベーションを網羅して進め、GX、カーボンニュートラル社会の実現に貢献して社会課題の解決を図りたい、と述べました。

その後、休憩をはさみ、特別講演1として、石井菜穂子理事(未来ビジョン研究センター 教授)より「グローバル・コモンズの責任ある管理とエネルギーシステムの在り方」と題し、20世紀後半以降の経済発展が地球環境に巨大な負荷をかけ、気候変動や生物多様性の喪失など地球システム全体を不安定にしており、私たちは急ぎ地球という人類の共有財産(グローバル・コモンズ)を守る方法を見つけ、合意し、行動しなければならないと述べられ、グローバル・コモンズ・センターにおけるグローバル・コモンズの責任ある管理の枠組と、エネルギーシステム転換への展望をご説明いただきました。

エネルギー総合学連携研究機構には現時点で学内10部局より教員が参画していますが、各部局の教員より下記の如く講演が行なわれました。

石井setevt_202112060951244476292408_105248 江崎setevt_202112060951244476292408_697892 大越setevt_202112060951244476292408_963613
特別講演1:石井菜穂子理事 講演1:江崎浩教授 講演2:大越慎一教授


講演1は、情報系研究科創造情報学専攻の江崎浩教授が、「再生可能エネルギーとデータセンター」と題して、再生可能エネルギーを利用したカーボン・ニュートラルなデータセンターが実現されなければならず、大きなエネルギーを消費するデータセンターは、スマートシティーの主要な構成要素として捉えることも可能となり、激甚災害への対応と地政学的観点からの経済安全保障に関連する地方への戦略的展開が検討されていると述べました。

講演2は理学系研究科化学専攻の大越慎一教授より、「熱エネルギーを長期間貯蔵可能な革新的材料"蓄熱セラミックス"」と題し、未利用熱の活用という面から長期間熱エネルギーを貯蔵し必要な時に放出できる蓄熱材料の重要性を指摘され、三チタンが熱エネルギーを長期保存でき、低い圧力印加によってその熱エネルギーを取リ出せることを見出したことに基づき、“長期蓄熱セラミックス"という新概念を紹介しました。

岩田setevt_202112060951244476292408_532906 瀬川_202112060951244476292408_741181 梶川setevt_202112060951244476292408_482041
講演3:岩田忠久教授 講演4:瀬川浩司教授 講演5:梶川裕矢教授


講演3は、農学生命科学研究科の岩田忠久教授より「プラスチックと人類および環境との共存を目指して~エネルギー、リサイクル、脱炭素、生分解の観点から考える~」と題して、持続可能な物質社会の構築と環境保全に貢献する材料として期待されている石油を原料とせず、再生産可能な植物バイオマスを出発原料とした「バイオマスプラスチック」、環境中の微生物によりニ酸化炭素と水にまで完全に分解される「生分解性プラスチック」について説明しました。

講演4は、総合文化研究科の瀬川浩司教授より「カーボンニュートラルに向けた次世代太陽光発電」と題し、次世代太陽電池の研究開発の中心にあり、資源制約がない安価な材料を使って塗布製造できる「有機金属ハライドペロブスカイト太陽電池(PSC)」について、東京大学において世界で初めてモジュール変換効率20%以上を実現した実績など、最新研究開発動向について紹介しました。

講演5は、未来ビジョン研究センターの梶川裕矢教授が「新たなエネルギーシステムへの移行とガバナンス、ルール形成」と題し、カーボンニュートラル社会への移行においては技術のみならずガバナンスメカニズムが大きな駆動力となり、カーボンプライシングやクレジット取引、タクソノミー、国境調整措置などのルールや基準が、国際的なコミュニティで検討されている中、産官学が取リ組むべき課題や新たなエネルギーシステムにおけるルールの役割と、ルール形成について述べました。

事務局長setevt_202112060951244476292408_213549 高村setevt_202112060951244476292408_843355
特別講演2:Faith Birol IEA事務局長 特別講演3:高村ゆかり教授


前半の講演5件の後、特別講演2として、International Energy Agency(IEA)のFaith Birol よりと題してご講演を賜り、パンデミックからの持続可能な経済回復のためにはクリーンエネルギーの利用促進が解決策となり、日本の強みである高度なエネルギー技術を生かして世界をリードし続けることへの期待を述べられました。


更に、特別講演3として、未来ビジョン研究センターの高村ゆかり教授(日本学術会議 副会長)より「2050年カーボンニュートラルに向かうエネルギー政策-再生可能エネルギー主力化の政策課題」についてご講演を賜り、カーボンニュートラルの実現という長期目標を踏まえてエネルギー基本計画の見直しが進んでおり、その背景と内容についてご紹介いただき、制度・政策とそれを支える技術がともに機能することが重要であると述べられました。

その後、後半に下記の5講演が行われました。

大橋setevt_202112060951244476292408_502597

鹿園setevt_202112060951244476292408_386839

杉山setevt_202112060951244476292408_115595

講演6:大橋弘院長 講演7:鹿園直毅教授 講演8:杉山正和教授


講演6は、「エネルギー政策学の新たな展開に向けて」と題して、公共政策大学院の大橋弘院長が、経済活動の脱炭素化をしていくための様々なハード・ソフトのインフラが求められること、再生可能エネルギーが大量導入された際の統合コストを加味した経済性や安定供給のための調整力確保に対するわが国独自の新たな考え方など、エネルギー政策学の新たな展開について述べました。


講演7は、生産技術研究所機械・生体系部門の鹿園直毅教授より「カーボンニュートラル時代の熱利用」と題し、熱交換技術が社会を支える重要な共通基盤技術であり、安価で低環境負荷な材料への転換、低コストかつ低炭素な製造方法、このような材料や製法を使いこなすための設計技術の開発を三位一体となって進めることの重要性、また耐食性や強度の面でこれまで適用が難しかった用途へのアルミニウムやセラミックス等を用いた新しい熱交換技術開発について紹介しました。


講演8 は、先端科学技術研究センターエネルギーシステム分野の杉山正和教授が「電気化学材料・デバイス・システムによるカーボンニュートラルへの挑戦」と題して、蓄電池と水電解装置には異次元的な大量導入が求められておリ、広く存在する元素を用いた低コスト材料の開発が喫級の課題となっているが、これらの共通基盤が電気化学であり、材料、デバイスそして社会実証可能なシステムを俯瞰した統合的なアプローチにより研究開発を進めていると述べました。

大崎setevt_202112060951244476292408_408040 鈴木setevt_202112060951244476292408_898866 上条setevt_202112060951244476292408_636695
講演9:大崎博之教授 講演10:鈴木雄二教授 閉会挨拶:
上條健統括クリエイティブマネージャー


講演9は、新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻の大崎博之教授より「次世代モビリティ技術とカーボンニュートラルエネルギーシステム」と題し、電気自動車(EV)の走行中給電技術・自動運転制御技術、スマートグリッド・分散型再生可能エネルギー、また、次世代エネルギーとしての核融合の研究など、新領域創成科学研究科で進められている研究について紹介しました。


講演10は、工学系研究科機械系工学専攻の鈴木雄二教授が「脱炭素工業炉のためのアンモニア燃焼」と題し、電気炉化が難しい工業炉の脱炭素化のためのアンモニア燃焼の実現に必要な、立ち上げ時に使用するアンモニアからの水素取リ出し装置設計、および燃焼器構成部材への燃焼排ガスの影響把握のため、燃焼炉に用いられるステンレス材料とアンモニア火炎との相互干渉についての研究について述べました。

上記の如く、今回の講演は、まさに当機構の運営方針である「文理融合」の内容となりました。

最後に東京大学国際オープンイノベーション機構の上條健統括クリエイティブマネージャーより閉会の挨拶があり、長時間にわたりご視聴いただいたお礼と、新機構には気候変動というリスクの解決を期待し、両機構が協力して様々なネットワークを通じて変革を進めたいと述べ、シンポジウムはに終了しました。 
尚、オンラインライブへの接続回線数は725件と国際オープンイノベーション機構がこれまでに主催、共催したイベントの中で最も多くの方にご参加いただきました。

今回は新機構のお披露目でありましたが、今後は実質的な成果をたくさんご報告できるように運営してまいりますので、エネルギー総合学連携研究機構をお引き立ていただきますようお願いいたします。