三田 吉郎教授、木村 隆志准教授らが文部科学省 マテリアル先端リサーチインフラ事業の令和7年度の秀でた利用成果最優秀賞を受賞 ―武田先端知スーパークリーンルームと大型放射光施設SPring-8の融合成果―

2026/08/19

1.発表者:

三田 吉郎(東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻 教授)
木村 隆志 (東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設(兼)データ統合型材料物性研究部門 准教授) 
竹尾 陽子 (東京大学物性研究所 助教)
島村 勇徳 (東京大学物性研究所・当時)
櫻井 快 (東京大学物性研究所・当時)
吉永 享太 (東京大学物性研究所)
中田 勇宇 (東京大学物性研究所)
永山 裕一 (東京大学物性研究所)
幾原 雄一(東京大学大学院工学系研究科総合研究機構 教授)

 

2. トピックの概要:

東京大学マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点(注1) の微細加工部門(東京大学武田先端知スーパークリーンルーム)の三田 吉郎教授らと、東京大学物性研究所の木村 隆志准教授らによる利用成果が、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業(ARIM:注2) の令和7年度「秀でた利用成果」最優秀賞を受賞しました(注3,
受賞対象となった成果は、「微細加工を活用したX線イメージング技術の高度化/X線光学素子開発のための微細加工プロセスの検討」です。同成果は、約3,000件のARIM利用報告書の中から8件の「秀でた利用成果」の一つとして2025年10月に選定されました。その後、2026年1月28日に東京ビッグサイトで開催された第25回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2026)の成果発表会・審査を経て、最優秀賞2件のうちの1件に選ばれました。このたび、同成果を紹介するARIM Japan Magazine 2026において、受賞に至った取り組みと研究成果がWeb記事で公開されます。
本研究で主に用いる波長数nmの軟X線は可視光より波長が大幅に短く、物質を高い空間分解能で分析できる一方、集光・分光・波面計測に用いる光学素子には極めて高い加工精度が求められます。研究グループはARIMの枠組みを通じて、東京大学武田先端知スーパークリーンルーム(注5)の大面積超高速電子ビーム描画装置やエッチング・成膜装置群を活用しました。実施機関の技術スタッフによる装置選定、加工条件の最適化、評価・改善までの継続的な支援を受け、目的に合わせたX線光学素子と微細パターンの作製プロセスを確立しました。
作製した素子は、大型放射光施設SPring-8に構築した軟X線顕微鏡に導入され、集光ビームの波面検出や試料計測に利用されています。東京大学物性研究所で開発した色収差のない全反射ミラーと組み合わせ、元素の吸収端付近で波長を変えながら高精度な像を取得することで、元素分布や化学状態を高い空間分解能で可視化できるようになりました。
今回公開されるWebマガジン記事では、研究室と共用施設の連携の歩みから、開発した軟X線顕微鏡の応用までを紹介しています。具体的には、約50 nmの空間分解能による細胞内の窒素・酸素の化学状態マッピング、海洋植物プランクトン1細胞に含まれる酸素量のピコグラム(10⁻¹² g)単位の精度での評価、0.6 nm厚のコバルト層を含む試料におけるスピン・軌道磁気モーメント分布の定量イメージングなど、生物・環境・材料科学にまたがる成果が取り上げられています(注6)
本成果は、X線光学素子の設計、微細加工、放射光計測、データ解析という異なる専門性を、共用研究基盤と人的な技術支援によって結び付けたものです。高精度なX線光学と微細加工技術をさらに発展させることで、従来の顕微鏡では捉えにくかった元素分布、化学状態、磁性を可視化する新たな顕微イメージング技術として、生物、材料、デバイスなど幅広い分野への展開が期待されます。



fig001

 

図 第25回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2026)での集合写真

 

 

3.注:

(注1)東京大学マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点
https://arim.t.u-tokyo.ac.jp/ 
(注2)文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ事業

(Advanced Research Infrastructure for Material and Nanotechnology: ARIM)
https://nanonet.go.jp/

(注3)ARIM令和7年度秀でた利用成果
 https://nanonet.go.jp/page/major_results_R07.html 
(注4)ARIMの秀でた利用成果の選定基準は以下の通りです 

① ARIMの活用・支援が大きな効果をもたらしたもの、

② イノベーションの創出にあたって大きな影響が期待できるもの、

③ 産業界・大学・公的機関の連携により大きな成果が得られたもの。
(注5)東京大学武田先端知ビルスーパークリーンルーム
https://nanotechnet.t.u-tokyo.ac.jp/index.html 
(注6)
軟X線で細胞内の「化学地図」を描く ―新開発の軟X線分光顕微鏡で窒素・酸素の化学状態を 詳細に可視化することに成功―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=26275 
100兆分の1秒の一瞬で生きた細胞の姿を捉えることに成功 ―X線自由電子レーザーを利用した新たな軟X線顕微鏡を開発―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=22879 
高精度ミラーと計算を組み合わせた軟X線顕微鏡を開発 ―ラベルフリーで細胞内の微細構造を50 nmの分解能で可視化―
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/news2.html?pid=16120 
 

 4.問い合わせ先: 

<マテリアル先端リサーチインフラ・データハブ拠点について> 
東京大学 大学院工学系研究科電気系工学専攻
/大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)基盤デバイス研究部門長
教授 三田 吉郎(みた よしお) 
〒113-0032 

東京都文京区弥生2-11-16 東京大学武田先端知ビル306 
東京大学 大学院工学系研究科附属システムデザイン研究センター(d.lab)
基盤デバイス研究部門 ナノテクノロジー支援室 落合幸徳マネージャ気付
TEL:03-5841-1506  
URL:https://arim.t.u-tokyo.ac.jp/ 
E-mail:nano_help@if.t.u-tokyo.ac.jp

<研究内容について>
東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター軌道放射物性研究施設(兼)データ統合型材料物性研究部門
准教授 木村 隆志(きむら たかし)
tkimura”at”issp.u-tokyo.ac.jp
【柏キャンパス】
〒277-8581

千葉県柏市柏の葉5-1-5
東京大学柏キャンパス A501号室
TEL:04-7136-3400
【播磨オフィス】
〒679-5148

兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
SPring-8 利用実験施設 304号室
TEL:0791-58-0802 (ex. 3843)