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2026年3月15日、都市工学専攻 宇山 三四郎さん(M2・受賞当時)、和田 佳祐さん(M2・受賞当時)、都市工学科 河野 太郎さん(B4・受賞当時)が第32回日本災害情報学会大会 優秀発表賞(口頭発表部門)を受賞されました。

第32回日本災害情報学会大会 優秀発表賞(口頭発表部門)
日本災害情報学会大会で優秀な口頭発表を行った40歳以下の若手研究者・学生に授与される賞です。
受賞された研究内容・活動について
【宇山】
タイトル:地震による直接死および災害関連死に影響を及ぼす背景要因の因果探索
研究内容:地震による死者数軽減策は、一般的に直接要因(住宅倒壊や疾病の発症等)に主眼が置かれる傾向にあります。一方、直接要因の背後にあって死者発生に間接的に影響しうる「背景要因(人口構成、住宅事情、医療・福祉等の社会構造)」は、現状の対策で見落とされている可能性があります、例えば南海トラフ地震や首都直下地震に対する国の被害想定では、直接死の死者数予測では建物構造などの一部の物理的な要因、災害関連死では予想避難者数のみしか考慮されておらず、社会構造が今とは異なる将来を見据えての中長期的な施策を提示しづらいです。既往研究では、多様な背景要因について地震による死者発生との関係性が整理されてきましたが、いずれも定性的分析や相関関係の把握に留まり、因果関係は不明瞭です。そこで本研究は2016年熊本地震と2024年能登半島地震を対象に、地震よる死者発生の背景要因について、その因果構造を直接死と災害関連死の両方で探索的に明らかにしました。その結果、直接死では高齢化率や消防人員数、災害関連死では医師数、薬剤師数、建設事業所数、現場到着所要時間等の、現行の被害想定では考慮されていない変数が死者発生の背景要因となり得ることが明らかになりました。こうした知見は、今後地震による死者数軽減策を策定する際に活用できるのでは、と考えています。
【和田】
タイトル:SCGEモデルを用いた富士山噴火・降灰の経済被害分析
研究内容:火山災害は発生する頻度が低く、地震や風水害と比べると災害として意識する機会は少ないかもしれません。しかし、一度大規模な噴火が発生すれば、広い範囲でその影響を受けると言われています。その中でも、風に乗って遠くまで運ばれる火山灰は、火山から遠く離れた大都市にもその影響を及ぼす可能性があります。本研究は、約300年前の江戸に大量の火山灰をもたらした、富士山の宝永噴火と同規模の噴火が、仮に現代で発生した際のインフラや産業の被害を集計し、地域ごとにその被害額を推計しました。特に、企業の生産活動が低下することによる影響の波及に着目し、その影響が火山灰が積もる地域から直接被災していない他地域への経済的被害の波及について分析を行いました。地域ごとの被害額を数量的に表したことで、今後の火山灰対策・BCPの策定の一助となるとともに、優先すべき地域・産業を明らかにすることで噴火発生後の経済活動の素早い回復に繋がることが期待されます。
【河野】
タイトル:首都直下地震時の建設型応急仮設住宅・産業用仮設施設の配分に関する分析
研究内容:首都直下地震が発生した場合、住宅の被災により仮設住宅の大量需要が生じるとともに、産業を維持するための仮設工場等の産業用仮設施設の需要も発生します。しかし、首都圏では建設可能な用地が限られており、限られた土地を住宅と産業のいずれにどのように配分するかが重要な課題となります。一方で、既往研究では住宅と産業は個別に扱われることが多く、実務においても行政内で所管が分断されている状況にあります。このため、土地制約下における両者の関係性は十分に検討されてきませんでした。本研究ではそのような土地の供給量の限界による住宅と産業のジレンマに着目し、住宅の確保状況と雇用の回復状況の間にどのようなトレードオフ関係が存在するのかを明らかにしました。また、産業ごとに土地を巡って競合しやすい業種が何であるかを明らかにしたほか、地域的に用地の不足が深刻化する地域がどこであるのかを明らかにしました。これらの知見は、首都直下地震時における住宅と産業を統合的に考慮した用地配分の検討に資するものと考えています。
今後の抱負・感想
【宇山】
この度は、栄えある賞をいただき大変嬉しく思います。本研究は私の修士論文で扱っているものであり、研究を進めるにあたって多くの方々にお世話になりました。今回の受賞に至れたのも、皆様からのお支えがあったからです。御礼申し上げます。特に、研究室の先生方や先輩学生には終始丁寧にご指導いただき、また研究が上手く進まないときは親身になって相談に乗っていただきました。ありがとうございました。私は今年4月から研究室を離れますが、研究活動を通じて学んだことを忘れることなく今後も励んでいこうと思います。
【和田】
この度は、優秀発表賞を賜りましたこと、誠に光栄に思います。今回の受賞は私だけの力ではなく、ご指導いただいた先生方、一緒に切磋琢磨した研究室の同期や後輩の支えの成果であると強く感じております。改めて深く感謝申し上げます。本研究は火山灰の降灰でインフラや産業が停止した際の経済被害を推計するという、災害の対象も分析手法もマイナーな分野でした。しかし、それにも関わらず、発表の場で積極的に議論をしてくださった方、そしてそれを評価していただいた方にも重ねて御礼申し上げます。ここに至るまで苦労、そしてそれが受賞という形で開花した経験は、どの分野に進んでも自分の自信になるものと信じております。
【河野】
この度は栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。初めての学会発表においてこのような評価をいただけましたことを、心より嬉しく思っております。
本研究にあたり、先生方ならびに研究室の皆様には丁寧にご指導いただきましたこと、改めて深く御礼申し上げます。
本研究は、首都直下地震後の状況を概観的に把握した段階にとどまっており、今後はより詳細かつ精緻な分析が必要であると認識しております。今回の受賞を励みに、今後の研究にも一層真摯に取り組んでまいります。


