光とひずみを検知可能なフレキシブルマルチモーダルセンサの開発に成功 ―ストレッチャブルエレクトロニクスへの応用に期待―

2026/07/18

発表のポイント

光強度とひずみ(伸縮)を1つのセンサで検知可能な、フレキシブルマルチモーダルセンサの開発に成功しました。

このセンサは、有機光検出器(OPD)と伸縮性基板を組み合わせ、規則的なしわ構造を形成することによって実現しました。

検知したひずみの情報から、ひずみに伴うイメージング画像のゆがみ補正を行うことができるため、今後ストレッチャブルエレクトロニクスへの応用などが期待されます。

 

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光とひずみを検知可能なフレキシブルマルチモーダルセンサ

 

概要

東京大学大学院工学系研究科の按田 智大 大学院生(研究当時)、横田 知之 准教授、染谷 隆夫 教授らの研究グループは、光強度とひずみを1つのセンサで検知可能な、フレキシブルマルチモーダルセンサの開発に成功しました。開発したセンサは、有機光検出器(OPD)と伸縮性基板を組み合わせることで、OPDに規則的なしわ構造を形成しており、OPDの短絡電流(注1)と開放電圧(注2)を計測することで、光強度とひずみを1つのセンサで推定することができます。推定したひずみの情報から、伸縮動作に伴うイメージング画像のゆがみの補正を行うことができ、より高精度な光センシングが可能となります。今後、ヘルスケアやロボットの電子皮膚などのストレッチャブルエレクトロニクスへの応用が期待されます。

本研究成果は、2026717日付で米国科学誌「Science Advances」のオンライン版で公開されました。

 

発表内容

〈研究の背景〉

有機半導体は、軽量で柔軟、さらに溶液プロセスによる大面積製造が可能であることから、曲げられるフレキシブルエレクトロニクスや、伸縮可能なストレッチャブルエレクトロニクスの基幹材料として注目を集めています。特に、人間の皮膚に密着して生体情報を取得するヘルスケアセンサや、ロボットの表面に貼り付ける電子皮膚の開発において、伸縮可能な有機光検出器(OPD)の需要が急速に高まっています。しかし、従来の伸縮可能なOPDは、引き伸ばされるとセンサの受光位置が対象物に対して相対的に動いてしまうため、空間的な解像度が損なわれたり、イメージング素子(カメラなど)として用いた際に取得画像が非一様にゆがんだりするという問題がありました。このゆがみを補正するには、センサの伸び縮み(ひずみ)を検知して画素の位置ずれを正確に推定する必要がありますが、これまでは外付けのひずみセンサを別途集積するしかありませんでした。

 

〈研究の内容〉

今回、研究グループは、有機光検出器(OPD)と伸縮性基板を組み合わせ、規則的なしわ構造をOPDに形成することで、光強度とひずみを1つのセンサで計測することができるフレキシブルマルチモーダルセンサの開発に成功しました(図1)。 

 

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1:光とひずみを検知可能なフレキシブルマルチモーダルセンサの構造図

 

開発したセンサは、伸縮性を付与するため、あらかじめ引き伸ばした伸縮性基板上に、厚さわずか数マイクロメートルの極薄OPDを貼り付けた後、伸縮性基板の引き伸ばしを解除することでOPDにしわ構造を持たせています。従来の製造手法では、しわの形状が不均一であったため、伸縮を繰り返すと応力が局所に集中してしまい、センサ応用に必要な耐久性を実現することができませんでした。本研究では、伸縮性基板の表面に、微細な凹凸パターンをあらかじめ形成し、この上にOPDを転写することで、しわの幅と高さが制御された構造を持たせることに成功しました。この構造により、伸縮時の応力がデバイス全体に均一に分散されるようになり、センサ応用に求められる機械的耐久性を実現しました。さらに、このセンサの基本的な電気特性である短絡電流ISCと、開放電圧VOCを計測することで、光強度とひずみ量を推定することに成功しました。開放電圧は光強度のみに依存し、素子の形状やひずみには影響を受けません。一方で、短絡電流は光強度だけでなく、実際に光が当たっている素子の有効受光面積にも比例します。デバイスを伸長すると、OPDのしわ構造が徐々に平坦化し有効受光面積が大きくなり、短絡電流が増加します(図2)。開発したセンサでは、光強度は1 W/m2、ひずみは5%の分解能で同時に推定することができました。

 

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2:伸縮性OPDを用いた光とひずみのマルチモーダルセンシング

電流電圧特性の変化から光強度とひずみの推定を行う。

 

〈今後の展望〉

今回開発したセンサは、単一の素子で光量とひずみを同時に検出することが可能です。このセンサを2次元のアレイ状に並べることにより、ゆがみを補正可能なストレッチャブルイメージセンサや電子人工皮膚への応用が期待されます。

 

発表者・研究者等情報

東京大学大学院工学系研究科

染谷 隆夫 教授

横田 知之 准教授

按田 智大 修士課程研究当時

 

論文情報

雑誌名:Science Advances717日付、オンライン版)

題 名:Optical based stretchable multimodal sensors for detecting strain and light with periodic buckling structures

著者名:Tomohiro Anda, Yusuke Ebihara, Mari Koizumi, Kento Yamagishi, Tomoyuki Yokota, Takao Someya

DOI10.1126/sciadv.aee9547

URLhttps://doi.org/10.1126/sciadv.aee9547

 

研究助成

本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業 基盤研究(A)「表示機能を備えたフレキシブルセンサシステムの創成(研究代表者:横田知之、JP23H00173)」、同国際先導研究「全身電子皮膚による人間のデジタル化(研究代表者:染谷隆夫、JP22K21343)」、日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業「血圧の長期連続計測に向けたストレッチャブル血中酸素濃度計の開発(研究代表者:横田知之、JP24gm6910010h0002)の支援により実施されました。

 

用語解説

(注1)短絡電流

電圧が0Vのとき(回路が短絡しているとき)、ダイオードに流れる電流。

 

(注2)開放電圧

電流が0Aのとき(回路が開放しているとき)、ダイオードにかかる電圧。

 

 

 

プレスリリース本文:PDFファイル

Science Advances:https://doi.org/10.1126/sciadv.aee9547