国立大学法人東京大学(以下「東京大学」)と、日本ペイントホールディングス株式会社(以下「日本ペイントグループ」)は、塗料とコーティングを軸として、2020年に産学協創協定を締結し、5年間の社会連携講座を開設しました。今回、その第2期として、VOCおよび二酸化炭素排出量の削減につながる環境配慮型製品の開発などの新たなテーマを中心に講座を開設します。生成AIを用いて日本ペイントグループのデータ資産を積極的に活用しながら、幅広い社会課題をよりスピーディーに解決するとともに、相互の人材交流による人材育成体制の構築や教育プロセスの確立にも取り組みます。協定期間は2025年10月から2028年12月です。
1.産学協創の背景とねらい
2020年5月18日に締結した産学協創協定に基づき、同年の10月1日から社会連携講座「革新的コーティング技術の創生」を開設した両者は、当時の社会課題であった新型コロナウイルス感染症の拡大防止に貢献するテーマを中心に取り組み、抗ウイルス製品などの開発を行いました。
本講座は2025年9月末をもって第1期を満了しましたが、同年10月からは協創第2期として内容をさらに発展させて、直接的なビジネス貢献が見込めるコア技術の開発テーマを推進します。感染症対策などの喫緊の社会課題に取り組んだ第1期から、より幅広い社会課題を塗料・コーティング技術によってスピーディーに解決するべく、AI基盤モデルを用いて日本ペイントグループが長年蓄積してきたR&Dデータ資産を積極的に活用していきます。
協創第2期においては、塗料の原材料調達から顧客現場での塗装、さらには廃棄に至るまでのライフサイクル全体を視野に入れ、環境負荷低減を追求することを目的としており、単なる技術開発や製品化に留まらない点に特徴があります。
また、専門人材育成の一層の強化に向けて、これまでに博士1名を輩出してきた企業派遣による人材育成や工学部聴講生制度を活用したリスキリングを継続するとともに、工学系のみならず東京大学の幅広い学術知見を積極的に取り入れていく方針です。東京大学の学生や研究員と日本ペイントグループの社員との双方向の人材交流を促進するラウンドテーブルや、第三者も交えたオープンシンポジウムの開催を計画しており、産学の垣根を超えた議論と協創の場を創出します。
さらに、東京大学の持つAI基盤モデルや最先端の計測技術を活用し、日本ペイントグループのR&Dデータを戦略的観点から体系的に整理します。既存実験データの高度な活用と新規データ取得の自動化による「Lab-in-the-loop」(注1)を図るとともに、「AI for Science」(注2)に関する最新動向の把握や外部機関との連携可能性も模索しながら、研究開発への実装に向けた取り組みを加速させていきます。
(注1)「Lab-in-the-loop」:AI(人工知能)が自動的にデータ処理や意思決定を行うプロセスにおいて、特定の段階で研究者の判断と介入を組み込む手法
(注2)「AI for Science」:AIを科学的な研究に応用することにより、材料探索などの科学研究におけるプロセス全般を自動化し、加速させることを目的としている
【東京大学と日本ペイントグループの産学協創イメージ図】

日本ペイントグループ Dr.Jiang Hong 最高技術責任者 (CTO) からのコメント
「東京大学との連携を通じて、AIと先端材料研究の統合を早期に推進し、材料探索から社会実装までをさらに加速させていきます。また、長年蓄積してきた実験データを活用することで、構造と物性への理解を深め、研究開発の価値創出と資源利用の最適化を目指します。両者で中核事業の強化と新事業創出を進めるとともに社会課題の解決にも貢献していきます。」
東京大学 津田 敦 理事・副学長 (社会連携・産学官協創) からのコメント
「第1期の協創期間では工学系研究科との共同研究を中心に塗装表面の高機能化(抗ウイルス性、防霜性、防錆性)や塗料の物性に関して、さまざまな研究成果を挙げてきました。第2期では、これらの成果の社会実装に取り組むとともに、日本ペイントグループが長年にわたり蓄積してきたノウハウや見識と本学の総合知を組み合わせることで、科学以外の領域においても新たな社会価値の創造に取り組みます。」
2.協定期間と資金規模
期間:2025年10月から2028年12月
金額:3億円規模
3.社会連携講座の概要
講座名:革新的コーティング技術の創生
設置期間:2025年10月から2028年12月
代表教員:脇原 徹(東京大学大学院工学系研究科 附属総合研究機構 教授)
研究課題:本講座では、塗料の製造工程から塗装工程、塗膜品質評価までを対象として、次のような多岐にわたる研究課題に取り組みます。
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塗装工程モデリングによるライフサイクル環境負荷低減手法、および社会における塗料の物質フローと価値の可視化に基づく持続可能シナリオの開発
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AI基盤モデルとマルチモーダルデータ解析を活用し、塗料設計やプロセス条件の最適化、性能予測に至る研究開発全体の高度化を図る
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塗装シミュレーションと塗膜内部構造の可視化技術により、材料配合とプロセス条件を最適化し、高機能で高い信頼性を持った塗膜を形成する
塗膜構造解析や分子レベルの挙動、塗装プロセス設計を体系的に学び、実践できる高度人材を産学共同で育成し、その継続的な輩出を可能にする教育プロセスの確立に取り組むとともに、東京大学の多様な学問分野における卓越した研究成果と、日本ペイントグループの実用技術開発力を融合し、環境配慮と高機能を両立する革新的コーティング技術の創生を目指してまいります。
【ご参考】これまでの主な実績
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ニュースリリース:東京大学との共同研究において抗ウイルス・抗菌製品の新型コロナウイルス(変異株を含む)不活化を確認 (2021年7月15日付発表)
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ニュースリリース:プロトン型ゼオライトの新たな抗ウイルス性を発見 ― 安価かつ変色しない抗ウイルス新材料としての社会実装を期待 ― (2023年3月15日付発表)
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ニュースリリース:塗膜の抗菌効果を可視化する評価系を開発 ― 院内感染等を予防する材料の開発への貢献が期待 ― (2025年2月3日付発表)
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ニュースリリース:USE2023において超音波シンポジウム論文賞を受賞 ― 基板上の液滴の測定に関する新理論を発表 ― (2025年2月21日付発表)
プレスリリース本文:PDFファイル
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