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2018.08.24

【若手研究者紹介:006】電気系工学専攻 小関研究室 小関泰之准教授

学歴
1999.3 東京大学工学部電子工学科卒業
2001.3 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修士課程修了
2004.3 東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程修了(博士(工学))
職歴
2004.4-2006.3 科学技術振興機構博士研究員(古河電工)
2006.4-2013.3 大阪大学大学院工学研究科 助手、2007年より助教
2009.10-2013.3 科学技術振興機構さきがけ「光の利用と物質材料・生命機能」研究者
2013.4- 現職
受賞
平成22年 光学論文賞
平成26年 レーザー学会 奨励賞
平成28年度 丸文学術賞
平成30年 レーザー学会 論文賞「解説部門」

<研究について>
近年、光の発生技術や操作技術が飛躍的な進歩を遂げています。その背景には、光ファイバー通信やディジタルカメラなど、私たちの暮らしを支える電気電子工学技術の著しい発展があります。その恩恵は科学技術計測にも活かすことができます。例えば、超短光パルスという、1兆分の1秒程度の極めて短い時間だけ強く光る光は、20年前であれば大型かつ高価なレーザー装置を使って初めて発生できるものでした。現在では、光ファイバーをつなぎ合わせることで、誰でも簡単に小型な超短パルスレーザーを作って超短光パルスを発生し、活用することができます。
我々は、この超短光パルス技術を駆使し、世界最高速の生体分子イメージング法の研究を進めています。具体的には、超短光パルスの波長やタイミングを適切に制御して生体に照射することで、ラマン散乱と呼ばれる光を極めて高い感度で計測し、そこから生体分子の情報を得て、イメージングを行います。図Aに示すような光学系や、図Bに示すファイバーレーザーを自分たちで組み上げて実験を行います。
従来、ラマン散乱光を計測するには1点あたりおよそ1秒、1枚の画像あたり数十分 ~ 数時間を要することが一般的でした。それに対し、我々の手法では超短光パルスを用いて誘導ラマン散乱という効果を発生させることで、わずか数秒程度で、分子振動スペクトルの情報を得て、細胞に含まれる脂肪滴やタンパク質などの空間分布を像として取得することができます(図C, D)[1, 2]。最近では、微細藻類ユーグレナに含まれる栄養分の可視化に本手法が有効であることを見出しました。特に、本手法の高速性を活用することで、多数のユーグレナ細胞に含まれる油脂や多糖類などの栄養分を、1細胞につきわずか37ミリ秒で計測することに成功しました(図E)[3]。本手法は、バイオ生産の高効率化のための細胞スクリーニングに応用できると期待されます。
現在では、本手法のさらなる高速化を進めるとともに、生体に含まれる様々な生体分子の働きを調べる研究、高機能性・高感度性を実現するためのレーザー光源の研究、画像データから生体分子の情報を抽出するためのデータ解析法の研究などを並行して進めています。

[1] Y. Ozeki et al., Nat. Photon. 6, 845 (2012)
[2] Y. Ozeki et al., J. Sel. Top. Quantum Electron. 25, 7200211 (2018).
[3] Y. Wakisaka et al., Nat. Microbiol. 1, 16124 (2016).

図. A: 誘導ラマン散乱による生体分子イメージングシステムの外観。B: 手作りの超短パルスファイバーレーザー。C: 培養細胞の誘導ラマン像(赤:脂質。青:タンパク質)。スケールバー:10 µm。D: 脂質およびタンパク質の分子振動スペクトル。E: 多数の微細藻類ユーグレナの誘導ラマン散乱像*。緑:葉緑素。青:脂質。赤:多糖類。
*理学系化学専攻合田研、株式会社ユーグレナ、千葉大学、東大医科研との共同研究による。

 

<今後の抱負>
生体イメージングは、さまざまな研究分野の知識と技術を必要とする極めて分野横断的な研究のひとつです。自分とは異なるバックグラウンドをもつ研究者と議論し、協力して研究を進めることは、大変刺激的で楽しい活動です。今後も、電気電子工学のバックグラウンドを活かしつつ、分野の垣根を超えた研究を推進したいと考えています。また、研究を支えているのは、研究室の学生ひとりひとりが持つ「良い研究をしたい」という思いであり、それを大事にしていきたいと考えています。

<参照URL>
小関研究室:http://www.ee.t.u-tokyo.ac.jp/~ozeki