プレスリリース

がんのリンパ節転移を標的する高分子ミセル型ナノキャリア-ナノキャリアの大きさと治療効果の関係- : バイオエンジニアリング専攻 オラシオ カブラル准教授、マテリアル工学専攻 片岡一則教授

 

東京大学大学院工学系研究科の片岡一則教授らの研究グループは、粒径が50ナノメートル以下の抗がん剤を内包した高分子ミセルは、マウスの全身に投与すると、リンパ節に転移したがんに効くことを明らかにしました。

リンパ節は、細菌や異物を取り除く場として知られている。このリンパ節に転移したがんは、既存の治療法では根治が極めて困難である悪性腫瘍のひとつです。また、リンパ節に転移したがんに対して効率よく薬剤を届ける方法はこれまで見出されていませんでした。

今回、研究グループはリンパ節に転移したがんに対する、白金制がん剤を内包した粒径30ナノメートル、70ナノメートルの高分子ミセル型ナノキャリアと臨床的に用いられている粒径80ナノメートルのドキシル®(ドキソルビシン内包リポソーム)の効果を比較検討しました。その結果、粒径30ナノメートルのナノキャリアのみが有意にリンパ節に転移したがん巣内の血管を透過し、さらに転移巣の深部へ浸透することが判明しました。

「この発見は、リンパ節に転移したがんを治療するためのナノキャリアを設計するうえで、粒径を制御することが重要であることを示した初めての例である。また、本成果によって、全身に投与してリンパ節に転移したがんを治療できるドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発に道を開くものである。これらの知見がまだ臨床的に症状を確認することができないリンパ節に転移したがん対する保存療法の発展に役立つことが期待される。」と片岡教授は話します。

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