秋吉 拓真さん(機械情報工学科 3年生※取材当時/陸上運動部)と松本 恭太郎さん(都市工学科 3年生※取材当時/運動会水泳部競泳陣)、工学部広報室の学生TA Ttime!で鼎談を行いました。
箱根駅伝2025に出場した秋吉 拓真さんは、関東学生連合チームの一員として8区を走り、区間7位相当の成績で完走しました。特に注目されたのは、東大陸上部の先輩である古川 大晃選手との襷(たすき)リレー。東大生同士の襷リレーは41年ぶりです。また、4種目で東大記録を持っています。
松本 恭太郎さんは200m平泳ぎで2024年度日本選手権(第6位)や2024年度インカレ(第4位)などに出場し、記録を残しています。日本選手権決勝への東大生の出場は13年ぶりであり、今後も目が離せません。
選手として、また、一人の東大生として、たっぷりお話を伺いました。
最後には高校生へのメッセージもいただいたので是非ご覧ください!
※記載の情報はいずれも2025年3月時点のものです。

――本日はよろしくおねがいします!早速ですが、お二人がスポーツを始めたきっかけは?
秋吉:自分は幼稚園から周りの友達がきっかけでサッカーを始めて、高校から陸上部に入りました。陸上部に入ったきっかけは中高で毎年行われていた30km走で中2の時に全校生徒の中で一番になったことで、サッカーより長距離走の方が活躍できるのでは?と思って始めました。
松本:僕はずっと水泳をやっているんですけど、幼稚園の近くにスイミングクラブがあってみんなそこに通っていたことがきっかけです。
――松本さんは中高時代はどのような選手だったのでしょうか?
松本:僕は中3で全国中学校水泳競技大会に出て自分なりにいい結果が出て、そこで燃え尽きちゃったのもあって中3の冬からはいまいち練習を詰められていませんでした。そのあと、コロナもあってそこまで練習できなかったんですけど、高3の6月に辞めようと自分で決めて、それまでは自分なりにやりきったなあと思っていたんです。
ただ、春の全国大会にみんなが出ている中で自分だけ出られない、というのがちょっと悔しかったり、大学入った後に少しプールに入って体を動かしてたらやっぱり泳ぎたいなと思って、また始めました。
――秋吉さんは高校からずっと第一線で走っているのでしょうか?
秋吉:高校生の頃は全然でした。学校では一番でしたが部活が盛んではない学校で、速いと勘違いした井の中の蛙でした。高校時代は県大会に行くのがやっと、という選手で、その先の近畿大会や全国大会には進むことができなかったです。
大学に入って、自分では結構自信を持って陸上部の門を叩いたんですけども、やっぱり東大陸上部の中ですら自分より速い人がいて、まず絶望したというか、自分はまだまだ甘かったんだなと感じました。1年生のときの箱根駅伝の予選会では全く関東学生連合チームに選ばれるようなレベルではなくて、そこで差を知ってしっかり練習を積むことができて、3年生で無事夢を掴むことができました!
――関東学生連合に選抜されたときの気持ちは?
秋吉:うれしかったですが、紆余曲折あったんです。箱根駅伝の予選会でチームとして箱根に行けなかった学校の中で、個人成績が上位だった16人が関東学生連合の予選会に行けるんですけど、その中から10人しか選ばれず、従来は予選会の上位10人が走っていました。私は予選会のときにふるわず、11位になってしまって今回は厳しいなと思ったんですけど、今年は監督がもう一度選考することにしたそうで、そこで良い走りをして逆転できて出走を勝ち取ったっていう、一度諦めたところから出走を掴むことができたので、すごいうれしかったです。

秋吉 拓真さん
――学業の話になるのですが、中高では勉強にはどのように向き合っていたのでしょうか?
松本:僕は国立の学校だったのでそんなに学習進度も早くなくて、他の東大受験生に比べたら遅れている状況でした。競技をやめたのが高3の6月なんですが、それまでは週6日練習を行っていてなかなか勉強に手を付けられませんでした。最初に単語帳を買ったのが高2の冬で、それまで単語帳をやったことないみたいな。塾は高2の夏から通っていたんですけども、復習も十分に追いつかなくてただ通っているだけになっていました。
高3に入ってから塾のコマも増えて、ちょっとずつ春休みとか使って復習していたんですけど、それでもちょっと追いついていなくて、勉強に専念しないともう間に合わないなと思ったので夏休み前に水泳をやめました。
やめてからは水泳で培った集中力を活かして、学校の無い時間はずっと勉強しているという生活をして何とか追い上げたという感じです。学校がある日はあまり勉強できなかったですが、学校がない日は朝の10時前くらいに塾の自習室に行って、閉館の21時くらいまでいました。
でも友達と息抜きに一緒にご飯を食べに行ったり帰ったりするのが楽しくて、そのために最後まで残るといった感じで。そういう風に勉強以外のところにもやる気を出す要素があったのが秘訣かなと思います。
――確かに、友達と頑張れるというのは良い環境ですよね。秋吉さんはどのような環境だったのでしょうか?
秋吉:自分は部活をやっている間は基本的に定期テストでしっかり点数を取るという目標に向けて勉強をしている形でした。高2の終わりくらいから受験も意識し始めたんですけど、しっかり部活にも取り組みたいというのもあって、どちらか一方が犠牲にならないようにバランスを取りながらやっていました。7月ごろに最後の試合を走って部活をやめて、そのあとは勉強してなんとか合格しました。
自分は体を動かさないとやっていけない性格で、ずっと勉強しているだけでは耐えられないこともありました(笑)。夏休みには塾の自習室で何時間か勉強したら外に出て1 kmくらいバーッて走ってきて、みんな静かに自習している中で息が上がってる人が入ってくるみたいな(笑)。うまく息抜きをしながらだったので継続できたのかなと思います。
――息抜きが大事というのは松本さんの話にも通じますね(笑)
松本:僕もきついなあと思ったら塾の近くの東京ドームを一周歩くとか、散歩はしていました。外で体を動かすのはよかったと思います。
――東京大学に入学してからの話になるんですけど、東大では進学選択(進振り)の前にちょっと集中して勉強する期間があるじゃないですか。勉強との両立が難しいなと思うんですけど、何か工夫はされましたか?工夫をしなくても乗り越えられましたか?
秋吉:そんなに工夫をしたつもりはなくて、というのも、陸上の練習って何時間もできるわけではないんです。走れば走るほどいいってわけではなくて、2時間あれば毎日練習が完結するものなので、1日のうち2時間の時間を作るのは大学生の生活だとそんなに難しくなかったです。
受験期のように授業以外の時間はずっと勉強しているということはないので、まずは授業の時間があって、残りの時間のうち2時間くらい走る時間を確保して、余った時間で課題をやったり勉強したり、ということをやっていればなんとかなったという感じです。
松本:僕は電車通学でなかなか時間が確保しづらかったです。時間もかかるし朝練になったので、ちょっと疲れるようになって、高校の時は居眠りとかしたことはなかったんですけど、大学ではうとうとしちゃったりして。そういう生活に慣れていなくて放課後に集中力が切れてしまい、1Sセメスター (1年生の春学期・入学して最初の学期)は苦労した記憶があります。夏休みくらいに友達も増えてきて1Aセメスター(1年生の秋学期・入学して2番目の学期)は友達と集まって勉強したりしてあまり苦労しなかったと思います。友達に救われたかなあという感じです。
――東大での部活動の雰囲気ってどうですか?
松本:他の強豪校だと高3の時に全国大会で標準記録を切っていなかったら選手として入れない部活もあるんですが、東大水泳部は入部の条件を決めていなくて、やる気さえあえれば入れるという方針です。なので、純粋に「水泳たのしい!」って練習を頑張っている姿を見て元気を貰えるのは良いところです。
もちろんインカレに出ている人もたくさんいるので、お互いに励まし合って高いところを目指していけるのも良いところですね。

松本 恭太郎さん
――なるほど、水泳部はインカレに出ていらっしゃる方が多いのですか?
松本:去年は10人ぐらい出ていたんですけど、僕が入学する前は1人とか0人とかということもあったので今は多い方ですね。僕の3つ上にジャパンオープンや日本選手権、インカレに1人で出場している先輩がいて、そうした人に憧れて、早く追いつきたい、同じ試合に出られるようになりたいと思って頑張ってきました。
――そうなんですね。陸上部はどのような雰囲気ですか?
秋吉:陸上部も結構重なるところがあって、それぞれの目的に合わせて自由にできるところは、良いところなのかなと思います。だからと言って、さぼる人がいるというわけではなくて、みんながそれぞれの目標に向かって努力していて、お互い勢いを与え合える面がありますね。
あと恵まれていたのは、自分がちょうど入ったタイミングで大学院生の速い先輩が多かったことです。その先輩たちの背中を追いかけて練習したことで大きく成長できたと思っています。そういう意味で人間的に恵まれた環境で練習できているかなというふうに思います。

秋吉 拓真さん
――ちょっと違う話になるんですけども、お二人とも理系の学生じゃないですか。スポーツを結構、科学的に捉えているのかな、という印象があるんですけども、周りも含めてそういう方は多いですか?
松本:同期で勉強してやっている人はいますけど、僕はあまり分からなくて、食事なども含めて自分の勘のままやってる感じです(笑)。自分が頭を使うのは泳ぎの映像を見るときですね。例えば速い人の隣で泳いだときに、自分はここがうまく進めてないけど速い人はこういう感じでやってるから次からこういうイメージで覚えよう、とかはやっていますね。
監督は筋肉などに詳しいんですけど、僕は○○筋とか分からないんですよね。水泳で使う有名な筋肉なら分かるんですけど、二頭筋とか三頭筋とかはどこにあるのかもいまいちわかっていないですね(笑)。
――ちょっと偏見でした(笑)。秋吉さんはいかがですか?
秋吉:自分も全く一緒です。馬鹿らしいと思われてるんだろうなと思っているんですけど、長距離って気持ちのスポーツだと思ってて(笑)。もう気持ちが強ければ勝てるみたいな。だから一回に集中して、気持ちを保ち続けられるかっていうところを大事にしています。陸上部のチームメイトの中にはすごく勉強している人もいるんですけど自分は全然意識してなくて、自分が気持ちよく走るっていう感覚を重視しています。
自分が襷をつないだ院生の古川さんは「身体運動科学」を研究でやられていて、部活動を研究に活かす方もいます。すごい裏話なんですけど、古川さんって人の後ろを走るとなぜ楽になるのかみたいな研究されてるんですけど、いつも前に飛び出してしまうので(笑)、他の部員からは研究してることと違うじゃないか、っていう話もありますね。
ただ、知識は活かせていないかもしれませんが、理系の我慢強さって結構つながるところがあるのかなと思ったりしています。陸上部全体だと、理系と文系って半々ぐらいなのかなと思うんですけど、なぜか長距離やってる人って理系が多いですね。相関があるのかわからないんですけど(笑)。

――日々の練習時間はどのくらいなのでしょうか?
秋吉:8時半に大学に来るんですけど、家から5kmぐらいなので走って来て、授業を4限ぐらいまで受けて、電車で駒場に移動して、5時から8時まで練習して、テスト前の一番忙しい時だとそのまま図書館に行って閉館まで勉強してから帰るみたいな感じですかね。
松本:僕は2回練習の日だと、朝7時50集合で10時ぐらいまでクラブチームで朝練した後に10時25分からの2限の授業に出て、そのまま4限か5限まで受けて、17時から19時までスイミングクラブで練習で、その後、ウェイトトレーニングやバイトをやったりして、自由な時間は少ないです。
練習はまあサボれないんで、テスト期間中でもちゃんと行っています。休むと試合結果にも響いちゃうし、クラブチームにはオリンピックに出ている人が3人いたり、他の人も日本選手権とかでメダルをとったりする人たちなんで、一番下っ端の僕がそんな怠けているわけにもいかずって感じで。
今は水泳がオフなので、普段できていない分TOEFLの勉強を院試に向けてやってます。
秋吉:いや、すごいっすね…!
レベルの高い他の選手と一緒に練習するっていうのは、長距離だと強い選手に引っ張ってもらって後ろを走るのですが、水泳もそういう感じなんですか?
松本:そういうのは結構ありますね。隣ですごい差をつけられたりとか、タイムを聞いて刺激を受けたりとか。あと、普通に練習からすごい強いんですよ。もう、めちゃめちゃ頑張っていて。そういうのを生で見ると、頑張っていかないとってなります。

松本 恭太郎さん
――すごい環境ですね!今後の競技面での次の目標は何か具体的にありますか?
松本:次の目標は大きい試合が9月のインカレなので、優勝に向かって近づいていきたいと思います。
秋吉:自分はそうですね、本当に今日の鼎談を通して日本選手権に出られている松本さんと比べて、箱根駅伝というネームバリューだけを見て注目されてみたいなところがあると思うので、そういうのを抜きにして、陸上の中でトップ選手というところを少しずつ目指していきたいなと思っています。
まずは陸上の日本選手権が7月にあるので、それの標準を頑張って切りたいです。あとインカレも5月にあるので1つでも上のところを目指したい。どこかで終わりって目標を立てるより、一歩一歩自分が強くなれるところまで強くなるという気持ちでやっていって、少しでも強い選手になりたいなと思っています。
――かっこいいです!
最後に、高校生・駒場生にメッセージをお願いします。
松本:競技と勉強の両方をある程度のレベルでやっておくと、片方の世界でもう片方の成績が評価されてすごい注目してもらえて、大学の教員や競技の指導者に覚えていただけたり、幅広い先輩と関わることができます。そのような相乗効果が東大で水泳をやっててよかったことかなと思います。
何個かの分野にわたって頑張ると、そういう風に良い事もあるのかなと思うので、色々なことを頑張って欲しいなと思います!
秋吉:そうですね、今の話は自分も感じています。
あとは、やはり2本以上軸があるとお互い支え合えると思っています。まあこう言いつつ、自分は勉強の支えが陸上になってることばっかりではあるんですけど(笑)。箱根駅伝で走りたいという気持ちが受験期を支えてくれたところもありますし、実際に箱根に出たら文武両道ランナーと言われて、そうなると勉強を疎かにできないやと思ったり。
2本軸があればどっちかがダメになりそうな時にもう一方を支えにすることができます。1個だけじゃなくて色んなことをやるメリットはそういうところにあるのかなと思います。だから、何かの犠牲になるからと思うんじゃなくて、やりたいことがあるなら何個でもやったほうがいいのかなと自分は思います!
――ありがとうございました!
その後・・・🔎(2025.12.19追記)
秋吉さんは5月の関東インカレで10000m 12位・5000m 13位、6月の日本インカレで5000m14位、さらに10月の箱根予選会では全体12位となり、2年連続で学生連合に選出されました!
松本さんは3月の第100回日本選手権水泳競技大会で100m平泳ぎ11位・200m平泳ぎ6位入賞、9月のインカレ(第101回日本学生選手権水泳競技大会)にて100m平泳ぎ2位・200m平泳ぎ4位入賞、さらに全国国公立大学選手権水泳競技大会では100m、200m平泳ぎともに二連覇を達成されました!
左から取材・執筆を担当したTtime!南方さん、松本さん、秋吉さん。松本さんが持っているのは2024日本選手権水泳競技大会:200m平泳ぎ 第6位の表彰状!
※このインタビューは工学部広報室学生TA Ttime!のメンバーによって企画編集されました。
取材・執筆:南方 貫吾(機械工学専攻修士2年)写真:Ttime!/本人提供
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