トピックス
- 研究
- 2021
航空宇宙工学専攻 水口周 准教授
若手研究者紹介:057
航空宇宙学専攻 水口研究室 水口周 准教授
【経歴】
2003年3月:東京大学 工学部 航空宇宙工学科 卒業
2005年3月:東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 修士課程修了
2008年3月:東京大学 大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 博士課程修了
2008年4月:東京大学 大学院新領域創成科学研究科 助教
2015年1月:東京大学 大学院新領域創成科学研究科 特任准教授
2019年4月:東京大学 大学院工学系研究科 准教授
【研究について】
炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic (CFRP))に代表される先進複合材料は日本の優れた材料技術であり、航空宇宙構造への適用が広がっています。しかしながら、設計技術も製造技術もまだまだ未成熟です。私の研究室は、材料力学を基盤とし、独自の埋め込み光ファイバセンサひずみ計測技術による材料のスマート化を軸に、次世代の航空宇宙構造物を形作る新しい材料システム技術を構築することを目標に研究を進めています。
(A) 埋込光ファイバセンサによる構造ライフサイクルモニタリング技術
光ファイバセンサの最大の特徴は、材料内部に埋め込むことが出来ることです。まさに生体における”神経”のように、構造物が産まれてから壊れるまでのライフサイクルにわたり、材料内部の力学状態を可視化することが出来ます。この技術を用いることで、例えば損傷を自動的に検知するなどの材料の知能化に取り組んでいます。また、生体神経ネットワークの進化過程にも類似するセンサ機能の分業化と階層性を導入したシステムの構築にも取り組み、損傷を検知と同時に修復する自己治癒構造へと展開してきています。
(B) 複合材料ものづくり科学の構築
複合材構造の製造過程には未解明な変形現象が多くあり、試行錯誤に基づく高コストな製造が行われています。独自の光ファイバ計測技術を用いることで、これまで捉えられなかった製造中の変形挙動を計測し、それを製造シミュレーションで再現する取り組みを進め、複合材製造技術を発展させるための製造科学を確立することを目指しています。
(C) 革新繊維構造による新規デザインの探求
これまでの複合材構造では、直進繊維を用いた設計が行われてきましたが、複合材料が本来有する優れた力学特性を十分に引き出せていません。生物が進化の過程で獲得してきた材料微視形態や構造システムからも着想を得ながら、革新的な繊維構造(例えば、交差構造、屈曲構造、ループ構造など)を考案し、次世代複合材料の新しいデザインを探求しています。
【今後の抱負】
これまでに構築してきた技術を有機的に統合することによって、材料内部での力の流れに対して最適化された3次元的な繊維強化構造を備えることで損傷の発生と進展を抑制するとともに、発生した損傷を検知・修復することのできる、まさに生体構造のような高い適応性を有する革新的なCFRP複合材構造システムを確立していきたいと考えています。
【WEB】
研究室:https://sites.google.com/edu.k.u-tokyo.ac.jp/minakuchilab