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若手研究者紹介:海野聡 准教授

 

若手研究者紹介:047

 

建築学専攻 海野研究室 海野聡 准教授

 


【経歴】
2006年 東京大学工学部建築学科卒業
2008年 東京大学工学系研究科建築学専攻修士課程修了
2009年 東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程中退
2009年〜2018年 独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
2018年〜 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授

【研究について】
私の研究は歴史的な建物について、現存建築・発掘遺構・文献資料を通して調査・分析することで、その建築技術・設計手法を明らかにしようとするものです。そのため現存する歴史的建造物や遺跡を次世代に継承するための研究をしています。

建築メンテナンスの歴史
現存する歴史的建造物の多くは近世以前にも修理を重ねて、現在まで継承されてきています。例えば東大寺大仏殿や薬師寺東塔などには支柱をたられましたが、これらの応急修理やメンテナンスに関する歴史的な検討はなされていません。こうした前近代の建築メンテナンスを固有の歴史として捉え、建造物のライフサイクルに関する研究をしています。

建物の復元と復古(復元学)
過去の建築を復古的に造る試みは日本建築史を通じて行われており、大きな特徴の一つです。また各地の遺跡の発掘情報をもとにした「復元」や建造物の修理において、痕跡をもとに「復原」を一時的なプロジェクトとしてではなく、学術的にとらえることで、総合的な学問領域の構築を目指しています。

木造建築の保存・修理に関する国際的枠組み
日本では豊かな森林資源をもとに木造建築文化が生み出されてきました。その継続的な木造建築の修理ではなるべく多くのオリジナルの部材を用いる配慮がなされていて、世界的には、こうした部材レベルまで気を配った修理方法や修理時の調査による情報の蓄積は大変珍しく、学術的にも高い価値がある方法です。一方で修理に用いる木材の確保は大きな課題です。そのため建築の歴史を越えて、木や森の歴史に研究対象を広げ、歴史的建造物が造られた環境にも目を向けています。そのため木造建築の保存・修理に関して、日本の方法を海外に発信しつつ、国際的な木造建築の修理に向けた枠組み作りを目指しています。

 

【今後の抱負】
日本は世界的にも歴史的建造物の残りの良い地域で、木造建築を中心に、その調査・研究の蓄積がおおくあり、建築学・文献史学・考古学・美術史学等、文理の枠を超えた成果の蓄積です。今後も既存の学術の枠組みを超えた研究を展開していきたいと思います。

【WEB】
研究室HP:http://www.history.arch.t.u-tokyo.ac.jp/unno/index.html