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2019.06.14

【若手研究者紹介:022】応用化学専攻 藤田研究室 澤田知久准教授

学歴
東京大学工学部応用化学科卒業(2005年)、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻修士課程(2007年)および博士課程修了(2010年)

職歴
日本学術振興会特別研究員DC1(2007〜2010年)、同海外特別研究員(2010〜2011年)を経て、2011年10月に東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻助教、2016年7月に同講師、2018年5月より同准教授 

<研究について>
分子がひとりでに組み上がる現象(自己組織化)を利用して、ユニークな分子構造の構築に関する研究を行っています。さまざまな有機化合物は、共有結合によって作られる分子構造をもちます。その分子同士の間に、弱い化学結合(水素結合や配位結合など)をうまく働かせると、分子は精密に集合体を形成します。すなわち、小さな分子ユニットに働く弱い化学結合の方向や長さをデザインすることで、ナノメートルの世界で多面体や繰り返し構造のものづくりを行うことができます。そのような背景のもと、私たちは、ペプチドと呼ばれる化合物を金属イオンによって自己組織化させ、新たなナノ構造の構築を行っています。ペプチドはそのアミノ酸配列に基づいて、らせんを巻いたりシートやループを形成したりするなど、さまざまな立体構造を柔軟にとりますので、金属イオンとの自己組織化によって多様でユニークな分子構造を構築できます。たとえば、ペプチドのループを設計することで、4つの分子の輪っかが絡まって正四面体に組み上がった知恵の輪状分子の合成に成功しました[文献1]。これはこれまで化学合成されてきた分子の中で現在最も絡まった分子構造の一つです(トポロジーの複雑さを示す最小交点数12は、現チャンピオンレコードです)。また、別のペプチド配列を選んだ場合には、同じく輪っかの数が4つで最小交点数も12ですが、絡まり方が異なる分子の合成が得られることも分かりました[文献2]。さらに、自然界のタンパク質でよく見られる、βバレル構造(βシートによる樽状構造)を人工的に初めて精密に構築することにも成功しました[文献3]。他にもチューブ構造や編み込みシート構造も最近見つかってきています。このように、私たちは独自の自己組織化技術によって、誰も作ることが出来なかったユニークな構造をナノメートルの世界で日々創造しています。

[文献1] T. Sawada et al., Angew. Chem. Int. Ed. 55, 4519 (2016).
[文献2] T. Sawada et al., Nature Commun. 10, 921 (2019).
[文献3] M. Yamagami et al., J. Am. Chem. Soc. 140, 8644 (2018).

 

<今後の抱負>
ペプチドの自己組織化は、生物がさまざまなタンパク質または組織を構築する仕組みそのものです。生体内で見られるタンパク質の自己組織化構造はどれも美しく、驚くべき構造をもっており、私たちは独自の自己組織化技術を使って、これらに匹敵する(さらには凌駕する)分子構造を人工的に作り出したいと考えています。

藤田研究室:http://fujitalab.t.u-tokyo.ac.jp