プレスリリース

公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター(センター長:片岡一則、所在地:川崎市川崎区、略称:iCONM)は、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻宮田完二郎 准教授らとの共同研究により、ユニットポリイオンコンプレックス (uPIC) と呼ばれる超微小ナノ医薬品を開発しました。直径が18 nm程度の本ナノ医薬品は、生体組織の透過性に優れており、毛細血管の間隙が非常に狭い脳腫瘍や線維性の間質と呼ばれる組織で覆われた膵臓癌のような難治性の癌に対する治療応用が期待できます。また、mRNAやsmall interfering RNA(siRNA)、アンチセンス核酸(ASO)といった核酸医薬は、抗体医薬などのバイオ医薬品に比べ製造が容易でコストも低く抑えられる利点があるものの、生体内ではヌクレアーゼなどの働きにより速やかに分解されてしまうため、この欠点を克服するためにナノ医薬品が注目されています。特に、昨今は新型コロナウイルス感染症予防を目的に開発が進む mRNAワクチンでもナノ医薬品の重要性がしばしば報道されておりますが、ナノ医薬品成分そのものに免疫原性があるとアナフィラキシーショックなどの有害事象に繋がるリスクがあるため、私どもは、すべてが非生体成分からなる高分子材料を用いた核酸医薬搭載型ナノ医薬品の開発に注力しています。
 uPICは、「ポリエチレングリコールとポリリシンがY字型に連結されたブロックコポリマー」と「1分子の核酸医薬」との間で静電相互作用を介して形成されます。uPICは1分子の核酸医薬のみ搭載しているため、既存の脂質分子を用いたナノ医薬品(約100 nm)と比べて、サイズを劇的に小さく調整することができます。もう1つの特徴として、uPICは遊離のY字型ブロックコポリマーとの間で動的平衡状態を保っていることが挙げられます。これらの性質により、uPICは血流中で優れた安定性(あるいは滞留性)を示し、血液-脳腫瘍関門で遮られた脳腫瘍にも核酸医薬を送り届けることができるようになります。今回発表した論文では、uPICの血中安定性をさらに高めるために、特に核酸医薬側の構造に注目しました。結果として、①化学修飾型核酸を使用すること、②1本鎖の核酸医薬を2本鎖にすること、の2つのアプローチを通じてuPICの血中半減期を大幅に延長することに成功しました。今回の研究成果はナノ医薬品の大きな可能性を示すものです。既に uPICを用いた治験や臨床研究が始まっており、近い将来、優れたナノ医薬品が次々に生み出されていくことが期待されます。


プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_202101200935124065992523_041835.pdf

Nature Communications : https://www.nature.com/articles/s41467-019-09856-w