プレスリリース

スカイツリー-地上可搬局での盗聴解読の脅威のない暗号鍵共有に向けた光伝送実証に成功 -衛星と地上間での量子暗号を見据えた原理実証実験-

 

次世代宇宙システム技術研究組合(NeSTRA、所在地:神奈川県横浜市、代表理事:山口 耕司)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、本部:東京都小金井市、理事長:徳田 英幸)、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL、本社:東京都品川区、代表取締役社長:北野 宏明)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(所在地:東京都文京区、研究科長:染谷 隆夫)及びスカパーJSAT株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長:米倉 英一)は、受託中の総務省研究開発案件「衛星通信における量子暗号技術※1の研究開発」※2において、2018年度より実施中である、超小型衛星に搭載可能な量子暗号通信技術の研究開発を進めており、盗聴不可能な暗号鍵を共有するサービスの可用性を高めるために開発された地上試験モデル(可搬型光地上局)を用いて、2022年12月9日に東京スカイツリー-上野恩賜公園第一駐車場間の約3kmにわたり、情報理論的安全性を持つ鍵の共有のための地上間光伝送模擬実証を実施いたしました。その結果、低軌道衛星(ISSなど)と地上局で想定される伝送条件よりも厳しい伝送損失において10Gクロックの微弱光信号パケットの受信が確認でき、低軌道衛星‐地上可搬局とでの光通信技術を応用した安全な暗号鍵共有技術(物理レイヤ暗号による盗聴解読の脅威のない暗号鍵共有)の実現に向けた技術検証に成功しました。

本研究開発案件では、今後も研究開発成果について実証を重ね、将来超小型低軌道衛星-地上間での量子暗号・物理レイヤ暗号通信を実現し、通信の高秘匿化を実現することを目指しております。この目標に向けて、今後はより長距離での実証として国際宇宙ステーション(ISS)-地上間において最終実証を実施予定であり、今回の地上間模擬実証の成果はそのための大きな足掛かりとなります。

 

宇宙産業は今最も勢いのある成長産業の一つとして注目されており、なかでも人工衛星は様々な用途での活用が期待されています。利用の拡大が見込まれるデータ通信においては特にセキュリティレベルのさらなる向上が求められております。今回の実証成功結果を受け、今後も超小型衛星等に搭載可能な物理レイヤ暗号・量子暗号通信技術を開発し、計算技術が進展しても盗聴解読の脅威のない安全性を備えた衛星通信網の実現に貢献していく所存です。

引き続き、これまで宇宙事業で培った知見と創意を活用し、宇宙産業の発展に貢献してまいります。

 

fig1

実証に使用した可搬型光地上局

 

 

1 計算技術が進展しても解読の危険性がない暗号技術

2 本研究開発は、総務省「ICT重点技術の研究開発プロジェクト」のうち「衛星通信における量子暗号技術の研究開発」の一環として実施されたものである。

(参考)総務省ホームページ: 平成30年度 情報通信技術の研究開発に係る提案の公募の結果

2018年6月14日
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000247.html

 

 

■各関係機関の紹介文及び主な役割

【NeSTRA】

「次世代宇宙システム技術研究組合」(NeSTRA)は、最先端技術を駆使した宇宙産業の技術研究組織です。国内企業や研究機関と協力して、民生電子技術や加工技術を活用し、高度で低コストな宇宙機の開発を進め、日本の宇宙産業の競争力を強化することを目指しています。

 

  • 主な役割:システムインテグレーション・試験、オンボードコンピュータ開発

 

【NICT】

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、情報通信分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関です。情報通信技術の研究開発を基礎から応用まで統合的な視点で推進し、同時に、大学、産業界、自治体、国内外の研究機関などと連携して、研究開発成果を広く社会に還元し、イノベーションを創出することを目指しています。

 

  • 主な役割:実験装置開発、実験の主導、データ処理

 

【東京大学大学院工学系研究科】

東京大学大学院工学系研究科では、科学技術の未来を支える工学の教育とともに、研究面では、基礎的な研究を重視すると同時に、既成の工学の枠組みを取り払い、新しい地平を開拓する取り組みを積極的に推進しています。本研究開発案件においては、量子通信技術がもたらす高いセキュリティを裏打ちする安全性保証理論の拡充を進めています。

 

  • 主な役割:見通し通信QKD(Quantum Key Distribution:量子鍵配送)等の理論検討

 

【スカパーJSAT】

宇宙事業とメディア事業を両輪とする国内唯一の事業会社です。宇宙事業では、30年以上にわたり、アジア最多16機の静止軌道衛星を保有・運用し、航空機・船舶向けインターネット回線や、災害時のバックアップ回線など様々な衛星通信サービスを提供します。また、超スマート社会の実現に向けて、すべての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワーク構築の実現を推進しています。メディア事業では、有料多チャンネル放送サービス「スカパー」、動画配信サービス「SPOOX」に加え、光回線を経由した地上波・BSならびに「スカパー」の再送信サービスを提供するFTTH事業にも取り組んでおります。また、保有する様々なアセットを活用しお客様の課題解決を支援するメディアソリューション事業にも進出し、ビジネスの多角化を目指しております。

 

  • 主な役割:実験装置開発、実験環境の提供、スケジュール管理、実験全体の管理

 

 

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