化学システム工学専攻 塩田 拓輝 さん(D2)が第24回 アジア太平洋バイオインフォマティクス会議において最優秀ポスター賞、佳作を受賞されました

2026/11/02

2026年10月29日、化学システム工学専攻  酒井・西川研究室  塩田 拓輝 さん(D2)が第24回 アジア太平洋バイオインフォマティクス会議において最優秀ポスター賞、佳作を受賞されました。

 

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最優秀ポスター賞   佳作 The 24th Asia Pacific Bioinformatics Conference

アジア太平洋地域のバイオインフォマティクスに関する学術会議 Asia Pacific Bioinformatics Conference(APBC 2026)において、優れたポスター発表を表彰するために設けられた賞です。ポスター発表の研究内容、独創性および学術的意義などについて審査が行われ、最優秀ポスター発表の佳作として選出されました。

 

受賞された研究内容・活動について

「大規模言語モデルを用いた逐次的長文読解による内皮細胞培養プロトコルの文献マイニング」
細胞培養プロトコルの解析および最適化において、複数の論文を横断したメタ解析は非常に有用であると考えられます。しかし、論文から細胞培養プロトコルに関するデータを収集することは複雑な作業です。これは、文章全体の文脈を考慮しながら、本文中に分散して記載された情報を解釈する必要があるためです。
大規模言語モデル(LLM)は、文書から情報を抽出し、構造化データとして整理することができます。しかし、入力サイズの増加に伴い、その性能は低下します。本研究では、論文ごとの文脈を保持しながら文章を複数のセグメントに分割することで、LLMが長文を理解できるようにする新たなワークフローを開発しました。この手法を血管内皮細胞の分化に関する論文に適用し、分化方法のデータベースを構築するとともに、分化方法と得られる細胞表現型との関係を解析しました。
構築したワークフローでは、まず、細胞培養方法に関連するキーワードの周辺の文章を抽出し、原文における出現順に並べました。引用文献に関する情報など、関連性のない文章セグメントを除外するため、5つの独立したLLMによる評価結果の多数決によって、各セグメントの関連性を判定しました。その後、関連性があると判定されたセグメントをLLMに入力し、細胞種、遺伝子発現、培地、添加物など、分化方法およびその結果に関する情報を辞書形式のデータとして抽出しました。また、各セグメントから得られたデータを、後続のセグメントの情報抽出時に入力として利用することで、論文固有の文脈や用語に関する情報を引き継ぐ仕組みを導入しました。
本手法を、Web of Scienceを用いて特定した、in vitro における血管内皮細胞分化に関する362報の論文に適用し、各論文のプロトコル情報を構造化したデータベースを構築しました。SoftMax関数を用いた分類により、血管内皮細胞の表現型に関する傾向を明らかにしました。レチノイン酸は、動脈型や前駆細胞型の表現型と比較して、脳微小血管内皮細胞型の表現型の獲得により有効であることが示され、これは先行研究の報告と一致していました。さらに、細胞種、遺伝子発現、その他の特徴に基づいてプロトコルを検索できるウェブベースのデータベース(https://ituke.github.io/cellcultureatlas/)を実装しました。
以上のように、本研究では新たなデータ抽出手法を開発し、これを用いて血管内皮細胞の分化方法に関する詳細なメタ解析を行いました。論文を適切なサイズの文章セグメントに分割し、文脈を保持しながら順次処理することで、情報抽出の精度を向上させました。文献から抽出された培養条件と細胞表現型との関係は、先行研究の報告と一致していました。本手法は、重要な情報が複数の論文に分散しているさまざまな研究分野における文献情報の抽出・解析に応用可能であり、将来的なデータ駆動型のプロトコル設計にも貢献すると期待されます。

 

今後の抱負・感想

本研究を共同で遂行してくれた、共著者の伊東 周昌 君・下平 岳 君(化学システム工学専攻)に感謝を申し上げます。また、本研究に貴重なご意見をくださった酒井 康行 先生、村岡 恒輝 先生、西川 昌輝 先生に心より感謝申し上げます。
細胞培養の結果はマルチオミクス解析などを筆頭としたデータ駆動的な解析が主流となりつつある中、培養手法の検討は現状古典的な試行錯誤に大きく依存しています。今回の受賞を励みに、培養手法の検討にもデータ駆動的なアプローチを取り入れられるよう、これからも本研究を推進致します。