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Li Zihui特任講師が「Innovators Under 35 Japan 2025」を受賞されました

作成者: Public Relations Office|Nov 27, 2025 6:57:03 AM

2025年11月25日、技術経営戦略学専攻 LI Zihui (Irene) 特任講師が「Innovators Under 35 Japan 2025」を受賞されました。

 

 

Innovators Under 35 Japan 2025
Innovators Under 35 は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディア部門「MITテクノロジーレビュー」が主催する国際アワードです。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る、独創的で才能ある35才未満の若きイノベーターの発掘を目的とし、過去にはGoogle共同創業者のセルゲイ・ブリン氏、Facebook共同創業者兼会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も受賞するなど、国際的に権威あるアワードとして高く評価されています。『Innovators Under 35 Japan』はその日本版にあたり、今年で6回目の開催となります。本年度は「コンピューター/電子機器」、「ソフトウェア」、「輸送(宇宙開発)」、「インターネット」、「AI/ロボット工学」、「通信」、「エネルギー/持続可能性」、「医学/生物工学」の全8分野において、200件を超える候補者の中から、厳正な審査を経て10人が受賞者として選出されました。なお、日本版の受賞者は次年度のグローバル版の候補者としてノミネートされます。

 

受賞された研究内容・活動について 

私は現在、ヘルスケア領域において、日本語に特化した大規模言語モデル(LLMs)の開発に深く取り組んでいます。AIは世界的に産業や社会を変革していますが、特に高齢化と医療専門職の不足が深刻な日本においては、英語圏向けに最適化されたAIとは一線を画す、信頼性と文化的背景に根差した非英語圏向けLLMの開発が喫緊の課題です。私の研究は、既存の英語圏向けAIの限界を超え、知識グラウンディングや説明可能な推論(Explainable Reasoning)といった重要な技術を組み込むことで、日本語対応の医療LLMを構築しています。これにより、モデルは正確で流暢な医療テキストを生成するだけでなく、出力の明確な根拠を提供できるようになります。この能力は、医療現場での臨床判断において、専門家がAIを信頼し活用するために不可欠です。信頼性と文化的な適切さに焦点を当てることで、AIが患者のアウトカムを真に改善するための鍵を握ると考えています。

 

現在の研究の重要な応用の一つとして、日常的な言語データを通じた加齢に伴う認知機能低下の早期スクリーニングを目的とした、専門的なAI手法の開発を進めています。高度な言語解析および認知分析を活用することで、日本語話者の高齢者コミュニティに対し、早期の知見を提供し、個別化された予防的介入を促進するシステムの構築を目指しています。このアプローチは、介護者の負担を軽減し、日本の平均健康寿命の延伸に貢献することを使命としています。

 

今後の抱負・感想について

私の究極的な目標は、信頼性と文化的な配慮を兼ね備えたAIの恩恵を、世界中の人々が公平に享受できる未来を実現することです。アフリカやアジアの一部を含む多くの医療サービスが不足している地域では、資格を持つ医師の深刻な不足と医療インフラの限界に直面しています。今後は、リソースの乏しい言語(low-resource languages)に対応する堅牢なLLMを開発するために、その技術的・言語的な課題を克服する研究へと活動を拡大していく計画です。アクセス可能な診断・情報支援システムとして機能する展開可能なAIツールを創出することで、現地の医療従事者を力づけ、最も資源が不足している地域における臨床専門知識の決定的なギャップを埋める一助としたいと考えています。この度の受賞は、この広範なビジョンを追求し、AIがあらゆる場所のすべての人々の健康アウトカム向上に貢献する世界を目指すための大きな励みとなります。

 

 

Innovators Under 35 Japan 2025 受賞:https://techreviewjp.com/iu35/2025/winners

リ・ズフウェイ

https://www.technologyreview.jp/l/innovators_jp/371999/zihui-li/