プレスリリース

2017.12.25

「トポロジカル母物質」の高品質薄膜作製に成功-トポロジカル相転移を活用した非散逸伝導の制御に道筋-:物理工学専攻 打田正輝助教、中澤佑介(M2)、西早辰一(D1)、十倉好紀教授、川﨑雅司教授ら

東京大学大学院工学系研究科の打田正輝 助教と川﨑雅司 教授らの研究グループは、東京大学物性研究所の徳永将史 准教授らの研究グループ及び理化学研究所創発物性科学研究センターの田口康二郎 チームリーダーらの研究グループと共同で、近年発見されたトポロジカル半金属Cd3As2について、バルク単結晶を凌駕する高品質薄膜を作製し、トポロジカル半金属の電子構造に由来した非散逸な量子伝導を観測しました。電子状態の非自明なよじれをもつ物質はトポロジカル物質と呼ばれ、物質のトポロジカルな性質とその状態の変化を表すトポロジカル相転移は、2016年のノーベル物理学賞の対象にもなりました。トポロジカル物質の代表例であるトポロジカル絶縁体は、トポロジカル物質の研究を加速し、非散逸な量子伝導を利用した低消費電力エレクトロニクスの開発が期待されています。一方、より高い対称性をもつ物質として、トポロジカル半金属と呼ばれる新たなトポロジカル物質が発見され、注目を集めています。トポロジカル半金属は、トポロジカル絶縁体を含むトポロジカル物質の母物質に相当しており、対称性や次元性を変化させる外部刺激によってトポロジカル相転移を引き起こしさまざまなトポロジカル状態と量子伝導を制御できると期待されています。しかしながら、トポロジカル半金属は薄膜化が難しく、高品質薄膜を用いた研究が望まれてきました。本研究グループは、典型的なトポロジカル半金属であるCd3As2について、高温での結晶化を可能にする独自の成膜技術を開発し、これまでに報告されてきたバルク単結晶をはるかに凌駕する高い結晶性・純度をもつ薄膜の作製に成功しました。強い磁場中におけるCd3As2薄膜の抵抗測定から、トポロジカル半金属の閉じ込め構造における非散逸な量子ホール状態を観測し、トポロジカルな性質が薄膜の厚みに依存して変化するトポロジカル相転移現象を実証しました。今回の発見は、高品質なトポロジカル半金属薄膜を基盤として、トポロジカル相転移現象の解明とそれを利用した非散逸伝導機能の制御を大きく前進させるものと期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に日本時間1222日午後7時(英国時間22日午前10時)に掲載されます。

本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)「トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成」(No. JPMJCR16F1)、日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C)No. JP15K05140)、若手研究(A)No. JP15H05425)、新学術領域研究「トポロジーが紡ぐ物質科学のフロンティア」(No. JP16H00980)の助成を受けて行われました。

プレスリリース本文:/shared/press/data/setnws_201712251123124470840428_406904.pdf

Nature Communications:https://www.nature.com/articles/s41467-017-02423-1