プレスリリース

2015.06.23

大腸菌に潜む「マクスウェルのデーモン」の働きを解明 ― 情報と熱力学の融合による生体情報処理の解析への第一歩 ― :物理工学専攻 沙川貴大 准教授

生体システムにおける情報の伝達と活用は、生命の維持に不可欠なものです。しかし生体内での情報伝達には、人工的な情報通信のために発展した情報理論を単純には適用できない場合があります。そのため、生命の情報処理のメカニズムを解明することは大きな挑戦でした。

東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻の沙川貴大 准教授(研究実施当時:東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 准教授)と東京工業大学大学院 理工学研究科 物性物理学専攻の伊藤創祐 学振特別研究員(研究実施当時:東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程学生)の研究グループは、情報理論と熱力学を融合させた新しい物理理論である「情報熱力学」を用いてこの問題にアプローチしました。

生体内においては、単一分子のレベルでの情報処理が行われていますが、そのメカニズムは19世紀の物理学者マクスウェルが考えた「マクスウェルのデーモン」と類似している場合があります。このことに研究グループは着目し、「デーモン」についての物理学の新理論である情報熱力学を応用することで、大腸菌が外界からのノイズに対して安定的に適応するさいに情報が果たす役割を、定量的に明らかにしました。とくに、大腸菌の適応のメカニズムは、通常の熱力学の観点からは非効率であるにもかかわらず、情報熱力学の観点からは効率的であることが明らかになりました。この成果は、生体内の情報処理メカニズムを解明するための、物理学に基づく新しいアプローチの第一歩になると期待されます。

 本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」の電子版に掲載されました。

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