プレスリリース

2016.11.29

ゼオライトを秒速で合成 -ゼオライトの合成時間を1/1000以下に短縮-:化学システム工学専攻 脇原徹 准教授、大久保達也 教授

石油の接触分解やイオン交換材、吸着材、水エタノール分離膜などに用いられるゼオライトは、化学工業プロセスでは重要な役割を担っている。このゼオライトを工業的に利用するためには水熱合成が必要で、一般的に数時間~数日かかる。これが量産の際の大きな壁となっているため、合成時間の短縮化に関する技術開発は重要である。東京大学大学院工学系研究科の脇原徹准教授・大久保達也教授らはこれまでの一連の研究において、ゼオライトの結晶化操作を適切に行うことで、ゼオライトの高速合成が可能であることを示してきた。しかし、これまでの研究では最速でも数分~10分程度の水熱合成時間が必要であり(これでも十分インパクトのある成果であった)、さらなる短縮化が望まれていた。そこで、今回ゼオライトの一般的な結晶化操作法であるバッチ式水熱合成法ではなく、二液混合型流通合成システムを開発した。具体的には、ゼオライト合成混合液と熱水を直接接触、瞬時に合成に適した温度(~300℃)に昇温させることにより、ゼオライトを数秒~10秒で合成させる革新的ゼオライト製造プロセスである。この技術により、工業的に利用価値の極めて高いMFI型ゼオライトをわずか6秒で合成することに成功した。なお、結晶性の高いゼオライトが得られたことを確認するため生成物の原子間距離を正確に確認する必要があり、SPring-8のビームラインBL04B2にて精密に解析(二体分布解析)を行った。
ゼオライトは、今日では年間100万トン以上製造されている。原油中の重質成分をガソリンやナフサに転換し、今日のエネルギー供給、化成品製造を可能にしている触媒の主要成分である。また、近年は自動車のNOx排出規制に対応する触媒として実用化された。すなわち、ゼオライトは持続的社会の形成のために大きく貢献するキーマテリアルである。本研究成果が、ゼオライトの高効率・低コストでの生産を可能としたことで、化学工業プロセスに大きな変革をもたらす可能性がある。さらにエネルギー関連分野(石油やバイオマス)、環境関連分野(自動車関連分野、発電分野)などへの波及も容易になるものと思われる。
 なお研究成果の一部はNEDO委託事業「エネルギー・環境新技術先導プログラム/超精密原子配列制御型排ガス触媒の研究開発」によるものです。また、SPring-8の長期課題2015A0115の成果の一部です。
本研究成果は、「PNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:米国科学アカデミー紀要)」に掲載されました。

 

プレスリリース本文: /shared/press/data/setnws_20161129110319136923450910_843178.pdf

PNAS URL: http://www.pnas.org/content/early/2016/11/23/1615872113

SPring-8記事: http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2016/161129/

<記事>
日本経済新聞電子版: http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=429634&lindID=5